表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/41

【パーティー:ティア】

ティア視点です。

■パーティー:ティア



ティアは、グラントとウィズと一緒にヘルハウンドを狩りに来た。

だが攻撃が通じず劣勢にたたされた。

ウィズが助けを呼びに行くために、場を離れた。


でも、助けは間に合わないと感じていた。


だからティアは魔物玉を使った。

魔物を引き寄せるアイテムだ。

グラントの方に投げて、自分だけ逃げようとしたのだ。


目論見どおり魔物がグラントに群がり、ティアは逃げる隙ができた。


でもその時。


「GUOOOOOOOOO!!!」


いきなり巨大なヘルハウンドが現れた。

他のヘルハウンドを噛み千切って倒していく。


そしてそのまま、巨大なヘルハウンドがティアに向かってきた。


(なっ、なにあれ…私も……やられる…)


と思った時。


「やめろ、その女は殺すなっ」


人の声が聞こえる。

それは知っている声だった。

ティアの知人。


ヘルハウンドの後ろから出てくる人物。


「はははっ、ティア、危うく死ぬところだったな」


魔物使いのギルデインだ。

年はティアより少し上で、毛皮をまとった男。

首には牙のようなネックレスをつけている。


彼はD級冒険者であるティアよりも、レベルの高い元B級冒険者。

ギルデインは、いくつもの魔物を操ることができる。

その証拠に、今も巨大なヘルハウンドを彼の周りにはべらしている。

彼が操っているのだ。


「な、なんで、あなたがここにいるのよ?」


「なんでって…お前を見にきたんだ。もうそろそろ金が集ったかと思ったからな。お前に死なれると、アイテムボックスの中の金を回収できなくなるだろ。登録者以外は、中からアイテムをとれないからなっ」


ニヤリと笑うギルデイン。


「………」


(こいつ、助けに来たわけじゃない)


ティアはギルデインの目的を察して逃げようとするが…


「GUOOOOO!」


ヘルハウンドが行く手をさえぎる。


「はははっ、ティア、逃げるなよっ!こっちにこい。追いかけっこは無しだ。怪我を負わせてもいいんだぞ。それに逃げたら、あそこで倒れているお前のパーティーメンバーを、こいつに食わせるぞ」


ギルデインは、グラントにヘルハウンドをけしかけようとする。

そうすれば、直ぐにでも彼は食べられるだろう。


一度はグラントをオトリにして逃げようと思ったティアだが…


ここでは見捨てられなかった。

無駄な犠牲は出したくなかった。


「…分かったわ」

「よろしい」


ティアはギルデインに従うのだった。




ティアは近くの洞窟に案内される。


そこには数十匹のヘルハウンドがいた。

ティアが逃げないように囲んでいる。

ギルデインが少しでも命令を出せば、すぐにティアは襲われるだろう。


「それでティア、金は集ったのか?1000万Gでお前の妹を助けたいんだろ。分かってると思うが、もう時間はないぞ」


そう。

ティアがお金を集めている理由は妹のためだった。

貴族に攫われた妹。

妹を助けるためには、1000万Gを集めて助けるしかなかったのだ。


妹を浚った貴族は強大で、強力な冒険者を囲っている。

ギルデインもその一人で、ティアのレベルでは手も足も出なかった。


そのためお金を集めて妹を取り戻すことにしていた。

1000万Gで妹を解放すると、貴族と約束していたのだ。


だからティアは危険な冒険者になったのだ。

それしかお金を稼ぐ方法がなかったから。


「ほぼ集ったわ」

「そうか。それじゃ、うちの公爵様も満足するだろ。妹も救えるかもな。はははっ、良かった良かった。これで問題なしだなっ」


「そうね」

「じゃあ、ティア。出せっ!」


(!?)


