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リンとの出会い

1/21 追記 お金周り修正

(はぁーはぁーはぁー)


人知れず走った後。


(あれ……ここどこだ?)


見回すと、よく分からない場所にきていた。

ボロイ家とみすぼらしい家が並ぶ。


(あっ、貧困区か)


俺は周りの風景で察した。

街で一番貧しい地域、スラム街となっている場所だ。

治安の悪さで有名だったりする。 


(しかしまいったな…完全に迷った。全然どこだか分からない)


見知らぬ場所、それも治安が悪い場所にいるのは不安だ。

俺は生産職、戦闘は得意じゃない。


どうしようかと迷っていると…


「どうしたにゃ?」


近くに猫耳族の女の子がいた。

姿はほとんど人と同じ。

だが、頭から猫耳をはやし、お尻にはモコモコのしっぽがついている。


「ちょっと迷子になったんだ」

「ここは危ないにゃ。あたしが目的地まで案内してあげるにゃ」


「そ、そうか。ありがとなっ」

「いいにゃ~」


俺は見知らぬ猫耳の善意に、心があったかくなった。

じわりと目元が緩む。

きっと仲間の裏切り、衝撃シーンをみて心が荒んでいたからだろう。

人の優しさが身にしみる。


で、気づく。


(おっ、そうだ。涙は隠したほうが良いな。かっこ悪いし)


俺は手で目元をぬぐう。

それで表情をとりつくろう。


「それで、どこにいきたいにゃ?」


猫耳に聞かれた。


(そうだな…とりあえず貧困区を出て市街地だな。知っている場所に戻りたい。そこまで戻って何か考えよう)


俺は考え無しに出てきてしまったのだ。


それにティアとアイテムボックスは共有している関係上、お金も重要アイテムも、俺が作ったポーションも、多くは彼女が持っている。

信頼してティアに管理を任せていたし、彼女がギルドと交渉したり、俺が作ったポーションを商人に売っていたからだ。

俺の財産の大部分は、ほぼティアが持っていると思っても過言ではない。

それだけ信頼していた。


で、あろうことか俺は、ティアにお金を管理されて喜んでいた。

なんだか本当に夫婦になったみたいだと思って喜んでいたのだ。


(くっ…思い出すだけで自分が情けない)


(俺のバカ…バカバカバカっ!)


昔の自分を殴ってやりたい。



今俺のアイテムボッックスに入ってるのは、調合に使う素材と試作品のポーションがほとんど。

他は少しの生活用品。


素材を買うお金も、宿の机の上だ。


試しにお金を数えてみると……


1枚…2枚…3枚。


たったそれだけの通貨。

締めて3ゴールド。


(…うん、これじゃ、パン1つも買えやしない)


パン1つは5ゴールドするのだ。


(くそ…思い出すと泣けてくる…ティア…ティア…俺を裏切ったティア…)


彼女が俺の想いも、財産も持っているのだ…何もかも…


(……)


(ダメだ…ダメ。ティアを思い出しちゃだめだ…泣けてくる)


俺は頭からティアを振り払う。

彼女のことは頭から追い出す。

彼女のことを思い出すと心がズシリと痛むのだ。


(今は次だ次…次を考えないと。他のことを考えないと。とりあえず知ってる場所に移動しよう。ポーションでも売ってお金にしないと)


俺は気を取り直して猫耳を見る。


「市街地まで頼む」

「そうにゃー。まかせるにゃ」

「悪いな」




 

猫耳と歩いていると…


「げほっ、げほっ、げほっ」


近くでセキの音が聞こえる。

猫耳が結構な頻度でセキをするのだ。

 

(そういえば猫耳、ちょっと毛並みも悪いな。しっぽもシュンとしているし。それとアレだ、名前を聞いてなかった)


「そういえば名前はなんていうんだ?俺はエクトだ」

「あたしはリンにゃ~」


「そうかリン。セキ、大丈夫か?風邪でもひいてるのか?」

「これは石化病にゃ。最近この辺りではやってる奴にゃ」


(確か…聞いたことがある。獣人族特有の病気だと。徐々に体が石の用になって死んでしまうと)


「おい、大丈夫かよ?直りそうなのか?ヤバイ病気だろ?」

「難しいにゃ。特殊なポーションがいるけど、中々手に入らないにゃ」


(特殊なポーション…)


