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最底辺冒険者VS上級冒険者 3

ギルデイン視点です。

■ギルデイン




(はぁーはぁーはぁー)


(い、一体なんなんだ……あの化け物みたいな奴は……)



(はぁーはぁーはぁー)


(あの青い瞳…対峙しただけで汗が出てきた。ヤバイと分かった)



(はぁーはぁーはぁー)


(なんなんだよ、あいつは……あの気配…この国の名家、魔導十家…いや、王族クラスの加護じゃねーのかっ!)



(はぁーはぁーはぁー)


(あれがF級…最底辺だと・・・どうなってるっ!?なんであんな奴が生産職なんだよっ!)



ギルデインは走りながら壊れた加護の腕輪を見る。



(くっ、加護さえあれば…)



ギルデインは過去を思い出すのだった。




~~~記憶~~~~~~~~~



■ギルデイン、子供時代。


大人の女性がギルデインをはたく。


「ギル、この能無し、加護無し、消えなっ」

「くっ」


「あんたなんか、生まなきゃよかったよー」

「ぐっ」


「消えた父親は加護持ちだってのに…あんたはいつまでたっても加護が発現しない。能無しのまま」

「……」


「ギル、もう帰ってくるんじゃないよっ」

「……」





逃げ出したギルは、裏路地に入る。

鉄格子の窓越しに、一人の女の子と出会う。

部屋の中に女の子は捉えられていた。


「なんですか?あなたは?」

「別に、その…綺麗だと思って」

「そう、ありがとね」


「名前はなんていうんだ?」

「ナターシャよ」

「そうか、俺はギルデインだ」

「よろしくね。ギルデイン」

「あぁ」





窓越しにナターシャと話して笑うギルデイン。


「ナターシャ、今日も楽しかったよ」

「ギル、私もですよ。でも、いいのですか?毎日ここにきて」


「いいよ。どうせ行くとこなんかないし」

「そうですか」


「ナターシャ、明日も会えるかな。ここに来るよ。その、明後日っても」

「ええ、勿論。私はこの部屋を出られませんから」





だがある日。

ナターシャは告げる。


「ギル、もう、ここにはこないで下さい」


「なっ、何でだよ?」

「私はこの町を離れます」


「えっ。そんな急に…」

「引っ越すので。もう、日はありません」


「部屋から出られないのにか?」

「ギル、分かっていると思いますが、私に自由はありません」


「こんな鉄檻…」

「無理です。この鉄檻は壊せません。私も何度も試しました」


「くっ」





次の日もギルデインは来た。

鉄窓越しにナターシャを見る。


「ギル、どうしてきたのですか?」

「なぁ、ナターシャ、俺とここから逃げようっ!2人で逃げようっ!この鉄檻を切る」


ギルデインは持ってきたノコギリで鉄檻を切ろうとした。


「ギル、無理です。それに私が逃げたら、家族が巻き添えをくらいます」

「でも、このままじゃ。ナターシャがつれられて」

「いいのです。仕方ありません。この世には、仕方がないこともあります」


「ナターシャ…」





ナターシャが部屋から連れ出される日。

彼女が馬車に乗せられる所で、ギルデインが馬車の従者に飛びつく。


「おい、お前、ナターシャを離せっ!」

「なんだお前?」


従者とギルデインが格闘していると、馬車の中から豪華な衣装の男が出てくる。


「なんだお前、こそこそ会いに来ていたガキか?」

「それがどうした?」


「どうせ加護無し、能無しだろ。その女に近づくな。ナターシャは俺が買い取った」

「人を買うとか…お前、貴族かっ!」


「はははっ、そうだ、貴族様だ。それに加護持ちの天才様だっ!虫けらっ!どけよっ!邪魔だっ!はははっ」


ドカッ


「ぐふっ」


ギルデインは蹴り飛ばされる。


「ギルっ!」


ナターシャが馬車の中から悲鳴をあげる。


「そうやって地べたを這い回ってろ。お似合いだ」


地面に倒れながら、ギルデインは用意していた火炎瓶を馬車に向かって投げる。


ガチャン ボワッ


馬車が燃え始める。


「こ、このクソガキっ!」


ドスッ


ギルデインは再び貴族に蹴られた。


「おい、早く馬車の火を消せ」

「はい。分かりました」


「ナターシャに傷はつけるなよ。いくらかかったと思ってる。彼女は一旦降ろして部屋に戻せ」


ナターシャは鉄檻の部屋の中に戻された。





その日の夜。

ギルデインは再び、窓越しにナターシャに会いにきていた。


「ごめん、ナターシャ、俺が不甲斐ないばかりに」

「ギル、いいのです。それより怪我をして。大丈夫ですか?」


「別にこれぐらいいよ。でも、俺はこの鉄檻すら壊せない。加護がないから…」

「いいえ、ギル。私は加護がなくても、今のあなたのことが好きですよ」

「ナターシャ…」


「これまで、ずっと楽しかったです。これからも、一生忘れません」

「ナターシャ、俺は…」


「ギルはもっと笑ったほうが良いですよ。つらい時でも」

「でも、今は笑ってる場合じゃ、このままじゃナターシャは…」

「いいのです」



次の日。

会いに行くと、ナターシャはその部屋にいなかった。

他の場所に連れ去られたのだ。







数年後。

ギルデインはナターシャの行方を突き詰めた。


でもそこは…墓場だった。



あれから…

連れ去られてから1年のたたないうちに…

ナターシャは死んだのだった。



ナターシャの墓の前。

ギルデインは涙した。


(ナターシャ…俺に…俺に力があれば…)


(加護さえあれば…)




