孤児院始動
感想&評価ありがとうございます。
申し訳ないです。
ペコm(_ _;m)三(m;_ _)mペコ
前話ですが、同じ話を投稿していました。
削除しておきました。
本日2話投稿します。
孤児達の石化病が治った後。
病気が治って騒ぐ子供達をなだめ、寝かした後。
つまり夜。
俺はリンと2人で孤児院の居間にいた。
「どうぞ、粗茶にゃ」
「ありがとう」
俺はまったりとお茶を飲む。
そして振り返る。
今日は色々あった。
昼にはティアとグラントの衝撃シーンを見て…それから泣いて逃げで…孤児達を救った。
ずっと心が揺れっぱなしだった。
深夜になった今、ほっと一息ついて冷静になれる。
(色々あったが、今は落ち着いた気分だ)
俺は熱いお茶を飲む。
リンも熱いお茶を飲んでいる。
で。思った。
「リン、このお茶熱いけど、獣人族は猫舌じゃないのか?」
「あたしは大丈夫にゃ。特別みたいにゃ。でも、普通の獣人族は猫舌にゃ」
「そうか…珍しいこともあるもんだな」
俺はお茶を飲む。
まったりとする。
お茶で気持ちが落ち着いてくると、ふと疑問に思った。
「なぁ、リン。ちょっと聞きたいことがあるけど、今いいか?」
「なんにゃ?なんでも聞いて欲しいにゃ?」
リンはほっこりしている。
「なんで昼間、俺に声をかけたんだ?あんなところで泣いてて、俺、完全に怪しかっただろ」
冷静になった俺は疑問に思ったのだ。
石化病に侵されていたリンは、俺に関わっている暇などなかったはず。
自分と孤児達が大変なことになっていたのだから。
なのに何故、俺なんかに構ったのか…不思議だった。
リンはちょっと苦笑いしてから。
「それは…エクトが悲しそうな顔をしてたからにゃ。あたしも石化病で、色々悲しいことを考えたにゃ。このままだと死んじゃう、もう一年も生きられない。それにゃら、残り少ない命、少しは周りの人助けようと思ったにゃ。少しでも何かしようと」
リンは恥ずかしそうに言った。
でも、それは全然恥ずかしいことでもない。
逆に誇らしいことだろう。
(素晴らしい)
「そうか。ありがとうリン。俺の心は救われたよ」
(ほんとに…リンにあえてよかった。もしリンにあえていなかったら、今頃どうなっていたか…)
(貧困街をさまよって…自暴自棄になって…何かとんでもない目にあっていたかもしれない)
俺はリンにあえて感謝した。
「そういえば…なんでエクトは泣いてたにゃ?」
リンがちょっと気を使いながら聞いてきた。
声のトーンで分かる。
彼女もずっと疑問に思っていたのかもしれない。
「それは……色々だ」
実際起こった事実。
同じパーティーの女に裏切られたとはいえなかった。
「そうにゃ。でも今は良い顔してるにゃ」
リンの笑顔がまぶしかった。
俺はほっと心が安らいだのだった。
そして決意する。
「じゃあ、改めてだけど、リン、よろしくな」
「こちらこそにゃ、エクトがいれば心強いにゃ」
「うん、一緒に孤児院を盛り上げていこう」
「そうにゃー。皆、病気が治ったから、これからにゃー」
こうして俺は、孤児院を運営することになった。
次の日。
俺は朝から大人気だった。
孤児達は新しい住人となった俺に興味津々なのだ。
今も猫耳っ子達に囲まれている。
小さな猫耳やシッポに包囲されている。
「ねぇーねぇー、エクトお兄ちゃん、こっちで遊ぼうよぉ」
「えー、エク兄とは、わたしが一緒に遊ぶのぉー」
「えええ、にいにと遊ぶのは、あたちだよぉー」
「お兄さん、しっぽないの?猫耳もないの?」
「お服で隠れてるのかもぉー」
猫耳を生やした小さな子に服をひっぱられる。
(やれやれ、まったく困ったな)
小さな猫耳っ子達にわちゃわちゃされる。
もみくちゃにされる。
「こらこら、やめないか」
俺は優しくなだめようとするが…
「エクトお兄ちゃーん、お遊び教えてあげるぅ~」
「だめ、エク兄とはわたしが一緒に遊ぶのぉ」
「あたちだよぉおおおー!」
「お兄さんの耳、横についてるんだね?」
「やっぱり、しっぽはお服で隠れてるのかもぉ」
さらにわちゃわちゃする猫耳っ子たち。
モフモフに囲まれてフワフワしてくる。
クイクイ四方八方から服をひっぱられてクラクラしてくる。
(まずいな…猫耳っ子達がとまらない。モフモフがとまらないっ!)
