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【パーティー:ウィズ】

1/14修正

ティアが絶望に震えている中。


一方ウィズは。


「な、なのですっ!」


魔法を撃ってティアとグラントを仲間を助けようとするが、動揺して上手く当たらない。

常時からウィズの魔法精度は低い。


彼女が得意なのは、大雑把な広範囲魔法。

圧倒的な魔力で場を制圧する魔法だった。

細かいコントールは苦手なのだ。


そして現状。

ヘルハウンドは動きが早く、グラントとティアの直ぐ傍にいるので広範囲魔法は使えない。

使えば2人を巻き込んでしまう可能性が高いからだ。


なので、得意ではない遠距離狙撃魔法を使っていたのだが…まったくあたらない。

動きの早いヘルハウンド達にかすりもしない。

今の状況は、ウィズにとって一番苦手なものだった。


(ま、まずいのです…)


ウィズも焦っていた。




ティアとウィズが絶望していると…グラントが叫ぶ。


「ウィズ、逃げろっ!その位置ならまだ逃げられる。助けを呼んできてくれっ!」


そう。

ウィズは魔法使い。

いつも魔物から一番遠い場所にいる。

そのため、今だってウィズの周りに魔物はいない。

グラントとティアは魔物に囲まれて動けないが、ウィズは助けを呼びにいける場所にいた。


「でも、わたしだけ逃げるのは…ダメなのです」


「大丈夫だ。ウィズっ!早く逃げろっ!助けを呼びにいってくれっ!それしかないっ!」


グラントが叫ぶ。

その声を聞いて、ウィズは瞬時に状況を判断する。


今の自分では力になれない。

なら、助けを呼びにいくしかない。

それが自分の出来ることだと。


短いながら、ウィズの冒険者としての経験がそう悟った。


「わ、分かったのですっ!」


だからウィズは走り出したのだ。




運動は苦手なウィズだが、近くを走り回って安全地帯まで逃げる。


(はぁーはぁーはぁー)


(ここまできたら、いいっ…ですね)


(では、やるのです)


ウィズは空に向かって魔法の杖を向け、救援シグナル魔法を撃つ。

空に大きな赤いマークが出現する。


これは冒険者同士で決められている魔法だ。

空に浮かぶ記号を広範囲から見ることが出来、これでピンチに落ちってることを周りに知らせる。

冒険者の義務ではないが、この魔法を見たら救助に駆けつけるのが慣習になっている。




数分後。

魔法に反応してか、他のパーティーがやってきた。

すぐさまウィズは自分の仲間が魔物に襲われていることを知らせた。




そして応援をつれてグラントとティアの元に戻ってきた時には…


「おいおい、どうなってるんだ、これは!」

「すげーあとだな。魔物の死体だらけ」

「かなりの数だ……」

「これ、あのやっかいなヘルハウンド達の死体だよな…」


救援メンバーの面々は驚く。

それもそのはず。


さっきまでグラントとティアが戦っていた場所には、いくつもの魔物の死体が転がっていた。

戦いの後だ。


ウィズは疑問に思う。


(おかしいですね……)


(2人が倒したのですか…あんなに苦戦していたはずなのですが…)


だがすぐにその疑問を追い払う。


(今は大事なことがあるのです)


(ティアとグラントを探すのです)


急いで仲間を探すと…



発見できたのはグラントだけだった。

魔物の死体の傍に彼が倒れていたのだ。


だが、ティアの姿はない。


ウィズはライフポーションを取り出してグラントに使う。

意識が回復するグラント。


ウィズは慌てて聞く。


「グラント、ティア、ティアはどうしたのですか?」

「ティ、ティアは……ティアは俺を…」


続きを話そうとして、一瞬言葉を呑むグラント。

何かをいいかけてやめる。


「どうしたのですか?ティアは、ティアはどうなったのですか?」


再度ウィズが聞くと…

グラントは少し間をとって、回りの状況を確認する。



(……)



