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ワールドゲート  作者: MA
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第1話


暗い部屋でひたすらパソコンに向かっている男がいた。


見た感じは20代前半くらいであろうか黒い髪は長年切っていないのかのびっぱなしでボサボサだ。


髭もいつからそっていないのかこちらものびっぱなしでボサボサ…

きっと昔は整っていたであろう顔も髪と髭のせいで清潔感もなく目はパソコンを見続けているからか真っ赤に充血していた。



彼の名前は龍崎夏音(りゅうざきかのん)



大企業の跡取り息子として産まれるが両親共に他界。


事故として処理されているが金に目の眩んだ親戚達の仕業であることを夏音は知っていた。


両親が他界した時はまだ中学生だった夏音は多額の保険金は貰えたものの会社を継ぐことは出来ずに親戚のおじさんがその会社を継いだ。


勿論それについて抗議はしたものの歪んだ笑みでこう言われた。



「生意気に中学生が何を言ってやがる!保険金はくれてやるから黙ってな!それとお前は成人するまで俺が引き取ってやる。学費と食費、その他諸々は自分の金で出せ!成人したら出てってもらうからな!」



これが中学生に向かって言う言葉か?腐ってやがる!




ケースは違えどこんなことは世界中で今もどこかで多々あることだろう。だからこそ夏音はこの世界に絶望を感じたのだ。


それからは高校にも進学せず起きたらネットやゲーム、本を読むの無限ループで二十歳まで過ごしてきた。


唯一救われたのは月々20万円ほどお金を搾取されたがそれ以外は干渉されなかったことだ。


3食のご飯はなかったもののキッチンを片付けておけば料理もできたし風呂やトイレ電気なども使えた。


普通は当たり前に出来ることだが最初はそれも文句を言われて月々の20万円で使用許可が出たのだ。

これがどれだけ理不尽でおかしなことかわかるだろう。


成人をすると言葉通りに家を追い出され今は一人暮らしをしながら保険金を食い潰してネトゲ廃人だ。食い潰すと言ってもあと一生を3周できるくらいに金があるので食い潰しとは言わないのか?

この場合は浪費なのかな。



ネトゲではサーバートップに君臨するがそれはあまりにあまった時間を浪費するためにやっていた結果でなろうとしてなったわけではない。


そんな夏音に残っているのは未だに残っている多額の保険金と暇潰しに読んでいた本で培った大量の知識…だけであった。


口を開ければ出てくるのは腐ってやがる…


夏音は両親を亡くして8年もの間この世界に絶望して生活していた。


それは本当に生きていると言えるのか…こんな今の現状を両親に申し訳ないとは思うしそれが枷と言っていいのかはわからないが自殺も出来ない。


そんな生きた屍は信用できる人間も自分が何をすればいいのかもわからないでいた。



そんな夏音は今日もネトゲに明け暮れる。


既にレベルはカンストしてやることもないのだがオークションを見たり無駄に金策をしてみたり…



「このネトゲも潮時だな…」


夏音はこの8年で幾つものネトゲをカンストしもうこれ以上ないほどにやりつくして辞めてを繰り返していた。


「新しいネトゲでも探すか…」


だが8年で自分の興味をひいたネトゲは全てやりつくした。


かといって自分の興味がないネトゲをやっても…

ネットサーフィンをしながらため息をついた。


そんな時に『異世界ゲートキット』なるものを目にする。


馬鹿馬鹿しいと思いつつもそれをクリックしてみる。


詳細を見ると『貴女が作る異世界物語!勇者になるも魔王になるのも農民になるのも自由自在!家に置くだけでそれが異世界と地球を繋ぐ架け橋に!』などと書かれている。


価格…


えぇぇぇええ!?


思わず大きな声が出る。

久しぶりに出した大きな声で咳き込むが手探りでペットボトルを探すとお茶を流し込んだ。



お値段びっくり100万円。


馬鹿か!こんなもん誰が買うんだよ!しかもどう見てもそのホームページは素人が作ったようなショボいものでカウンターを見ると来訪者は1人。


1人って…それって多分いや確実に自分なわけで…


はいはいワロスワロス。


こんなもん買う奴がいたら顔が見てみたいわ…


しかし、それは近いうちに見ることになる。


1週間後、部屋に宅急便で2メートルはありそうな段ボールが届いた。



「やってしまった…」


自分でもわかっているくらいこの世界に絶望しているのは知っている。だがこれはあまりにも馬鹿馬鹿しすぎる。


それでも夏音は段ボールのテープを剥がした。


中には1枚の黒いシートとキーボード、それと簡易な説明書が同封されていた。


説明書を読むとシートを壁に設置することで起動するらしい。


電源などは見た所ないにも関わらず起動する?


とんでもない無駄金を使ってしまった…


夏音は説明書を放り投げてベッドに体をあずけた。


目が覚めると少し冷静になったのかクーリングオフという機能を思い付いた。


クーリングオフを考えた奴は天才だ!


そんなことを考えながら段ボールの伝票を見るが相手先の住所が載っていない。


それどころか名前すらないのだ。

急いで念のためお気に入りに登録したホームページを開くがそこには知らないホームページが表示される。


やられた!なんだこれは!


狐につままれたような夏音の顔は真っ青になり右手はプルプルと震えていた。


これは警察に行かなければ!あとは消費者庁だな!


そうと決まれば早かった。


長年はえていた髭を剃り髪をゴムで結わえて家を出る。


しかし、警察も消費者庁も行ったは良いものの全く取り合ってもらえず狂人でも見るような顔をされた。


取り合えず住所と名前、連絡先を書いておいたがこれは無駄になるだろうな…


家に帰ると開けっ放しの段ボールと黒いシート、放り投げたままの説明書がそこにはあった。


気が振れたのかおもむろにシートを壁に張り付ける。


こんな子供でも騙されないような商品買って実際に使って何も起こらないだろうその状態を自分自身で笑うためだった。


信用すらしてくれないで笑いもしてくれない!


自分で笑わなきゃ誰が笑ってくれるってんだ!


そんな考えで張ったのだが考えたことを裏切る現象が起こる。


シートがパソコンを起動した時のデスクトップような明るい黒になったのだ。


それをぽかんと見つめる夏音の目に文字がはっきりと現れた。




『異世界転移門を開門しますか?』



それは夏音の求めた腐った世界からの脱出へと続く道であった。

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