表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/41

【パーティー:ティア3 +記憶】

(はぁーはぁーはぁー)


ティアは逃げる。

だが、後ろからヘルハウンドが追ってくる。


武器を全てとられたため丸腰だ。

その上、ただでさえ武器有りでも相手の方が強いのだ。


(捕まったら絶対に勝てない。逃げなきゃ)



だが…

すぐにヘルハウンドに追いつかれてしまう。


「GUOOOOO!!」


ドスッ


「きゃっ」


(うっ!)


体当たりをくらった。

ティアは吹き飛ばされた。


地面に倒れこむ。

その上。


「GUOOOO!」


ヘルハウンドに炎を吐きかけられるティア。


「ぎゃっ」


(あ、熱いっ…熱い…)


ティアの服と髪が燃える。

ヘルハウンドの業火で焼かれる。


焼けるような痛みで思わず涙が出てくる。


「GUOOOOOO!」


ガシュッ


燃えるティアにヘルハウンドは噛み付く。


「きゃっ」


ヘルハウンドの牙が体に刺さるティア。

だが、ティアを噛み千切ることはせず、噛んで投げ飛ばす。


地面に転がるティア。




その後もへルバウンドはティアを殴ったり、炎を吐きかけて遊んでいる。

ギルデインの命令を守っているのだ。

殺すのが目的なら、既にティアは死んでいるだろう。


生かさず、殺さず。

ティアをボールのようにして遊んでいた。



そのため、ティアはボロボロだった。

鎧もないのだ。


ティアは騎士。

守りの戦いを得意とする剣士。

防御魔法と回復魔法を併用してるとはいえ、相手の攻撃はほぼ体に通る。


攻撃手段がないため、相手の攻撃はずっと続く。

魔力も直につき、回復も出来なくなる。


髪と肌が所々燃えているティア。

腕や足は何箇所も噛まれている。

血がそこら中から出ており、骨も折れている。


歩くのもやっとの状態。

いや、地面をはいよることしかできない。


おまけにアイテムボックスも空っぽ。

回復ポーションすらない。


つまり……虫の息だった。



地面に倒れたティア。

あたりに響くのは、ヘルハウンドの声だけ。



(もう…よく分からないよぉ)


(ボロボロすぎて…痛みすら麻痺してきた)


(もう…ダメかも…しれない)


(ほんとに…まずい)



ティアの意識は限りなく朦朧としていた。

その中でなんとか気を保っていた・

だが、限界に近づいている。


視界も土と血で歪んでいる。

よく見えない。



(ダメ…なんとか…気を持ってないと)


(ここで気を失うと…戻ってこれない)


(絶対に…)


(永遠に…おわり…)


(なんとか…保たない…とぉ)


(なん…とかぁ…)



おぼろげなティアの視界に写るのは…


首にかけているネックレスのメダル。

焼き焦げた黒いメダル。


いつの間にか目の前に来ている。


(このメダル…)


(あの日…あの日と同じ…)


(このメダルが焼き焦げた…あの日と…おな…じ)



ティアは懸命に意識を保とうとするが…



(………)


(………)


(………)