ギルデインがティアに手を向ける。


「何を?」


「何をって、金に決まってるだろ。今すぐ出せ。特別にここで俺が確認してやるよ。どうだ?優しいだろ。数えは間違いあるといけないだろ」


ティアはギルデインを見て思う。


(ここでギルにお金を渡しても、公爵に届くかは分からない)


(ギルに横取りされるかもしれない)


(いや、それしかないと思う)


「申し出ありがとう。でも、ちゃんとお金はあるわ。何度も数えたから。私が直接公爵様に渡すわ」


ティアが突っぱねるが…ギルデインは笑う。


「ティア…俺を信用しろよ。それに状況が分かってないんじゃないか。ヘルハウンド達に囲まれてるんだ。賢いティアなら分かるよな?これがどういう意味か、説明しなくても、分かるよな?」


ニタニタと笑いながら、ヘルハウンド達を撫でるギルデイン。


(……)


「よく分からないわ」

「本当か?」


「うん。わたし、全然分かんないよ」


「そうかそうか。『分かんない』か、はははっ、かわいいなー、ティアは。なら特別に俺が教えてやるよ」


大笑いするギルデイン。


「俺が一つでも命令を出せば、魔物たちがお前を食いちぎる。手足をちぎって、ポーションで回復させて、拷問して、無理やりアイテムを吐き出させてもいいんだぞ。そんなことを俺にさせたいのか?なぁ、ティアよ?」


(思ったとおり)


「やっぱり……私から奪うきね。公爵に渡す気なんてないんでしょ!」


「はははっ、当たりまえだろっ!誰が渡すかよっ!」


(こいつ……)


「それにティア、命を助けてやったろ。あのままだと、どうせ死んでた。救助代だ。全部置いてけっ!死んだら使えないだろ。俺が有効活用してやるっていってるんだよっ。はははっ!」


心底楽しそう笑うギルデイン。

笑いすぎて目から涙を出している。


「最低…騙したのねっ!」

「はははっ。お前も同じだろ。これまでパーティーの奴をだましてきたんだろ。いえた義理じゃねーだろ」


「この…」


「なに、また2,3年どこかのパーティーにでも潜って、金を集めれば良いだろ。ティア、お前、男を騙すのは得意だろ。見た目だけはいいからなっ。はははっ。美人は得だなっ!」


大笑いするギルデイン。

ティアは思う。


(この一年で、私だって腕を上げたはず。D級冒険者になったんだから。ならっ、今ならっ…)


バシュッ


笑うギルデインの隙を突き、腰のレイピアで攻撃するが…


「きゃっ!」


簡単に腕を取られる。


「あめーよ、俺は元B級冒険者、つまり上級。お前はやっとD級で中級冒険者。ランク差を考えろ。駆け出しの冒険者が、俺に勝てるわけねーだろっ!それに、お前が逆上して襲ってくることぐらい予想済みよ。はははっ」


楽しそうにティアの腕をひねり上げるギルデイン。


「ほらほらっ、この細い腕をへし折るぞ」

「い、痛いっ。離してっ!」


「そうか、そらよっ!」


ドスッとティアを投げ飛ばす。

地面に倒れているティアを見下ろすギルデイン。


「ティア、今すぐ金目のものは全て出せ。そうすれば、命だけは助かるかもしれないぞ。逃がしてやるよ」

「くっ……」


ティアはとっさに周りを見回して逃げる方法を探すが…

ヘルハウンド達が周りを囲んでいる。


(逃げる隙がない…)


「無駄無駄。大人しくしなっ、はははっ」

「…分かったわ……」


「そうかそうか、ティアがお利口さんでよかった。俺は良い子は好きだよ」

「私はあんたが嫌い」


「はははっ、そうか。で、わかってると思うが…ティア、ちょろまかすなよっ。1Gもなっ!」

「……」



その後。

ティアは唇を噛みながらも、アイテムボックスから金目のものを全て差し出した。





WEB拍手&感想&評価ありがとうございます。




明日も投稿です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
拍手ボタン設置中。なろうユーザーでなくても、一言感想を送ることができます。

 

こちらも連載中【毎週月曜:23時更新】↓【元月間異世界転生/転移:恋愛3位】
7人の聖女召喚~料理スキルLV80の俺は、おねえちゃんと世界最強になる

 

【1/17】連載再開です。世界最強ものです↓
転生したら吸血鬼さんだった件~チートで世界最強です~

 

【ざまぁ】【8/19 完結しました】↓
彼女が二股していたので、腰が砕ける程衝撃を受けた。

 

【ざまぁ】【8/4 完結しました】↓
ビューティフルざまぁ~公爵令嬢、悪役令嬢への道を歩む~
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