【パーティー:ティア2】
「これで全部よ」
「そうかティア…俺は一応お前を信用してるが、今すぐ俺の名前をお前のアイテムボックスに登録しろ。共有設定だ。本当に全部だしたか、中を確認する」
(そうくるだろうと思った)
「分かったわ」
ティアはアイテムボックスにギルデインを登録する。
中身を確認するギルデイン。
「よし、確認した。もう名前は消して良い。そこに名前は残したくない。お前のような嘘つきと、死んでも夫婦にはなりたくないからなっ。一生の恥だっ。はははっ!」
(……)
ティアはアイテムボックスからギルデインの名前を消す。
「消したよ」
「ティアは良い子でいいねー」
「……」
「さてと…」
ティアから奪ったアイテムを確認するギルデイン。
嬉しそうに目が輝いている。
「でもよー、おうおう、よくもまぁーこんなに溜め込んたもんだ。大量だ。全部で1000万G近くあるな。さすがティア」
「………」
「よく稼ぐ。まぁ、また数年頑張れや。妹は救えるかもしれないぞ。今度はもっと値上がりしてるかもしれないけどなっ!はははっ」
ギルデインは、悔しそうにするティアを見て笑う。
ティアのアイテムボックスは空っぽ。
全て渡し終えて、すっからかんになっていた。
(これまで数年集めてきたものが…全部……全部なくなっちゃった…)
ティアは泣きたくなった。
これまでの努力が水の泡なのだ。
人を騙してまで手に入れたものを、全て奪われてしまった。
(何も残っていない…何も……)
(私の数年間が……ゼロに…)
(すべてなくなった………)
(必死に集めたのに………これじゃ…妹を救えない…)
ティアは泣きそうになりながらも、なんとか踏みとどまる。
(私が泣いちゃいけない。まだ……諦めちゃいけない)
ティアは気丈にも声を出す。
未来に目を向ける。
「ならっ、帰してくれる。ギルデイン、この魔物たちをどけて」
「はぁ?なんだって?」
「えっ…」
「ティア、一体何いってるんだ?」
ギルデインはおかしなことでも聞いたような顔をする。
その顔を見ているとティアは怒気が湧いてくる。
(こいつ……)
「だからどけてよっ!。アイテムは全て渡したでしょ。約束したでしょっ!逃がしてくれるってっ!」
ティアは叫ぶが、ギルデインは笑う。
「なに、まだアイテム持ってるだろ?」
「全部渡したでしょ。アイテムボックスの中身を見たでしょ!」
「そこは見た。でも、おまえ自身が持ってるだろ」
(!?)
「腰のレイピアも置いていけ。勿論、鎧もなっ。早く脱げ」
「でも…これがないとこの森から出られない。魔物だっているんだからっ」
(そう。これがないと…私は魔物から身を守れない。街には戻れない)
「かもな。でも俺には関係ないだろ」
「……」
「まぁ、頑張れ、運がよければ無事かもな。それに魔物を誘惑してみたらどうだ?そういうの得意だろ。はははっ」
「……」
ティアは唇を噛み、ギルデインを睨む。
「ほら、寄越せ。なんだティア?誘うような目をして、俺に脱がして欲しいのか?」
「くっ…」
ティアは鎧を脱ぎ、腰のレイピアもギルデインに渡す。
身に着けているのは服のみだ。
(これじゃ冒険者ではなく、ただの村人…)
「はははっ。結構、結構。ティア、まるで村娘みたいな格好だな。そっちの方が似合ってるんじゃないかっ!」
「……これでいい?もう用はないわね」
「そうだな。でもあれだ…今思い出した」
ギルデインはティアに近づき。
(な、何……)
ボシュ
「きゃっ」
ティアの顔を思いっきり殴り飛ばすギルデイン。
地面に転がるティア。
口からは血が出ている。
「な、なにするのよっ!」
「お返しだ。さっき俺に攻撃しようとしたよな。これであいこだ」
「……」
「にしても、やっぱり女の顔を殴るのは楽しいな。特に美人はよー。殴りがいがあるぜ。崩れた顔がたまらない。はははっ。ティア、気持ちよかった。だからなー、もう一発殴らせろやっ」
ボシュ
「きゃっ」
ティアの顔を蹴り飛ばすギルデイン。
吹き飛ぶティア。
「悪いーけっちまった。お前のきたねー顔に触りたくなくてなっ。はははっ」
「あっ、あんたねーっ!」
「おうおう。蹴られても元気だな。でもあれか…俺だけが遊んじゃいけねーな。楽しみは皆で共有しないとな。俺は優しいんだ」