俺が少し戸惑っていると…
「みんなー、だめにゃー。エクトは忙しいにゃ」
(あっ、リンが来た)
昨夜聞いたのだが、リンはこの孤児院で一番の年上。 (といってもリンも小さく16歳。俺と同い年だ)
だから彼女がここを運営しているらしい。
昔は街の運営者がいたが、予算がカットされて資金共々いなくなってしまったらしい。
「ほらっ、みんなはやることあるにゃー。お外で遊ぶ時間にゃ」
「あーリンお姉ちゃんだっ!」「リン姉が来たっ!」っと騒ぐ猫耳っ子達だが。
リンは子供達をヒョイっと持ち上げたり、頭を撫でたりする。
そうして俺から子供達をさっと放してさばいていく。
(かなり手馴れた様子だ…さすが年長者…皆のお姉ちゃんだ)
そしてリンは俺に向き直り。
「エクト、こっちにゃ。孤児院を説明するにゃ」
「よろしく頼む」
「広いからちょっと時間かかるかもしれないにゃ」
「大丈夫だ。たっぷり時間はあるからな」
「ではいくにゃ」
「おう」
俺は猫耳っ子から離れてリンと施設内を歩く。
だが、後ろにはゾロゾロと孤児達がついてくる。
猫耳の行列だ。
(どうも、俺のことが気になるようだな。興味津々って感じだ)
チラッと俺が振り返ると、孤児達はさっと隠れる。
だが、小さなしっぽと猫耳が陰から見えている。
ばればれだ。
(ふっ、頭かくして、しっぽ隠さずか…)
そんなことがありながらも、リンは施設内を説明していく。
子供部屋
調理部屋
勉強部屋
居間
運動場
体育館
大きなお風呂
家庭菜園 (食料を育てている)
遊戯室
プール (水無し)
倉庫
地下室等々…
ボロイ施設だが、中々大きかった。
部屋数も多い。
(というか…部屋、多すぎだろっ!)
施設紹介が終わって居間に戻ってくる。
再びまったりとお茶を飲む。
「ざっとこんな感じにゃ」
「ほんと、随分広いんだな」
「前は孤児院じゃなくて、小さな学校だったみたいにゃ。それを孤児院に転用したにゃ」
「なるほど…それでか…」
確かに学校の名残はあるようだ。
入り口の下駄箱とか、よく分からない偉い人?の銅像とか、国旗をつるすポールとか。
普通の家にはないものがある。
「それでリン、肝心の運営だが、どうなんだ?あまり裕福ではなさそうだが」
「そうにゃ…カツカツにゃ。なんとか色々なことをして生活をしのいできたにゃ」
「そうか…でも、ここの孤児達は皆元気そうだな。リンのおかげだな。建物の中も綺麗だし」
「違うにゃ。あたしだけじゃないにゃ。皆で協力して頑張ってるにゃ」
リンは運動場で遊んでいる子供達を見る。
昨日まで床でふせっていた猫耳っ子達が駆け回っている。
俺の後をつけるのに飽きて、途中から運動場で遊びだしたのだ。
(まったく…微笑ましい姿だ)
(子供達が元気に遊んでいる姿を見るのは、気持ちがいいな)
俺はリンに向き直る。
「なら、俺も協力するよ。昨日から俺もここの一員だからな。とりあえず、売れるポーションを作って資金を稼ぐ」
「いいにゃ?調合って難しいって聞いてたにゃ?それに色々ないとできにゃいって」
「まぁ、普通はそうだ。素材も必要だし、何より調合する際の媒体に費用がかかるんだ。詳しい話は省くが、調合する際には、素材とクリスタルが必要になる。クリスタルが精霊に働きかけ、素材を混ぜ合わせるんだ。それにクリスタルには使用回数期限があって、何回か調合するとダメになるから、すぐに買い換えないといけない」
「そうにゃー。大変にゃ。クリスタルって高価って聞いたにゃ」
「あぁ、あまり取れないから。レベルが高ければ自分でダンジョンに潜って取ってこれるだろうけど、生産系の者は厳しい。戦闘向きじゃないから」
「にゃ?でも、エクトが調合するとき、クリスタルを使っているところをみたことないにゃ」
「リン…気づいたか」
(あの騒ぎ中察知するとは…中々鋭いな)
「なんでにゃ?」
「俺は特別なんだ。色々訳あって、クリスタル無しで調合できる。素材だけで」
そう。
俺は何故か出来るのだ。
多分、精霊の加護の効果だと思うのだが…加護だけでは説明がつかない。
いくら加護持ちでも、普通はクリスタルが必要になるのだ。
精霊の加護の中には力の差があって、少し調合が上手くなるものから、何も無しでも調合が出来るようになるものがあると聞いたことがあるが…
実は精霊の加護のことはよく分かっていない。
それになにより、俺は自分以外にクリスタル無しで調合できる者を知らない。
パーティーの皆も同じだった。
「やっぱりエクトは凄いにゃ~。昨日も皆を救ってくれたにゃ」
「大したことないよ。それより早速調合しよう。昨日のポーションが売れたんなら、同じようなものは何個でも作れる。俺も孤児院に助力するよ」
「いいにゃ?エクトばっかり悪いにゃ」
「気にしないでくれ。俺もここに住むんだ。お互い様さ。それに調合をしていると、集中して他の事を忘れられるから。趣味みたいなものだし」
(今は何かやっていたい。ティアのこと忘れたいんだ)
「分かったにゃ。にゃら、あたしが必要な素材買ってくるにゃ」
「そうだな。お願いするよ」
俺はポーションを作るのに必要な素材リストを書いた。
そのメモと、昨日と同じようにライフポーションをリンに渡す。
ライフポーションは素材を買う資金源だ。
「それじゃ、リン、頼む」
「任せて欲しいにゃ。すぐ戻ってくるにゃ」
慌てて部屋を出ようとするリン。
「今日はゆっくりでもいいよ。急がなくても」
「ちゃちゃっといってくるにゃー。すぐにゃー」
(リンはせっかちなタイプなのかもしれないな)
「そうか、まぁ頼む。走って転ばないようにな。俺はさっそく今ある素材でポーションを作るよ」
持ち金が少ないから、なるべく増やしておきたい。
そのためにポーションを作って売るのだ。
3ゴールドはさすがに心持たない。
「分かったにゃ。いってくるにゃー」
「おう。いってらっしゃい」
リンは買い物に出かけた。
俺はリンの姿を見送ってから気合をいれる。
(よし、やるか)
ポーションを調合し始めた。
こうして、エクトの孤児院生活が始まったのだ。
本日、夜、もう一話投稿です