いつしか気を失っていた。


体の限界を超えていたのだ。

さすがに意識を保ち続けることはできなかった。

無理だったのだ。



そうしてティアは…昔の記憶を思い出すのだった。


メダルが焼き焦げた日を。




~~【記憶】~~~~~~~~~~~~~~



■ティア・フロライン:12歳のある日



夕刻。


フロライン邸。


そこそこ大きなお屋敷。

この地方を治めているユヒト伯爵の側近であり、ティアの父親である、ハリス・フロラインの家。

つまり、ティアの家。



私が屋敷の庭で、花壇のお花を見ていると…

お父さんがやってくる。


「ティア、執事さんに聞いたぞ。また隣の子を泣かしたってな」

「お父さん…あいつがバカだったのよ」


「いつもいってるだろ、ティア、悪いことはするな」

「なんで?」


「ダメなものはダメだ」

「もーう。誰もみてないじゃん」


「それでもだ。神様が見てる」

「見てないよ。私には加護ないし、レネは加護持ちだから、神様に見られてるかもしれないけど」


「ティア、屁理屈いうな。妹のレネも同じだ。加護が無くても有っても、変わらない」

「嘘だーウソウソ。全然違うじゃん。皆、レネのことちやほやするよー」


お父さんは「やれやれ、困った」という顔をしてから。


「それでも…お父さんはティアのこと好きだぞ」

「レネより?」


「それは…そうだ。お母さんとレネには、秘密にしてくれるか」

「うん、いいよー。でも、証拠見せてよ」


「証拠?」

「うん。私のこと好きって証拠」


「困ったな」


本当に困った顔をするお父さん。


「好きなら、ちゃんと形にしてくれないと」

「そうだな…」


お父さんはポケットをさぐって。


「ティア、じゃあ、これをあげるよ」


お父さんが私に金色のモノをくれた。


「何これ?メダル?」

「ティアにはメダルに見えるか?」

「うん」


「でもそのメダル、ゆすってごらん」

「ゆする?」


「そう、手でこすってみるといい」

「うん」


私がメダルをこすると…


「あっ、2つに割れた」

「そう、中に大事なものをしまえるんだ。少しだけどね」


中に入っていたのは…


「私たちの家族写真」

「そうだ、お父さんには大切なものだからね」


「でもこれ、私にくれるの?」

「あげるよ。大事なものだから。ティアも大事にしてね」


「うん。ありがとう。大事にするね」

「よかった」


嬉しそうに微笑み、私の頭を撫でるお父さん。

私はお父さんに撫でられて気持ちが良かった。


「それでティア、なんで相手を泣かしたんだ?」

「私のこと笑ったから」


「笑った?」

「うん。私が世界一の騎士になるっていったら、笑われた。女じゃ無理だーっていわれた」


「そうか。ティアならなれるよ」

「お父さん、ほんと?」


「真面目に頑張ればな。でも、他の子を泣かすな。笑ってやりすごすぐらいになれ」

「いやー、いや」


「それができないと、世界一の騎士なんて夢、絶対にかなわないぞ」

「そうかなー。世界一強いんなら、笑う子全員泣かせば良いよ」


「ティア、そういうのはダメだ。力の強さはあまり関係ない」

「そうなの?」


「そうだ」

「うん。なら、そうするー」


「よかった。ティア、ほら、もうすぐ夕飯だぞ」

「うん。お腹すいたー」








フロライン邸。


家族の団欒。

お父さんとお母さん。

それに私の11歳の妹、レネと机を囲んでの夕食。


「お母さん、ティアが私のウインナーとったぁー」

「ティア、お姉ちゃんなんだから。そんなことしちゃだめよ。妹には優しくしないとね」


「レネが食べるの遅いからだよぉー」

「こらこら、ティア、妹をいじめるな」


「お父さん、別にいじめてないよ。ねぇ、レネもそう思うでしょ?」

「お姉ちゃんがいじめたぁー」


「え、いじめてないよ。それにレネには加護があるからいいでしょ。神様の加護なんでしょ」

「そういう話しじゃない。それにティアだって……」


「ふんっ、いいのぉ」

「ティア………」


「それにねー、お父さん、レネよりティアが好きだっていってくれたよ」

「こらっ、ティア」


お父さんはちょっと焦った顔をする。


「その証拠に、ほら、メダルくれたんだ」


私は首から提げているメダルをみせる。


「あー、ティアいいなー。ねえ、お父さん、ほんとー?レネのこと嫌いなの?」

「あなた、本当にそんなこといったの?」


お母さんとレネが、お父さんを見る。


「違うぞ、ティアもレネも同じぐらい好きだ」


「嘘ついたー、お父さん嘘ついたー。さっき聞いたよ、この耳で聞いたよー」

「ティア、今はご飯食べなさい」

「はーい」



すると…


トントン


「ご主人様、失礼します」


家の執事が入ってくる。


「どうした?」

「旦那様、お食事中失礼します。しかし、お知り合いのハイド様と、お客人が見えています」


「そうか…こんな時間に一体…用件の方は?」

「直接お話しするということです。かなり緊急の要件のようです」


「そうか……」


お父さんが苦い顔をする。

何かを考えている時の顔だ。


「あなた…」


お母さんは心配そうな顔で、お父さんを見る。

2人は目線で会話する。


「そうだな…念のため、子供達を隠してくれないか。この部屋のどこでも良い」

「はい。分かりました」」


お母さんは私達をみて。


「ほら、ティア、レネ、こっちよ」

「ええ、ご飯途中だよー」

「わたしもー」


「いいから、このタンスの中に隠れてね。絶対でてきちゃだめよ」

「えー狭いよ」

「暗いよー」


「2人とも、我侭いわない。絶対に声を出しちゃダメよ。なにがあってもね」

「えー」

「うーん」


「2人とも、返事は?」

