最底辺冒険者VS上級冒険者
追記1/22 23時 加筆 3500→4000文字
俺が洞窟に入ると、ヘルハウンドが襲ってくる。
2つの属性ポーションを投げつけ、拒絶反応で爆発を起こす。
―――ドゴンッ!
一瞬で塵になる魔物。
(よしっ)
中へ進んでいくと…1人の男がいた。
白い毛皮をきた男。
首には牙のようなネックレスをつけている。
その男が、ヘルハウンド達の傍にいる。
(確か…どこかで見たことがある男だ)
(そう、貧困街でティアを探していた男の1人)
「お前がギルデインか?」
俺の声に反応して、男がこちらを見る。
「そうだが…お前は誰だ?…まて、見覚えがあるぞ…。そうだ、そうか、あれだ…確か貧困街であったな。それにティアのつれで…最底辺冒険者、F級の生産職だろ。加護無しの。あれから調べたよ」
「その通りだ」
「はははっ。やっぱりティアの仲間か。いや、騙された哀れな被害者かな?」
「俺はティアの仲間だ」
「そうかそうか。あいつ、魔物に襲われそうになって、仲間をオトリにしてたぞ。あれは傑作だった。はははっ」
大笑いするギルデイン。
「知ってる」
「ほーう」
ニヤニヤと笑うギルデイン。
興味深そうに俺を眺める。
「あいつの本性を知ってるのか?それでも仲間だってのか?」
「そうだ」
「はははっ。とんだバカだな。お前に忠告してやるよ。あんな女は放っておけ。今までさんざん人を騙して生きてきた女だ。そんな女を背負い込んでどうする?そんな女捨てろ。女なんでごまんといるだろ」
「ティアは俺の仲間だっ!」
(そう……)
(俺はティアのことが好きだし、これまで世話になってきた)
(ティアは大事な仲間だ)
「仲間ねー。でっ、それがどうした?仲間だ?何いってる?使えない奴はとっとと切り捨てろ。それでいいんだよ」
「俺は見捨てない。ティアは仲間だっ!」
「そうか…救いようがないバカだな。ティアに惚れでもしたか?」
「バカでもかまわない」
「やっぱりそうか。どうせティアにたらしこまれたんだろ。男を釣るのだけは上手い女だから。悪いことは言わない、自分をだました女なんて放っておけよ」
「違う。ティアはそんな奴じゃない。お前には分からないかもしれないけど、いいところだってたくさんある」
(そうだ)
(俺にはティアの良いところが、何十個だって思いつく)
だが、ギルデインはニヤニヤしたままだ。
「ティアねー。奴の良いところ…なんだ、見た目か?」
「お前には一生分からないだろうな」
「ほーう。ちがいねー。あの女のどこがいいかねー。はははっ。それに、どうやら何をいっても無駄なようだな」
ギルデインはニヤニヤと笑ったまま、感心した顔をする。
「それで生産職、何しに来た?ここにティアはいないぞ」
「それも知ってる」
「そうか、今頃死んでるかもな。ボロボロになったティアの死体でもみたのか?ヘルハウンド達の帰りが遅いからな。きっと楽しく遊んでるんだろ。今頃ボロ雑巾だろ。はははっ」
「いいや、ティアは俺が助けた」
「はぁ?F級のお前がか!?」
「そうだ」
「剣も杖ももっていない、生産職のお前がか?その装備で?はははっ、冗談はよしてくれよ。腹が痛いっ。はははっ」
大笑いするギルデイン。
確かに俺は無手だ。
アイテムボックスしか装備していない。
武器といえるのは腰にあるナイフぐらいだ。
だから客観的には信じられないだろう
まるで戦闘をする者の姿じゃないから。
「ギルデイン。ティアから奪ったものを返せ。あれはティアが数年かけてコツコツと貯めたものだ。お前のものじゃないっ」
「はははっ。返せって。返すわけないだろっ。これは俺のものだっ!」
「返せっていってるんだっ」
「バカいうなよ。誰が手に入れたものを返すかよ。それにどうせティアだって誰かを騙して奪ったモノだろ。なら、俺が奪っても問題ないだろ」
「それでもだっ!それはティアが何年も頑張ってためたものだ。お前なんかに、ティアの夢は壊させない」
「はははっ、夢ねー。なんだ、やっぱりお前もティア被害者の1人だろっ?そうだろっ!?そうなんだろ?はははっ」
ギルデインは笑うが…途中で笑いが止まる。
違和感に気づいたのだ。
やや真剣な顔になる。
「そういえばお前、どうやってここまできた?表にはヘルハウンドがいたはずだ。ここに来れるわけがない」
「あいつらなら、俺が倒してきた」
「はんっ。嘘だな。あいつらはそう簡単にやられるわけがない。ましてF級生産職なんかに」
ヒューン
ギルデインが口笛を吹く。
洞窟に高い音が響く。
「………」
「………」
だが…何も起きない。
何もやってこない。
足音すら聞こえない。
すぐさまギルデインの表情が変わる。
「んん?お前…まさか…本当に…倒してきたのか?」
「嘘はいってない」
「そんなはずは…」
「疑うなら試してみたらどうだ?お前の後ろに控えているヘルハウンド達で」
ギルデインは一瞬迷いの表情を浮かべるが…
すぐに懸念を打ち消す。
俺の言葉を嘘だと思ったのだろう。
「そうか。いいだろう。どんな偶然か起きたか知らんが、お望みどおり、お前の力をテストしてやるよっ!俺がお前の頭をさましてやるっ!こいつらでなーっ!後悔しなきゃいいがなっー!!!」
ヒューン
ギルデインが口笛をふくと、ヘルハウンド達が一斉に動き出す。
ギルデインの前に集り、俺を睨む。
「お前ら、目の前の奴をかみ殺せっ!身の程って奴を教えてやれっ!底辺が上級に歯向かうってのが、どういう意味かってことをなっ!!!」
「「GUOOOOOOOOOOOO!」」
「「GUOOOOOOOOOOOOO!」」
ヘルハウンド達が俺に襲い掛かってくる。
(だが…甘い)
(一度にきてくれてラッキーだ。挑発したかいがある)
敵が密集してくれれば、一気に倒すことが出来る。
俺が2属性のポーションを投げつけると……
―――ドゴンッ!
