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【パーティー:ティア2】

■パーティー:ティア



数日後。

パーティーにエクトが戻ってくることはなかった。


だが3人はエクトを探しにいくことはしなかったし、連れ戻しにいくこともなかった。


グラントはエクトが戻ってこない理由を知っているから、自分から探しにいくことはない。

エクトにも心の整理をつける時間が必要だと思ったのだ。

パーティーを抜けるにしろ、戻るにしろ、最後には自分でどうするか決めるだろうと考えていた。


事情を知らないウィズはエクトを探しに行こうとしたが、ティアに止められた。

エクトと一番仲が良いのはティアだ。

その彼女に「エクトのために少し時間を待とう」といわれると、強く反対できなかったのだ。

ウィズはエクトのことも、ティアのことも信じていたのだ。




そしてある日。

冒険者ギルドから受注したクエストの期限が迫っていることもあり、3人でクエストに行くことになった。

エクトが作ったポーションの予備があったので、なんとかなるだろうと思ったのだ。


クエストは「ヘルハウンド」を狩ること。


ヘルハウンドは自分達よりレベルの高い魔物だ。

若いパーティーが挑むべき相手ではない。


体長は3mほどあり、炎属性の黒い獣。

名前の由来は『地獄の犬』。

見た目は大きな黒い犬。

だが普通の犬と違い、口から炎を吐き、俊敏に動きまわり、その上皮膚も固い。

やっかいな相手だ。


だが、これまでティア達は何度かヘルハウンドを狩ってきた。

エクトがつくったポーションを利用して倒してきたのだ。


いくら相手のレベルが高くても、弱点さえつけば倒せる。

経験による自信が3人にはあった。

それにヘルハウンドは報酬が良い。

今更わざわざ弱い敵を倒して、少ない報酬を得るつもりはなかったのである。


そのため、今回も大丈夫だろうと楽観視していた。




3人で森に入ると…ヘルハウンドの群れと遭遇する。

どの個体もそこそこ大きい。

気配から、明らかに自分達よりレベルが高いことが伺える。


だが、これまでの経験から3人は焦ることはない。

いつもの戦闘だと思ったのだ。


「いくよっ、グラント」

「俺が倒す。ウィズは後ろに。近距離だと危険だからっ、囲まれるなよ」


「まかせるのです。援護するのです」


ウィズは魔法使い。

接近戦では役に立てないため後ろで援護だ。


前に出たグラントとティアは、すぐさまポーションを使い、相手の弱点属性、「水」属性を武器に付与する。


2人の剣が青色に光り輝きだし、水気を帯びる。

精霊の加護が与えられ、「水」属性が付与される。


「わたしは右、グラントは左ね」

「任せろ。俺が両方でもいい」



2人は自信満々に魔物の群れを相手にするが……戦闘はいつも通りではなかった。



バシュッ バシュッ


グラントとティアが青く輝く剣でヘルハウンドを攻撃するが…


「どうなってるんだ?属性攻撃が効かないぞっ!」

「なんで?…どうして?なんでよっ?」


バシュッ バシュッ


「ダメだ…まったく攻撃が通らない」

「えいっ!…だ、だめ…こっちも…」


そう。

ダメージの通りが異常に悪いのだ。

グランドとティアの攻撃が上手く通らないのだ。


そのことにグラントとティアは驚くのだった。


いつものようにエクトが作ったポーションを使用し、魔物の弱点属性の攻撃しているのに…

いつものはこの方法で倒せているのに…

3回程斬れば倒せているのに…


まったく倒せない。

相手はピンピンしている。


「なっ、なんで、なんで攻撃が効かないのよっ!」


叫ぶティア。

焦りのためか、手に握る剣も震える。


一方グランドは、歯軋りをしながらも、周りの状況を見て提案する。


「ティア、2人で1匹を狙うぞっ!1体1体倒すっ!」

「う、うんっ」


ティアとグラントが集中的に一匹を狙う。

1人で倒せないなら、2人で協力して一匹づつ倒そうと思ったのだ。

そうすれば魔物の隙をつくこともでき、弱点に攻撃を当てられる。


弱点属性にプラスして、弱点部位を狙うのだ。


「そらっ!」

「えいっ!」


バシュッ バシュッ


ヘルハウンドに、2人で何度も剣撃を加えるが…


「ど、どうして?…全然効いて…ない…全然ダメだよ…」

「どうなってる?こいつら、前までは3回切りつければ倒せていただろっ!」


2人は今までとの違いに戸惑っていた。

エクトがいる時との違いに。


今までなら、既に何匹も倒せていたのに。

魔物の死体の山をきづいているはずなのに。

まだ一匹も倒せていないのだ。


