衣替え
「いよいよ夏服かー」
高校2年生の双子の姉に当たる井野嶽桜が、双子の弟になる幌に制服を見せびらかしながら言った。
「いいんじゃない。こっちだって6月1日から衣替えだし」
「でも、全員が夏服に一気に変わるってことじゃないでしょ」
「まあね。ブレザー無しの冬服と夏服のダブってる期間に入るってだけだからな。まあ、7月までには全員が夏服になってるさ」
幌が今のテーブルの上に教科書を広げながら言った。
どうやら、こんどの小テストの勉強をしているらしい。
「そういえば、衣替えって、なんでこんな6月にやるんだろ」
「平安時代に、旧暦の4月1日に更衣するということが規則としてできたそうなんだ。これがきっかけ。それから明治時代に新暦の6月1日に夏服に替えるという話が新政府によって決定されたんだ。そこから、6月1日に衣替えをするという話になったそうだよ。あ、南西諸島はそれよりも1月早く衣替えをするそうだけどね」
「そうなんだー」
服を体に合わせながら、桜は幌に見せびらかす。
「似合ってるかな」
「似合ってるんじゃないか」
適当な幌の返事に、むうと少し不機嫌そうになっている桜だったが、何も言わずに、制服をしまうために、自室へと戻った。