第8話
夏音は一人ディスカウントストアにきていた。
話せば長くなるのだが…
起きてから夢落ち!?と思い飛び起きたが丸まったシートとポケットに入った銀貨3枚が異世界に行った確かな証拠として残っていた。
それから説明書を見ながら寝ていたことを思い出す。
「よーっし!そこまで厚くないし読み返そう。」
寝起きにも関わらず目と頭はさえている。
それは異世界に行ったことによる興奮からなのかニートをしていた時の腐りきった生活に劇的な変化があったからなのか…
2つとも当たってはいるが答えは『この腐った世界から抜け出せるという喜びで』だ。
両親に申し訳なくて死ぬことも出来ずにニートをしながら世界と自分に絶望をしていたのに思わぬ形で抜け出せた。
これは夏音にとって真っ暗な部屋に光がさしこんできたようなものだった。
家においてあった菓子パンを口にくわえながら説明書に目を通していく。
命に関わる可能性もある。読んだページも見落としがないか何度も読み返し確認した。
読み終えてわかったのは
『向こうの世界で老衰や事故など何らかの理由で死んだら地球の自分も死んでしまう。』
(予想していた通りだな…)
『門を一緒に潜ればものも行き来させられる。』
(これは触れていれば何でも持ち込めるし持って帰れるってことらしい。勿論、生き物も含む。)
『異世界でも子孫を残すことができる』
(これは非リア充ニートにはハードルが高すぎる。)
『異世界にいる間は地球の体の老化が止まる。』
(気づいたら浦島太郎みたいなことにもなりかねないな。まぁ知り合いなんて殆どいないし大丈夫か。)
『魔力が高くなればなるほど種族関係なしに寿命が長くなる。』
(これは地球と異世界の寿命の差がでるため色々と考えなければいけないな…)
っと重要なのはこの位か…
最後のに関しては地球での活動時間を少なくすれば不老不死に近いような現象がおこるな…
魔人の寿命がどれぐらいかわからないからなんとも言えないが…
色々とやりたいことはあるが取り合えず薬と非常食ぐらいは持ち込んでおくか。
かいつまんで話せばこんな感じで今にいたるわけで…。
「まずは薬を選ぶか…解熱剤と…包帯と…絆創膏に傷パッド…異世界料理は食べたことないがお腹を下した時のために下痢止めなんかも欲しいな…」
栄養ドリンクもあっていいかも…
夏音はカゴにどんどん薬の山を作っていく。
ディスカウントストアで薬が買えるなんて便利な時代になったなぁ。
次に非常食だ。
缶詰と…カップラーメンにお!このからしマヨのうまい焼そばもっと…
他に何か買うもの…
宿は蝋燭を灯りにしていたがもっと明るくしたいなぁ。
うん。電池式のキャンプで使うようなライトと電池をまとめて買っておこう。
それに冒険中は風呂にも入れないだろう。汗ふきシートとシャンプーそれにコンディショナーもあれば便利か?
あ、持ち運ぶために大きなリュックも欲しいな。
魔法のある世界だしよく小説とかで見かけるいくら詰めても重さの変わらない道具袋とかないかな…
これだけあれば大丈夫かな?
そんな感じでどんどんカゴに放りこむ。
気づけば買い物カートを押しながらカゴが3つになりお会計が10万近くになっていた。
送り迎えをさせられるために取らされた(自腹で)免許がこんな時に役にたったな…
今までの夏音では考えられないが少しだけ免許を取らされたことを感謝できていた。
叔父の家にいた時を思い出せば恨みはつのるが感謝することになるなど思ってもいなかった夏音は少し可笑しくなった。
家に帰ると昼の12時になろうとしていた。
「家に篭ってた時は時間が長く感じたけど外に出るだけで時間が早く感じるな…」
そんなことを呟きながらポットのお湯を買ってきたカップラーメンに注ぐ。
食べ終わるとリュックに買ってきた荷物を詰め込む。
「買いすぎたな…」
リュックには半分くらいしか入らなかったので入らなかった荷物を袋に戻してそれを手に持って門を潜ろうとしたが。
「重い!重すぎる!」
荷物は見るからに細い夏音には重すぎた。
これは向こうについたらまずは道具袋を探そう…
荷物を引き摺るようにして門をくぐった夏音は3メートルほどなのに汗だくになるのだった。
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