~~~~~~~~~~~~~~~~~~



回想から戻る。

ギルデインは再び壊れた腕輪を見る。


(そうだ…加護さえあれば…それさえあれば…)


(あの時も…ナターシャを失わずにすんだ)


(もう一度…加護を…)


(新しい腕輪さえ貰えば…)


(今度こそは…あの生産職にだって…)




ギルデインがエクトから逃げていると…


洞窟の出口には一人の剣士の姿。

エクトと同じパーティの剣士、グラントが出口を塞いでいた。


グランドは宿を抜け出し、エクトの後を追っていたのだ。

そして洞窟の出口を固めることにしたのだ。


「おっと、そんなに慌ててどこにいくんだ。毛皮野郎」


「お、お前は…あの時の……ティアの仲間か?」

「そうだ。お前はティアの敵だってな。ティアに酷いことをしたっ」


グラントは刀をギルデインに向ける。



ギルデインは思わず立ち止まる。


(こいつ……ヘルハウンド達にやられて、かなりの怪我を負っていたはず)


(なぜ、こいつがここにいる?)


だがギルデインはすぐに疑問を捨てる。

今優先すべきは逃げることなのだ。

ここで時間をかけられない。


「そこをどけっ!俺は急いでるんだっ!」


「どこにいくんだよ?そんなに慌てて。誰に追われてる?顔が青いぞ。誰にびびってる?元B級さん」


グラントは刀を横にふり、出口を塞ぐ。

勿論道を明ける気などない。

ギルデインをとめるためにここにいるのだから。


ギルデインは後ろを見て焦る。

エクトが追ってこないか心配しているのだ。

あの化け物がおってこないか。


「くっ。どけといってるだろっ!今、お前などにかまってる暇は……」


「あいにく俺の方にはあるんだよ。大事な用がな。ティアを泣かしたお前を許しちゃおけないっ!」



ギルデインは唇を噛む。

つい数十分前までは、ティアを騙して資産をかすめとったのだ。

その喜びに浸っていた。


(それなのに……なのに……なんで……)


「貴様もティアか……あの生産職と同じように…」


(あの女のせいで……この俺が……こんな目に…)


(あんな女のせいで…)



一瞬ギルデインの頭に、昔の自分の姿が写る。


ナターシャを守るために戦った自分の姿が。

弱かった頃の自分の姿が。


俺を足蹴にし、ナターシャを奪い、高笑いしていた男を思い出す。


(………)


(………)


(そうだ。今の俺はあの頃とは違う)


(全然違う)


(それに俺は笑われる方じゃねないっ!笑う方だっ!)



