第一話:本の中?
星の瞬くその町にひときわ目立つ怒り声は、町の一角にあるさびついた赤い屋根の家に住んでいる、マルク家の父親トンスの声です。
「どうしておまえは、ちゃんと学校にいかないんだ。町の子はみんな行っているのに。」
町の人々は、いつものことだとおもい、騒ぐこともありませんでした。
「父さんには僕の気持ちなんてわからないよ。わかろうともしないくせに。」
トンスの息子ミックは、泣きながら怒りました。ミックは、町の子供たちからいじめられていました。
ミックは、自分の部屋へ戻りベッドの上においてあった本を取りました。
本の題名は、「マシュマロ星人ポーの冒険」。
ミックはこの本が大好きで、とくに主人公ポーが愉快な仲間たちとたのしそうに冒険しているところに、自分もいつかその仲間になりたいと夢を抱いていました。ミックは本を抱きしめました。
「僕にはポーがいればいいんだもん。だって、みんな僕のこといじめるんだ。」
その時ドアから母親マリアが入ってきてミックをやさしくだきしめました。
「無理して学校にいかなくてもいいのよ。ただ父さんは、あなたを心配して言っていることを忘れないで。おやすみ。」
マリアは、ミックに優しくキスをするとニコっと笑顔を見せて部屋を出て行った。
ミックが眠りにつき時計の針が真夜中の十二時を指した頃、突風が吹きミックの部屋の窓がガバっとあきました。部屋は星の光が眩いばかりに照らしベッドの上の本が風でピラピラと音をたてていました。すると、
「ポー?」
本の中からなにやら白い生き物がでてきました。
「ポゥポポ」
寝ているミックに気が付くと気に入ったのか生き物は、ミックを担いで本の中へスーっとはいっていきました。
起きたミックが見た風景は、虹色のふかふかベッドに色鮮やかな形の変な料理、そして笑顔で見つめている白い生き物でした。どうやらここは、生き物の家のようである。
「君は、もしかしてマシュマロ人のポー?」
ミックは、驚きの気持ちを抑えました。
「ポポ」ポーは、うなずくと喜びのあまりミックに抱きつきました。するとミックは、あまりのできごとに失神してしまいました。「ポポ?」硬直したミックに気付いたポーは、心配になったのかミックを担いで外にでました。
外の世界は、なんとも不思議な光景でした。
空の半分は、夜の月と星がみえていてあとの半分は、サンサンと輝く太陽と雲ひとつない青空がみえました。ポーの家は、どうやら町の中にあるらしく他の家も色とりどりの形です。中には、透明で、ひょうたんの形、家具まで透明なので中がまる見えです。町の住人まで色とりどりでいろんな顔の形をしています。
ポーは、三角つぼの形の家にはいっていきました。看板には、絵が書いてありどうやらここは、病院のようです。病院の中には、ぶきみな眼鏡と長く伸びた白い口ひげのはえた老人が立っていました。
「ポーじゃねえか。どうしたんだ血相変えて。どうやらなにか担いでいるみたいだが?病人ならみせてみろ。」
老人は、この町にはめずらしく人間で、どうやら医者のようです。ポーは、病院の中のベッドにミックを寝かせました。ミックはまだ失神したままです。
「おいポー、この子は、人間の子じゃないかどうしてここに?」
医者は、ミックの容態をみながらポーに聞きました。
「ポ・ポ・ポ・ポー」
ポーは、うれしそうに答えました。
「なにー気に入ったからつれてきたー。」
医者がびっくりして大声をあげるとその声でミックは、目をさました。
「起こしてしまったな、すまんすまん。私は、この町の医者ポッツじゃ。よろしくな。失神したばかりじゃからまだ横になっとれ。」
ポッツは、あやまりながらやさしく笑った。ミックは、何か言いたそうにしていると、「ここは、絵本のなかじゃよ。君がここに来たのはポーが気に入って君をここにつれてきてしまったからじゃ。この町は、スゥイーツポップという町で人間は、わし一人じゃ。これで、満足かな。」
ポッツは、ミックの考えていたことを全部といってくれた。
「ん?今度は、なんでわかるんだとおもったじゃろ?わかるんじゃよ。昔、わしがここにきたときも、そうおもったからの。」
ポッツは、満足そうにニヤっと笑った。ポーも、わかっているのかわからないが笑っていた。
ミックは、なんだかわけわからず考え込んでいた。
すると、病院の入り口からいろんな生物たちが、がやがやと話しながらきた。
「新入りがきたって言うからよみんなつれて見に着たただよ。」
マーブルキャンディ人がわくわく顔をうかべていた。
「この子は、まだ病人じゃ。そっとしといてやれ」
ポッツは怒りました。
ポーは、ミックを心配そうに抱き起こして頭をなでていた。
「ぼくは、もう大丈夫です。ポーも大丈夫だから心配しないで。」
ミックは、やっと心の整理ができたのか、なでていたポーの手を止めました。ポーは、まだ心配そうなまなざしで見つめていました。