それから再び口を開く。


「ティアは…連れ去られた……魔物に連れ去られた。あの数じゃ…助けようとしたけど…無理だった」

「そ、そんな……」


ウィズは、ぽとりとポーションの瓶を落としたのだった。


魔物に連れ去られる=死だと冒険者の間で認識されているからだ。

助かることがないわけではないが…確率は低い。


ウィズはティアの境遇を思い、絶望に震えたのだった。





それから。

ウィズとグラントは街に戻った。


グラントは怪我を癒すために宿で療養。

ウィズは魔物に連れ去られたティアを助けようと思ったが、自分一人ではどうにもならない。


救援に来たパーティーも、アイテムがつきかけていたので、魔物に連れ去られティアを助けに行くのは無理だった。

それに多くの魔物が死んでいる状況を見て、かなり強い魔物に連れ去られたことを直感的に悟ったのだ。

命の危険を冒してまで、生きているかどうかわからない他のパーティーのメンバーを助けにいくのは無理な話だった。




そこでウィズは、まずは冒険者ギルドに向かった。

ティアの救援を頼んだのだ。


しかし。


「聞いたよ、ヘルハウンドの死体がたくさんあったんだろ?」

「なのです」


「そりゃ、仲間が連れ去られて辛いだろうが、そのレベルの相手となると、並みの冒険者じゃ難しいだろう。安全に救うとなると、上級冒険者がいるな」


「ならっ、上級冒険者に依頼します」


「だが、そもそも上級冒険者は数が少ない。それにこの街を拠点にしている上級者は出払ってる。時間を待てば他の街から呼び寄せることも出来るが……」


「時間はないのです」


「だろうな。魔物に連れ去られたとなれば、2日かが限度だ。奴らは気が長くないからな」


「そうなのです」


「だが、一応救援の連絡はしておく。もしかしたら間に合うかもしれないし、それしか方法がないからな」


「お願いします」


ウィズは冒険者ギルドを出ようとすると。

後ろから声をかけられる。


「ウィズ、無茶するなよ」

「………」


ウィズは冒険者ギルドを出たのだった。




そして考える。

ティアを救う方法を。

街の最大戦力の一つである冒険者ギルドに断られれば、後は騎士団ぐらいしかない。


でも、騎士団は冒険者を助けるためには動かない。

騎士団の役割は、街の治安の維持と、国・地方の防衛活動。

魔物に襲われた冒険者を助けることは、業務に入っていない。


冒険者が魔物に襲われたら、冒険者同士で助け合う。

騎士団は関わらない。

これが慣習だ。



となると、冒険者の仲間。

ウィズにも知り合いはいるが、今必要なのはレベルの高い冒険者。

相手は、ウィズ、ティア、グラントの3人がかりで倒せなかった魔物を、やすやす倒していったものなのだ。

並みの冒険者では、逆に返り討ちになってしまう。


だがウィズには、今、この街に高レベルの知り合いがいなかった。


となると………


(………)


ウィズの脳裏に浮かんだのは。


(エクト……)


同じパーティーのエクトだった。

彼しかいないと思ったのだ。


客観的には、最底辺F級冒険者。

しかも生産職。

戦闘職ではない。


(でも、エクトなら…なんとかなるかもしれないのです)


ウィズには1つの確信があったのだ。

一緒に冒険して感じていたのだ。


他人(ひと)とは違う、エクトの片鱗を。

ありきたりな冒険者とは違う才気を。

隠そうとしても、隠し切れないエクトの才能を。


(やっぱり…エクトしかいないのです)



すぐさまウィズは、同じパーティーの仲間、エクトを探しに行くことにした。

今頼れるのは、ティアを助けられる可能性があるのは、エクトしかいないから。


それにウィズは、エクトがどこにいるか知っていた。

ティアとグラントには秘密にしていたが、ウィズは何度かエクトを探しにいき、大まかに彼がいそうな場所を絞っていたのだ。




そしてエクトが現在住んでいる場所。

貧民区の孤児院にたどり着いた。




ウィズは数日振りにエクトを発見し、叫んだ。


「エクト、探したのですっ!大変なのですっ!ティアが、ティアが大変なのです!魔物に殺されちゃうのです!」


必死に叫ぶウィズ。


ティアのことを好きなエクトなら、2つ返事で助けてくれるはず。

すぐに一緒にティアを助けにいってくれるはずだと思った。


だが…エクトからの返事はウィズの予想とは違った。



「知らん!勝手にしろっ!俺は孤児院の運営で忙しいっ!!!」



完全な拒絶だった。



ウィズは驚いた。


エクトとティアの間には何かあったと察していたが…


まさかエクトがこんなことをいうなんて…予想もしていなかったのだ。



WEB拍手&感想&評価ありがとうございます。


再び視点は主人公、エクトに戻ります。

夜にもう一話投稿です。

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