拒絶反応で爆発が起こり、敵のヘルハウンドは消滅した。
「ば、ばかな……一瞬で…だと」
驚愕に震えるギルデイン。
目の前で何対ものヘルハウンドが一瞬で消えたのだ。
その驚きも当然だろう。
「どうした?もう手下はいないのか?」
「ど、どうやった?ヘルハウンド達がアイテム如きにやられるはずがない…それに何を使った?そんなもの、見たことがない!?」
「お前には説明する必要がないことだ」
「はんっ…いいだろう。どうせまぐれだっ、そうに決まってる」
戸惑うギルデインは、自分に言い聞かせる。
目の前の光景が信じられないのだ。
「おい、次はないのか?」
「い、いいだろう。そんなに欲しいのなら、俺の一番で相手をしてやるよ。格の違いって奴を教えてやるっ!」
「そうか」
「それにお前、俺が誰だかわかってるのか?天才だぞ、加護持ちだぞっ!」
「それは知っている、元上級さん」
「そうだ。お前も知っている通り、俺は上級だ。B級以上の上級冒険者は、ほぼ全員加護持ちだ。つまり、才能の差だっ!どんなに努力しても埋められない差があるんだよっ!はははっ」
「ギルデイン。それがどうした。能書きはいい。それとも、能書きで上級冒険者にでもなったのかな?」
「はははっ、そうかっ、F級は頭も弱いか。いいだろう、じゃあみせてやる。生まれながらに超えられない、本物の差って奴をなっ!それを今から教えてやるよっ!!!」
ギルデインの腕輪が光り始める。
「俺の『獣の加護』の力を見せてやるっ!こい、ジェネラル・ヘルハウンドっ!」
ドスンッ、ドスンッ、と地面が揺れ。
―――『GUOOOOOOOOOOO!!!!』
洞窟の奥から叫び声が聞こえてくる。
そして…
巨大な黒い獣が現れる。
ヘルハウンドの上位種だ。
圧倒的な大きさに圧力がある。
これまでの魔物とは迫力が違う。
「……」
(さすがにデカイな。10m程ある)
(前に魔物図鑑でみたことがあるが、通常個体の3倍ほどか)
「はははっ。どうだ?言葉もないか?このレベルの魔物は上級冒険者でもてこずる。獣の加護がなければ、支配下におけない魔物だっ!」
(これが…加護の力か……)
(しかも、動物系、植物系、魔物系を含む生物系加護の1つ)
(動物系加護…)
(獣の加護か…)
(………)
(今の俺にとってはやっかいなタイプだな…)
「さっきまでのヘルハウンドとは格が違う。ましてお前のようなルーキーの生産職なら、すぐに終わりだっ!今更後悔しても遅いぜっ!」
「どうかな。それよりさっきから口数が多いぞ。ギルデイン、焦っているのか?」
「ふっ、へらず口をっ!いけっ、奴をかみ殺せっ!!」
―――『GUOOOOOOOOO!!!』
ジェネラルヘルハウンドが俺に襲い掛かってくる。
俺は2属性のポーションを投げる。
―――ドゴンッ!
拒絶反応で爆発が起こり…
ジェネラル・ヘルハウンドが巻き込まれるが…
消えてはいない。
爆発後もジェネラル・ヘルハウンドは生きている。
(さすが上位種。雑魚と同じようにはいかないか)
(タフだな、魔法防御も高いのだろう……)
「どうだっ!見たかっ!これが才能の力だっ!」
叫ぶギルデイン。
自分の加護の力、魔物に自信をもっているようだ。
(こうなれば……)
(使いたくはなかったが……)
(知られたくはないのだが……久しぶりにアレをやるか)
俺は集中する。
体内の精霊因子を振動され、瞳に力を入れる。
そして加護に、精霊に語りかける。
俺が持っている加護。
五大精霊の加護。
炎の精霊サラマンダー
水の精霊ウンディーネ
土の精霊ノーム
風の精霊シルフ
雷の精霊トール
その内の一つ。
水の精霊、ウンディーネ。
水の美女、彼女の『慧眼』の能力を使用するのだ。
―――『ウンディーネの瞳』
―――発動っ!
突如俺の右目に異変が起こる。
瞳が輝きだし、青く光輝く。
俺の視界の景色が変わる。
世界の見え方が変わるのだ。
俺には様々な色が見え始める。
そう、世界に分布する魔法の源。
精霊因子が目に見え始めたのだ。
『ウンディーネの瞳』
――全てを……
――世界を見通す瞳
それを今、発動したのだ。
発動っ!!!
WEB拍手&感想&評価ありがとうございます。
明日も投稿です。