相手は出会った当時と変わらない。

逆にこっちは荒い息をついている。

明らかに劣勢にたっていた。


「どうなってるんだよ…」

「なんでよ…なんで…なんでよ……あと、たった1つなのにっ!」


ティアは歯軋りをしながら、2人はじりじりと後退し始めた。



~~~~~~~


だが、その理由は簡単であった。

訳は2人が使用している属性ポーションにあった。


実は、エクトは魔物ごとに属性ポーションを調整していたのだ。

事前に大まかに属性ポーションをつくっておく。

で、実際の戦闘になると、相手の魔物の群れ、もしくは魔物一体ごとにポーションを調整していたのだ。


属性持ちの魔物だといっても、個体差はあるのだ。

個体ごとに最適の配合割合が有る。

そのため魔物一体ごとに調整していけば、属性付与による最大効果を得られる。


通常の属性ポーションを使用して、弱点属性を攻撃した場合が1ダメージだとすると。

個体に最適化された属性ポーションを使用して、弱点属性を攻撃した場合は10ダメージを与えられることもある。


それぐらい調整というのは効果に影響を与えるのだ。

10倍ほどの差が容易にでる。


つまりエクトがいない今。

未調整の属性ポーションを使用しているティアとグラントの戦力は。いつもの1/10になっていたのだ。


これでは勝てはずもない。


だが、この事はエクト以外知らない。

エクトは誰にも言っていなかったのだ。


~~~~~~~



(な、なんでよ…どうしてよ…なんで、なんで倒れないのよっ!?)


ティアは震える。

魔物の群れに劣勢になっているのだ。

地力では圧倒的に強い相手に数で負けている。


こちらの攻撃がまったく通らないのだ。

これまでは倒せた相手が倒せない。

理解不能なことがおきており、生命の危機が迫っている。


このことに混乱する。


(弱点属性をついているのに…なんで!?なんで倒れないのよっ!?)


同じ疑問が頭の中に何度も浮かび上がる。

そして、同時に思う。


(くっ、焦るんじゃなかった…もっと安全なクエストを選べばよかった…)


(あと1つだったのに……たった…あと1つだったのに)


(それにもし…今エクトがいれば……なんとかなったかもしれないのに…)


ティアは原因がエクト、具体的にはポーションにあることを察していた。

それしか思いつかなかったのだ。


いつもとの違いは、エクトがいるかいないかの差でしかないのだから。



だが、ティアはポーションに詳しくない。

アイテムを使用するのが専門なのだ。

アイテムの効果が不調でも、原因など分かりはしない。


(エクト……なんで…こんな時にいないのよ……)


ティアはこの時初めて、自分の選択を後悔するのだった。

エクトの存在のありがたみを感じたのだった。



だが…


「GUOOOOOONNNNNNN!!!」


ヘルハウンド達が叫びだした。

同時に何匹もヘルハウンドが現れる。

それに他の魔物まで加わる。


「おいっ!数が増えたぞっ!ヤバイ、ティアっ!ぼけっとするな、囲まれるぞっ!止まるなっ!」

「た、大変なのですっ!」


焦るメンバー。


ティアはその声で気づく。

気づけば、自分だけ大量の魔物に囲まれていた。

気を抜いた隙に、グラントと離されていたのだ。


そして気づく。


(しまった。忘れてた…ヘルハウンドの特長だ……)


ヘルハウンドは一体一体の強さもさることながら、仲間を呼ぶのがやっかいなのだ。

出会い頭に倒せればいいが、倒すのに時間がかかるとドンドン仲間を増やしていく。

そして、複数で一人を囲んで襲うのが特徴だった。


ヘルハウンド達の獲物にティアが選ばれたのだ。


これまで数秒で倒せていたヘルハウンド。

そのためこの咆哮を聞くことがなかったので忘れていたのだ。


(まずい…今でも劣勢なのに……このまま数が増えれば…死ぬ)


ヘルハウンドに囲まれたティアは絶望に震える。


脳裏にはこの後の光景が浮かぶ。

魔物に殺され、魔物になぶられる未来の姿が。

肉片になる姿が。


(ど、どうしよう…このままじゃやられる…助からない…)


ティアに、エクトを裏切ったつけが回ってきたのだ。



WEB拍手&感想&評価ありがとうございます。


次話は、視点変更して、ウィズになります。

時系列は、この話の続きになります。


お昼頃投稿です。


又、1話の前に『世界観・人物説明【随時更新】」を追加しました。

後書きなどに書いたものを含め、世界観、裏設定的なものをまとめています。

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