そこで俺はふと思い出した。

確か前に作った事があったはず。

ギルドの依頼で石化病患者を治したのだ。

かなりの高額クエストだった。


俺はアイテムボックスには入っている、石化回復ポーションを手に取る。


「リン、これを使え。多分これで治るはずだ」


リンはポーションを見て驚く。


「いいにゃ?知ってるにゃ、これ、高いやつにゃー」

「いいよ。俺にとってはタダみたいなもんだ」


石化回復ポーション。

通常作成するには高価な素材が必要になるのだが…土の精霊の加護がある俺は、容易に作ることができる。


「ダメにゃー。高すぎるにゃー。そんなのもらえないにゃ~」

「いいって。断るな、無理やり飲ますぞ。石化病の怖さは自分がよく知ってるんだろ?」

 

リンが断りそうだったので、強く出てみた。

 

「そ、そうにゃ?」


リンは俺を不思議そうに見る。

石化ポーションは欲しいが、まだ心の中で迷いが消えていないようだ。


だから俺はさらに強く出てみる。


「ほら、飲んでみろ。金なんてとらない。俺はリンに飲んで欲しいんだっ。それだけだっ」

「にゃら~、少しだけにゃ~」


俺を疑うリンだが、ゴクッとポーションを飲んだ。


するとリンの体が輝きだす。

毛並みも良くなり、猫耳もピクピク動き出す。  


「にゃにゃ、にゃ…か、体が…治ったにゃー!」


はしゃぎまわるリン。

猫耳がピンピンだ。

しっぽもフリフリになっている。


「よかったな。それよりリン、ここら辺で石化病が流行ってるって、他にも病人がいるのか?」

「そうにゃっー!うちの孤児院が大変にゃっ!!!」


(んん!?)

 

「どういうことだ?話を詳しく聞かせて欲しい」

「じ、実はにゃ~…」


リンは語りだした。

猫耳達が住んでいる孤児院で石化病が流行っているらしい。

幼い子供達が皆寝込んでいると。

後は死を待つのみになっていると。


(それは大変だ…確かにポーションは高いので、孤児院では買えないのかもしれないが…)


(…)


俺は数秒考えて結論を出す。


「分かった。リン、俺をつれていってくれ」

「?」


不思議顔のリン。

俺の言葉の意味が分からないのかもしれない。

なら分かりやすく言おう。


「リン、ポーションならすぐに調合できる。全員治してやるってことだ」

「え!?いいにゃー。でも、お金がないニャ」


驚くリンを見て思う。


(昔の俺だったらこんな事はしなかったかもしれないな…)


俺はこれまであまり周りに干渉しなかったのだ。


それに同じパーティーのティアが、俺を裏切ったティアがたびたび言っていた。

『無料の施しは絶対にしちゃだめ。相手のためにならない』と。


良い言葉のように思えるが…

今思えば、俺の能力を一人占するためだったようにも思える。


だからか。

ティアに裏切られてきついからか。

俺はティアがいっていたことと、全く反対のことをしたかったのだ。

つまり、誰彼かまわず助けたかった。


なぜなら、俺は自分の能力をティアのために使っていたかと思うと腹がたつからだ。

俺を裏切ったティアのために使っていたかと思うと…無性に悔しかった。

情けない。

やりきれない。


だから今は、他の者のために自分の能力を使いたかったのだ。

ティアを忘れるためにも。

彼女に傷つけられた心を癒すためにも。


「リン、任せろ。俺は特殊で、調合に金はかからない。それに対価は求めない。人を利用することしか考えていない奴らとは違う」

「そ、そうにゃ…」


迷うリン。

あまりに良い話で戸惑っているのかもしれない。


(それも当然か…)


だが俺はリンに強く告げる。


「ほら、早くしろ。リン、大変なんだろ。遅れると石化病が悪化するぞっ!子供達が大変なんだろっ!」

「そ、そうにゃー。危ないにゃー、こっちにゃー!」


リンは俺の言葉を信じたようだ。

いや、孤児達が心配なんだろう。

彼女いきなり走り出した。


俺はリンの後を追い、孤児院に向かった。



明日も投稿です。

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