ギルデインはヘルハウンド達をなでる。
(……)
「こいつら、ボール遊びが好きなんだ。ボールを投げると、皆で追って噛み付きあうんだ。大抵ボールはボロボロになるけどな。その遊びが大好きなんだ。そういやティア?」
「何よっ?」
「人間の頭はボールに似てるよな」
ギルデインはニヤリとティアを見る。
(こいつ、まさか…私をこの魔物たちに…)
「な、なにっ?約束が違うじゃない!逃がしてくれるんじゃないのっ!」
「約束は守る。ほらっ、ティア、逃げるといい。逃がしてやるよ。数秒後にこいつらが追ってくがな」
ヘルハウンド達がティアを睨む。
ティアはギルデインに怒りが湧いてきた。
数年間ためたものを全て奪われ、その上からかわれ、騙されたのだ。
(身包みをはがされた私で…まだ……遊ぼうとしている)
(こいつ……どこまで私をこけにすれば……)
「ギル…こっこんなことして、許されると思ってるのっ!!」
「はははっ、当たりまえだ。えっ?理由、それは俺がお前より強いからだ。それ以外に理由なんていらねーよ。はははっ」
「あんたね……」
「お前はよく知ってるだろ。妹の件でなっ!」
「………」
「人は平等じゃねーっ!バカな奴、頭が良い奴。金持ち、貧乏。魔法が使える奴。使えない奴。でな、冒険者にとっては一番大事なのは、加護があるかどうかだ。妹と違って、加護無しのお前、出来そこないのお前はな、いくらたっても俺には勝てないんだよー!はははっ」
(そう。妹には高価な加護があるから浚われた。それを後々になって知った)
「生まれた時から身分が違うんだよ。1万人に1人の加護持ち、それが天才、つまり俺様だっ!能無しのお前は、一生地面をはいつくばってろっ!」
「………」
「それになーティア。誰か怒るんだよっ?えっ?お前のことなんで誰も信用してねーよ。これまで散々パーティーの奴を騙してきたんだろっ。自業自得だっ!」
「ぐっ…」
「苦い顔するなよ。それに聞くがよー。お前を助けたい奴なんているのか?誰か1人でも名前を言ってみろ、呼んでやるかもな。こいつらに呼びにいかせてやるよ」
ヘルハウンド達をなでるギルデイン。
「……」
「ほらなっ。いないだろ。お前は1人なんだよ。一生孤独の女だ。誰からも信用なんてされてない。はははっ!」
唇を噛んでギルデインを睨むティア。
「おいおいティア、睨むなよ。怒ってる暇はないんじゃないか。ほらっ、こいつらが涎をたらしている。早く遊びたいようだ。別に、ここで食べられても良いぞ」
(こいつ…)
「後、5秒後にゲームスタートだ。さーて、どこまで逃げられるかなっ。はははっ」
「……」
(ギルデインはにくい…でも…でも今は…逃げなきゃ)
(絶対に生き延びなきゃ)
(そのために頑張ってきたんだからっ)
ティアは洞窟から逃げ出した。
数秒後。
「ほらっ、エサの時間だ。あの女を追って遊んで来い。ボロ雑巾のようになぶってやれ」
ギルデインがいうと。
「「「「GUOOOOOOOーー!!!」」」」
ヘルハウンド達が走りだしたのだった。
少しづつ…進む。
もうすぐ…スカッとくる展開がきますので、お待ちをっ!
WEB拍手&感想&評価ありがとうございます。
明日も投稿です。
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【ご連絡】
以下の作品連載再開しましたっ!
世界最強ものです。
※書きダメ投稿なので、こちらの作品 (生産職)には影響ありません。
『転生したら吸血鬼さんだった件~チートで世界最強です~』
※ページ下部にリンクがございます。
◇あらすじ
異世界に転生したら、吸血鬼の卵・・・「ヴァンパイアエッグ」。
しかも、美少女?いやいや、美少年?
ダンジョン内でわちゃわちゃ成長しつつ、吸血して魔物の能力奪い、LVアップ。
【称号】集めて進化!
引きこもりの大賢者(元勇者パーティー)とも遭遇し、俺はぶっちぎりで最強になる。
魔物図鑑のコンプリート、錬金術で武器・アイテム作成、ダンジョン飯。
ほのぼのダンジョンライフを満喫しつつ、七大ダンジョン制覇を目指す。
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サクサク読めるかと思いますので。
宜しければ、どうぞっ