第4話
歩き出したのは良いが自分がどこに向かい何をするかを全く決めていないことに気づく。
取り合えずメニューからマップを開いた。
マップは森や街を簡単な絵(規模によって絵は違う)で大雑把に記してあるもので見ると自分の表示が赤く点滅している。
こんな簡易マップじゃダンジョンや迷宮などでは使えなさそうだしマッピングが必要だな…
一番近そうな街はっと…
距離感は定かではないがマップの間隔的にこの先の森を抜けて2時間ほど歩けばこの辺りではかなり大きな街に着きそうだ。
「これからのことはまずは街に入ってからゆっくり考えるか…」
夏音は小さく呟くと歩を進めた。
30分ほど歩くと砂利道が終わり目の前には薄暗い森が広がっていた。
これをつっきるのか…
ニート生活を送っていた夏音だ。当たり前だが森を歩くなんてしたことがない。
だからこそ躊躇せずに森に足を踏み入れた。
夏音が躊躇もせずに森に入れた理由はこう考えたからだ。
『もう人間じゃないし魔人なんだから森なんて余裕じゃね?』
そんなことを考えていた時期が僕にもありました。
15分も森を歩くと自分の判断を後悔することになる。
方向を間違えないためにただでさえ薄暗いのにマップを見ながら移動するため樹の根には足をとられ転んだり枝にTシャツを引っ掻けてしまい破れたり…。
僅か15分でこんなにボロボロになるのかというくらいボロボロになっていた。
大自然こぇぇぇぇえええ
『自然界 なめる 駄目 絶対』
すっかり自然界に調教されたカノンであった。
大自然の洗礼を受けつつもしばらく歩くと小川を見つけ少し休憩を挟むことにする。
「日没までには着きたいが…時間の間隔が全くわからない…」
携帯の電源がきれていてこちらに来てからどれくらいたったのかはわからないが少なくとも4時間は経過している。
どうやらここに来たとき地球の時間は3時くらいだったので結構な時差があるようだ。
ガサ…ガサガサッ
そんなことを考えていると後ろの草むらがガサガサと揺れた。
カノンはここが魔物もいる異世界だと思いだし臨戦態勢をとる。
臨戦態勢といってもカノン自体は格闘技経験もなければ喧嘩すらしたことがないので距離をとりテレビで見たボクシングの構えをとっただけだ。
草むらから出てきたのは30センチほどのオレンジ色をしたスライムだった。
魔物…なんだよな?
なんか妙な魅力がある可愛いやつだ!
鑑定をすると
ベビーゼリー(黄) lv1 種族:魔物HP:15 MP8
固有スキル:無し
属性適性:土
備考:斬撃耐性 打撃耐性
斬撃と打撃の耐性があるが動きが見るからに遅い。
ここで遭遇したのも何かの縁だ。
貴様には実験体になってもらおうか!ははははは!!
どこぞのお代官様のような悪い笑みを浮かべカノンはベビーゼリーに蹴りを叩き込む。
ベビーゼリーはサッカーボールのように飛んでいき後ろの木に叩きつけられたがまだ動いてる…ってことはまだ倒せてないんだよな。
鑑定眼をもう一度使いゼリーのHPを確認するがHPは10と表示されている。
打撃耐性があるせいかダメージが少ない気がする。さすがに一撃じゃ倒れないか…
もう一度蹴ろうとするがベビーゼリーの下に魔方陣が展開される。
魔方陣の上にあった小石がだんだん浮かびはじめる。
カノンは反射的にその場から右に飛び退くと浮かび上がった石がさっきまでいた場所に飛んでいった。
すげー!今の魔法か!?どうやったんだ!?
あんな小石じゃ痛い程度だろうが威力なんて関係ない。
カノンは初めて見る魔法に興奮していた。
俺もあんなの出来るのか!?
っと今はそれどころじゃない。
目の前のベビーゼリーに集中するとベビーゼリーの前まで駆け出し蹴りあげる。
地球とは違い体が軽い。
木にぶつかり跳ね返ってきたところを間髪を入れずにとどめをさした。
今度こそHPは0になりベビーゼリーは動かなくなった。
ゲームや小説だとここで倒した敵からドロップアイテムを採ったり討伐証明部位を剥いだりするんだよな。
ま、手ぶらだし何をとればいいのかもわからんから今はしないがこれからすることになるんだろうな…
物思いにふけるのは街に着いたらにして先を急ごう。
ベビーゼリーと戦ってる間に方角がわからなくなったのでマップを確認した。
それから1時間くらい歩きマップの間隔が予想通りならばもうすぐ森を抜ける。
1時間の間にベビーゼリーの色違いやゴブリンなどを遭遇しただけ倒し続けた。
ベビーゼリー(赤)は火を使うのが想像できたしベビーゼリー(緑)は毒を使うのが鑑定眼でわかっていたのでひたすら蹴りを食らわせて反撃の隙を与えなかった。
ゴブリン(lv5)は太めの木のこん棒で襲いかかってきたが逆にこん棒を俺に奪われ逃げようとしたが逃がしてあげるわけもなくレベルはゴブリンのほうが格上だが頭にこん棒を思いっきり振り下ろすと一撃で倒すことができた。
魔物を倒していて気づいたのだがグロテスクなものを見てしまうこともあったが命のやり取りはこういうことで自分もこうなるかもしれないのだから殺るしかないと不思議と理解できたため落ち着いていた自分に気づく。
これは種族が魔人だからなのかこの世界にきた俺への特典なのか…
なんにしろこのグロ耐性は元々自分に備わってなかったので助かった。
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