「大丈夫だから。」
ミックのその言葉にポーもポッツも安心しました。
「大丈夫そうだな。それなら今日は、歓迎会だ!言いわすれたけど俺の名前は、スカッチ、お前の名前は?」
スカッチは、マーブルでかわいい格好をしているのにワイルドだった。
「ぼくはミックです。歓迎会ってぼくの?」ミックは、不思議な気持ちになった。
「当たり前だろ他に誰もいないんだから。新しい友達ができれば歓迎するのがあたりまえだ。」
スカッチは、ミックの質問が変に思ったのか笑い出した。
「お前、おもしろいやつだな気に入ったよ。じゃあおれは、歓迎会の準備をするからいくぞ、またあとで迎えにくるからよ」
スカッチは、口笛をふきながら町の人を手招きして病院をでていった。
「そう不思議な顔をしなさんな。スカッチも町の住人も誰か繰れば必ず受け入れてくれる。ここは、そういう町なんじゃよ。おまえさんがそんな顔しているとポーも落ち着かんよ」
ポッツは、クスリと笑った。ミックがポーを見るとポーは、心配そうにミックをみつめていた。
ポーの心配をよそにミックの心は、逃げ出したい思いでいっぱいになっていた。ミックは、小さい頃から歓迎会のよう催しものは、友達がいなかったために入っていけないので苦手だったのです。
「ぼくちょっと外を散歩してくる。」
ミックは、みんなに黙ったまま家に帰ろうとした。もちろん帰り方などわからない。でも、なんとかなると思っていた。
「歓迎会は、すぐあるからなあまり遠くにはいかないようにな。」
ポッツは、何も疑うことなく送り出してくれた。ミックが病院のそとにでるとポーが心配そうについてきました。
すると、
「ポー、ミックを一人にしてやれ、一人になりたい時もあるんだ。」
ポッツが病院の中からポーに声をかけた。ポーは、それを聞いて
「ポポ」
残念そうに肩をおとして病院の中に入っていった。
病院を後にしたミックは、町の中をどこにいくかもわからずに歩いていた。その時、いろんな生物に声をかけられた。
「やあ、君がミックだね。歓迎会は、たのしみだね」
とか
「こんにちは、元気なさそうね、歓迎会がはじまれば元気になるわ。またあとでね。」
とかこの町は、本当にミックを歓迎しているんだとミックは思った。同時にもっとこの町のことが知りたくなった。ミックは、来た道を戻ろうと思って後ろに向き直すと自分の来た道がわからなくなっていた。
「迷子になっちゃった。ここは、どこ?」
ミックは、「またみんなに会いたい。」そう想ったら涙がでてきた。ミックは、足をとめて泣きながら空を見るとさっきまで輝いていた星から小さな妖精がでてきて星にカーテンを掛けていた。他の星にもそれぞれ妖精が住んでいるのか、カーテンをかけていた。月を見ると美しい月の女神アフロディーテがベッドで眠っているのが見えた。
月は、女神が寝ているせいか光が弱かった。
隣の空では、誰がかけたのか太陽にへんてこな布巾がかかっていた。ミックは、涙がとまるほどびっくりしてしまいました。この町は、人も建物も全部変だけど空まで変だと思わなかったのでした。
そうこうしているうちに
「おーい、おーい」
「ポーポー」
「ミックーどこだー」
ミックを探すポーたちの声がきこえてきました。
ミックが辺りを見回すと遠くの方にポーたちがいた。ミックは、全速力でポー達のところへ涙をいっぱいためて走りました。
「なにしてんだよ、みんな探してたんだぞ。
勝手に遠くに行くな。」
スカッチは、涙をながしながらミックを殴りその手は、震えていました。
そして、強くミックを抱き締めたのです。「ごめんなさい。」
ミックは、スカッチの腕の中で泣きながら小さな声で言いました。
「何より見つかってよかった。さあみんなで村に帰ろう」
ポッツは、ミックの頭をやさしくなでました。
「ポポポポー」
ポーは、ミックをスカッチの腕から離すと誇らしげに肩車をしました。
ミックは、止まっていた涙がまた溢れてきました。みんなと一緒にいたいと心のそこからそう思ったのでした。
「おい。起きろ、ミック。村についたぞ」
スカッチの起こす声にミックは、目をこすりながら起きました。どうやらポーの肩の上で泣きつかれて寝てしまったらしい。周りを見ると村の人たちにミックは、囲まれていた。
「心配したぞ」
「どこに行っていたの。」
「怪我はしてない?」
「大丈夫?」
村の人たちは、ミックに声をかけて肩をポンとたたいたり、頭をなでたりした。
ミックは、その一つ一つの言葉に胸がいっぱいになった。
「さあ歓迎会をはじめるぞ」
スカッチが大きな声を合図に空にドーンっと大きな花火があげました。
その大きな音に寝ていた星の妖精と月の女神は、目を覚ましました。
星の妖精たちは、歓迎会を楽しむように星を揺らしていた。月の女神は、優しいまなざしで月の窓辺からこちらを見つめていました。