ギルデインはすぐさま立ち直る。

焦る意識を抑える。



「おい、毛皮、早く剣を抜け。丸腰の相手はしない」


グラントは刀をギルデインに向ける。



(ぐっ………)


ギルデインは考える。


相手はティアの仲間。

それに冷静に考えれば、一度ヘルハウンドに襲われて倒れた者なのだ。

なら必ず傷を負っているはず。

見た目は回復しているように見えるが、こんな短時間に全快するはずはない。


それに何より、相手は俺より低い冒険者ランクのはず。


(ならっ、俺に分があるっ)


(勝つのは俺だっ!)


(俺は変わったんだっ!)


(俺は奪う方で…奪われる方じゃない)


(俺は笑う方で…笑われる方じゃない)


(………)



数分振りに余裕を取り戻すギルデイン。


「はははっ。いいだろう。…お前如きの腕なら…加護がなくとも…倒せるっ!」


ギルデインが腰の剣を抜き、グラントに斬りかかるが…



――ズドンッッッッ!!!



「な、なに………」


ギルデインはグラントに切り捨てられた。

ドサッっと地面に倒れるギルデイン。


グランドは倒れたギルデインを見下ろして呟く。


「対人戦で、魔物使いが剣士に勝てるわけないだろ」




■エクト




俺がギルデインを追うと、彼は既に床に倒れていた。

その傍にはグラント。


(グラントが倒したのだろう)


(彼がこっちの出口を塞いでることは、『ウィンディーネの瞳』で察知していた)


「グラント、やったな」

「あぁ、エクトのくれたポーションのおかげだ。傷を癒して、一時的に戦闘能力も高めるんだろ。瓶に書いてあった」


そう。

俺が宿でグラントに渡したポーション。

それは人より異常に頑丈なグランドの体質に合わして作った特別製。

使用すれば一時的に許容量を超えて体内の細胞と精霊因子を活性化させる。


そのため、傷を急激に治すと同時に戦闘能力も高めるのだ。

通常の人間ならポーションの負荷に耐えることが出来ず、使用することは出来ない代物だ。


(グラントしか使用できないものだ)


(だが…副作用がないわけではない)


「あれはグラント様に調整したものだからな。でもあれはブースターだ。効果がきれたら一気に負担がくる。多分、一週間は動けないぞ」


「えっ、なっ、なんだって…」


言葉と同時にクラっと揺れるグラント。


(やっぱりか)


「しっかりしろ」


俺はグラントの肩を抑える。


「悪い。力が…上手く入らない。急に体が重くなってきた」

「多分、ポーションの反動だ。あれはまだ試作品だから。分かっていないことも多い」


そう。

ティアのために急いで実用化したものだ。

元々研究はしていたが、完成にはいたっていなかった。

しかし、もし俺が勝てなかったときのために、グラントに託していたのだ。

効果については自信があったが、半ば実験的なものでもあった。


(でも、効果があってよかった)


「そ、そんなもんを俺に……でも…随分きいたぜ」

「だな。よくやった。実験成功だ。それにしても、ほんとよくきいたな」


(かなりの怪我をおっていたはずだ。それに魔物使いとはいえ、元B級のギルデインを一撃で倒している)


(グラントの力は予想以上だ……)


「俺も何かしたかったからな。エクトに頼みはしたが、やっぱりベッドでは寝てられなかった」

「そうか。やったな」


「おう」


パンッと手を合わせる。

ハイタッチする。


心を通わせた。


「だがグラント、俺はまだティアとの関係を怒ってるからな」

「えっ、エクト、お前、綺麗に水に流したんじゃ?俺の腹殴ったろ?」


「一発殴ったぐらいで許すわけないだろ。常識的に考えて」


(当然だ。好きな女を寝取られたら、直ぐには気持ちは収まらない。頭の理解とは別だ)


「はぁ?」


驚くグラント。


「まぁ、話はよそう。とりあえずこの魔物使い、ギルデインを捕まえてギルドに差し出さないと」

「そ、そうだな。エクト」




―――こうして戦いは終わったのだった。


―――この場の戦いが



―――だが一方、ウィズ達に危険が迫っていたのだった



―――なぜなら


―――この街にティアを探しに来たのは、1人ではなかったのだ


ドイツ語で獣=ティーアです。


WEB拍手&感想&評価ありがとうございます。



次回は…

明後日、27日の夜に投稿予定です。


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