愛の数式
カカオ100%の青春……
20xx年、日本では全国民の個人情報が首都東京に集約され管理されていた。これは、その神のような管理プログラムと、それを守るセキュリティシステムを開発した天才高校生のモノクロな青春を描くものである。
チャイムが授業の終わりを告げ、騒ぎ出す周りをよそに、彼はノート代わりのA3のスケッチブックに書き殴る。
「おい! 授業終わったぞ、次は体育だから、さすがに動かないとやばいんじゃないか? 」
クラスメイトの春日野の言葉に全く反応することなく、彼はただ書き続ける。
数分後、彼はキチガイのように飛び上がった。
「わかったぁぁああああ!! 」
「何がだ? 」
驚きを通り越し呆れていつものことのように腰に手をおく春日野。
「愛の数式だよ! 愛の数式! わかったんだ、ようやく僕は愛の全てを理解しこの2年半にも及んで繰り広げられた僕の脳内での現象は終焉をむかえるんだよ! この息苦しさからも解放だ! わーい! わーい! 」
なおもキチガイのように踊り狂う。
「おい、少し落ち着け。喜んでいるところ悪いが少し式を見せてはくれないか? 」
「見たいのかい? そうか見たいのかい! いいとも見せてあげよう。これが僕がここ3カ月間考え続けて導き出した愛の形だ! 」
彼は自慢げにそのスケッチブックを突き出した。
「ほほう、これはえらくややこしい式を立てたもんだな。変数が多くて一見するだけでは到底理解しかねるな」
「そりゃそうさ! 綺麗な式にならないものなんだ! 愛というのは。この前読んだ小説にも書いてあった『愛は醜く汚い』とね」
「んー……1人の意見者としていってやろう……愛はもっと簡単で美しいと思うぞ……ところで時間大丈夫なのか? 」
はっと気付いたように眉毛を吊り上げる。
「今何分だ! 」
「11時8分だ」
「いつから始まる? 」
「10分からだ」
「科目はなんだ! 」
「体育だ」
「……聞いてないよぉ〜!! 」
「聞いてなかったな」
「言ってくれよ!! 」
「言ったとも」
「そうか、じぁいい………いやよくない!」
慌てふためき、全速力で更衣室へ走って行
く。
「面白い言い訳期待してるぞっ」
大笑いしながら春日野は体育の授業へ向かった。
続きも読んでいただけると光栄です。