短詩〔陽炎の歌〕〔時の自室〕
〔陽炎の歌〕
夏は来る
待たずとも来る
自由に来る
私は逃げない
暑い夏
長い夏
そしてそれは
悪い夏
それでも私は逃げない
決して逃げない
陽炎が揺れて笑う
汗は止まらない
こんな夏だけど
私は前を向く
冬のように居たいけど
それでも空をみる
あんな大きな雲が
流されている
それでもそこにある
ちゃんとある
夏を生きる人よ
汗を流す人よ
涙すらこぼれるだろう
崩れ落ちることだろう
そんなひととき
ふと空へ口ずさむ
揺れて乱れるも
強き陽炎の歌
私達はここにいる
〔時の自室〕
朝になる
私は朝を見る
似た景色を見る
この自室で
昼になる
私は昼を見る
変わらない景色を
この自室で
夕暮れて
微かに浮かぶ
思い出に
手を伸ばせばそっと
消えていく
夜になる
私は夜を見る
見飽きた景色の
この自室で
景色は変わらない
思い出は戻らない
ただ暦が変わる
それだけだ
それだけでいいのか
それだけでいいのだ
変わらなくていいのか
変わらなくていいのだ
そんな当たり前を
ふと振り替えれば
思い出す
同じ時など一つもない
朝になる
私は朝を見る
変わらない
いつもと違う自室で