「「う、うん」」


「よかった。少しの辛抱だからね」


お母さんが私達の頭を撫でた後、扉を閉める。


私とレネは、タンスの隙間から部屋の中を覗く。




すると…

誰かが部屋に入ってきた。


「ハリス、すまない夜分遅く」


現れたのはハイドおじさん。


お父さんのお友達。

お父さんと同じく、ユヒト伯爵に仕える側近の一人だ。

何故か緊張しているようだ。


「いいよ。緊急の要件のようだから。それでそちらの方は」


見知らぬ人を見るお父さん。

ハイドおじさんが説明する前に。


「お食事中、失礼します。私、隣の地方を治めます、公爵様の部下、カーラエルになります」

「そうですか。確か一度お会いになったかもしれませんね」


「はい。この地方にも外交で来たことがありますので」

「それで、どうなさいました。こんな夜更けに」


「いえ、実は至急お知らせしたいことがありまして」

「そのようですね、かなり急ぎのようですから」


「はい。実はこの地方の領主、あなたが仕えているユヒト伯爵邸で、今しがた、不慮の事故があったのです」

「不慮の事故?」


「はい。突然家が燃えて焼け落ちたのです。今も炎上中です。こちらが犠牲者のリストです」


カーラエルから渡された紙をみるお父さん。


「これは…伯爵様、それに…主だった側近まで…」

「はい。ご不幸になられました」


お父さんは渋い顔をしてから…


「しかし、なぜこれを隣国のあなたが。それに…これは間違っていますよ」

「間違っている?どこがですか?」


「私の名前が入っています。ほら、ここです」


お父さんは紙を指摘です。

だが相手の男、カーラエルはまったく動揺せず。


「間違ってはいませんよ。この紙は、明日交付しますので」

「明日?」


「そう、明日です」


ニヤリと笑うカーラエル。

はっとした顔をするお父さん。


「まさかっ!」



次の瞬間。


ブシュ


お父さんの胸から、剣が突き出てくる。

血が噴出す。


(お、お父さんっ!)


思わず叫びそうになった。

お父さんが剣で刺されたのだ。


「き、貴様……こんなことをして…私は…伯爵様の部下で」

「大丈夫ですよ。リストにある方は、伯爵様含めて、全員お亡くなる予定です。明日からここは公爵領です」


「ば、ばかなっ…」


カーライルが剣を抜くと。

床に倒れながら胸を押さえるお父さん。


「そして、この地方の政策も一変させます。加護持ちは強制接収します」

「何を…ばかげたことを…」


「この地方はどうもゆるくていけない。今のご時世、貴重な加護持ちを遊ばせている余裕はないのです。使えない者は切捨て、有用な者のみ採用します」


「なっ、なぜ…私たちを…他の側近まで…」


「確かに、行政官僚は必要でしょう。しかし、頭が死んだら、部下も一新します。あなたは賄賂が効かないと聞いていますからね。いくら有能でも、そういうのは邪魔です」


お父さんはハイドおじさんを見る。


「じゃあ、ハイド…そこにお前の名前がないのは…」

「彼は私たちに賛同してくれましてね。今ではこちらの仲間ですよ。彼のおかげで、いくらか楽に事が進みました」


「ハイド…おまえ…」


お父さんに睨まれて、ハイドおじさんはつらそうな顔をする。


「ハリスさん、あなたも今からでもどうですか。新しい領主様に仕えませんか?あなたは有能だと聞いていますよ」

「だ、誰が…お前らにっ」


「そうですか。最初から分かっていましたが。では忠臣らしく、一緒にあの世へどうぞ」


ブシュ


「ぐはっ」


再び剣を突き刺されるお父さん。


(おっ、お父さんっ!)


私はタンスの中で叫びそうになるが、声は出なかった。

ショックで声が出ないのだ。


「お、おい。カーライル、ここではやるなよっ」


ハイドおじさんが、カーライルを止めようとする。


「大丈夫です、公爵様は約束を守りますよ。あなたの無事です。それに役目はもう大丈夫です。あなたのおかげで簡単に進入できましたから、もう帰って良いですよ。これからも、この地のためにがんばってください」


「そ、そうか…」


「それにあなたは、この部屋でこれから起こることはみたくないでしょう」

「そうだな…」


ハイドおじさんは私のお母さんを見てから…


「……」



数秒後。


頭を下げる


「すまない…」


申し訳なさそうな声を出すハイドおじさん。


でもお母さんは、


「ハイド、あなたって人は…こんなことをしておいて…すまないですって…たったそれだけ…たったそれしか言えないの……」


ハイドおじさんを睨む。


「…本当に…すまない」


ハイドおじさんは再びそういってから、部屋を出て行った。


次回は、記憶編の続きです。


暗い回が続いておりますが…

も…もうすぐ……スッキリ。


WEB拍手&感想&評価ありがとうございます。



明日も投稿です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
拍手ボタン設置中。なろうユーザーでなくても、一言感想を送ることができます。

 

こちらも連載中【毎週月曜:23時更新】↓【元月間異世界転生/転移:恋愛3位】
7人の聖女召喚~料理スキルLV80の俺は、おねえちゃんと世界最強になる

 

【1/17】連載再開です。世界最強ものです↓
転生したら吸血鬼さんだった件~チートで世界最強です~

 

【ざまぁ】【8/19 完結しました】↓
彼女が二股していたので、腰が砕ける程衝撃を受けた。

 

【ざまぁ】【8/4 完結しました】↓
ビューティフルざまぁ~公爵令嬢、悪役令嬢への道を歩む~
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