パーティーの目的
2章スタートです。
1章の題名:ティア編に変えておきました
酒場で飲んだ次の日。
俺は宿の居間でまったりと魔法工学の本を読んでいたが…
その後。
今は寝室に戻っていた。
俺達はお金に余裕があるので、大き目な部屋を取っているのだ。
大抵3部屋ある部屋を借りている。
俺とグラントの男子部屋。
ティアとウィズの女子部屋。
共通部分の居間だ。
で。
今は男部屋のベッドの上。
グラントは外に出ているので、俺一人。
ベッドの上で壊れた腕輪を見る。
腕輪の裏には、雷の矛のマークがついている。
ギルデインから回収したものだ。
ギルデインを縄で縛って運ぶ際。
俺はギルデインと2人きりになり尋問していた。
ギルデインは俺に恐怖を抱いていたようで、尋問は手早く済んだ。
ヘルハウンドを倒したポーションをギルデインの頭の上に掲げれば、口が途端に軽くなった。
~~尋問の記憶~~~~~~~~~~~~~~
「ギルデイン、なぜ、加護を失った?」
「わ、分からない。俺には…分からない」
「加護の開放をやったのか?」
「開放?なんのことだ?」
(加護の開放を知らないか……)
(それが当たり前の反応でもあるな…)
(加護の開放と再取得は禁忌だからな)
「じゃあ、この腕輪、偽物の加護を与える腕輪はどこで手に入れたんだ?」
「そ、それは…も、貰ったんだ」
「誰に?」
「公爵様の相談役、錬金術師だ」
(錬金術師?)
(もしかしたら…あたりかもしれないな)
(俺が探している奴かもしれない)
「そいつの名前は?この国の奴じゃないだろ」
「名前は…ジークと名乗っていた。本名かどうかは知らない」
(ジークか……)
「他にも魔導具は貰ったか?このマーク、雷の矛がついているものだ」
「ない。それだけだっ」
「本当か?」
「本当だっ。嘘じゃない。だ、だから、今すぐその危ないポーションをしまってくれ。それに、その青い瞳で見ないでくれっ!」
(まぁ、いいだろう。どうやら嘘はついていないようだから)
(『ウンディーネの瞳』も嘘だとはいっていない)
(この瞳でデータとして相手を捉えることで、嘘をついてるかどうかはほぼ分かる)
(表情、体温、呼吸。すべてがデータ化されれば、反応で心意を読むのはたやすい)
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尋問の回想から戻り。
俺は壊れた腕輪をついつい眺めてしまう。
雷の矛のマーク。
神の一撃、『雷蹄』の印だ。
昔は見慣れた印…
(このアイテムがあるなら…)
(奴らはこの国にいるはずだ)
(どこにいるかは分からないが…絶対に…探し出す)
(そして…)
俺が思いをはせていると…
トントン ガチャッ
寝室の扉が開けられる。
ティアだ。
「やっほっ、エクトーっ、これからのことを話し合うよっ。下の酒場に集合ねー。皆揃ってるから」
「分かった。今行く」
俺は腕輪をアイテムボックスにしまい、部屋を出た。
酒場。
テーブルには、ティア、グラント、ウィズが揃っていた。
俺も椅子に座る。
俺が座ったのを確認して、ティアが切り出す。
「これからの事なんだけど…」
「そんなの決まってるだろ」
「そうなのです」
グラントとウィズが口をそろえる。
俺も同様に。
「そうだな。やることは1つしかないな」
ティアは不思議そうな顔をする。
暫く黙ってから。
「えっ、皆……まさかっ」
ティアも俺達の意図を察知したのかもしれない。
俺はグラントとウィズを見て、視線で意思を確認してから口を開く。
「ティアの妹を助ける。それしかないっ」
「エクト…」
ティアは瞳を潤ませる。
「あぁ、エクトのいうとおりだ」
「そうなのです」
「皆……でもいいの?相手は公爵だよ。それに…普通の公爵じゃない。仲間には加護持ちが何人もいるよ」
「別にそれぐらい、どうってことない」
「そうだ、エクトのいう通りだ。それに冒険者として上を目指せば、いつかは加護持ちと戦わなきゃいけない時が来る」
「そうなのです。私も頑張るのです」
ウィズとグラントはやる気まんまんだ。
「ほ、本当にいいの?私のために。すっごく危険だよ。ギルデインよりも、強い奴がいるんだよ」
俺はティアの肩をポンポンと撫でる。
「大丈夫だティア。心配しなくて良い。誰が相手だろうと、俺は負けない。それにティアのためじゃない。俺のためでもある」
(公爵を狙えば、俺の目的に近づけるかもしれないんだから)
「そうだぜティア。ティアのためは、俺らのためだ」
「そうなのです」
「皆……ありがとうっ」
ティアが俺達の手を取る。
(温かい手だ)
暫く手を握り合った後…
「それでティア、妹は今どうなってるんだ?」
「えっと、それは……」
ティアが説明を始めた。
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ティアの妹、レネは公爵家に捕らえられている。
公爵は貴重な加護持ちのレネを囲っているのだ。
ティアは公爵と1000万Gで妹を買い戻す約束をしていた。
そのため、ティアは時折レネと会っていたようだ。
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「その契約は今も生きているのか?1000万なら、懸賞金を合わせれば届くと思うけど」
「うん、どうなんだろう…分からないかな。公爵の部下のギルデインを倒しちゃったから」
(だよな)
(俺とグラントで倒しちゃった)
「でも、レネは生きてるはずだよ。貴重な加護もちを、公爵が殺すわけないから」
「確かに…なら、まだお金で解決できる可能性もあるのか」
「そう思う。今のところはね…」
「そうか…」
(うーん。どうだろうか?)
(公爵がどうでてくるか分からない)
(穏便に金で解決か…)
俺が思案していると。
「エクト、簡単だろ。そもそもいきなり奪われたんだ。金を払う必要なんかない。公爵から奪い返せば良い」
「グラント…落ち着け、脳筋は危険だ」
「はぁ、エクト、なんだよ?」
「そうなのです。公爵ということは、国の重鎮でもあるのです。無理やりすると、国を敵に回すのです」
「そうだよ。グラント、ちゃんと気をつけないと」
ティアとウィズが加勢してくれた。
「お前ら…意外に常識人だな」
驚くグラントだが…
「当たり前でしょ。私はバッチリ常識人よっ」
「なのです」
ティアとウィズに押されて、「お、おう」っと頷くグラント。
(さてと…)
「それじゃあ、実際問題どうするかだな。やっぱり金を払って解決するのが一番穏便なのかもしれないな」
「そうね。払うのはしゃくだけど…」
「俺は払わない方がいいと思うけどな。そもそも、公爵なんか信用できるのか?」
「その問題もあるけど、まずは穏便に解決できる方法で行く方が良いだろう」
「エクトの言う通りかなっ」
「なのですっ。エクトに賛成なのですっ」
ティアとウィズが再び加勢してくれた。
「くっ。お前ら…」
グラントは好戦派のようだが、自分の意見を抑えた。
皆の意見に従うようだ。
「よし、じゃあ決まりだな。公爵領にいって交渉だ。それが無理なら、戦うこともあるかもしれない」
「面倒だが、そうするかっ。エクト、戦闘はいつでも任せろ」
「なのです。って、違うです。グラントにのっかっちゃいました。穏便にすませるのです」
「ウィズ、俺のせいにするなっ」
「な、なななっっ」
ウィズが「ななななっ」と唸っているので。
「こらこらウィズ、落ち着け」
俺がウィズの頭を撫でて宥める。
「なふぅー、なのですね」
ほっと落ち着くウィズ、
「エクト…やるな」
グラントが俺を見て感心している。
で。
その横のティアは…
「皆……」
俺達の顔を見て目が赤い。
最近は涙もろくなっているティアだ。
何故か、ちょくちょく目元が怪しくなる。
いきなり泣き出したりする。
ティアはギルデインに攫われて死にそうになったり。
色々これまで抑えていた感情を発散したためか、感情的に不安定になっているのかもしれない。
(ならっ、俺がそんなティアを支えないとなっ)
「ティア、そんな目をするなよ」
「そうだ、ティア。目元をピクピクさせるな」
「なのですよ」
「皆…ありがとうっ」
感謝するティア。
なんとか、涙を抑える。
「ティア、大したことないよ。それにまだ何もしてない。これからだ」
「そうだ。エクトの言うとおり」
「なのですねっ。私も今度は力になるのですっ」
「でも…ありがとっ…皆、ありがとうっ」
こうして俺達は、公爵領に進むことになった。
ティアの妹を救うために。
WEB拍手&感想&評価ありがとうございます。
次回は…
明後日、2月9日 (木)の夜に投稿予定です。
~ギルドの報酬~
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またまたエッセイ投稿しました。
勢い重視です。
↓
「文学の価値~なろう小説は、直木賞や芥川賞をとってもおかしくない」
ネタと思いまして、どうぞっ。