第一話 メタモルフォーゼ
短編です。
私の人生の転機——
鬱屈とした日々を照らしてくれたのは幼き頃の願望、お姫様になるという夢だった——
***
「お届け物です。」
私は玄関へと急ぎ指定日時で頼んでいた代引きの荷物を受け取る。
「ようやく……届いた……!」
玄関で受け取った段ボールの宛先を見て私は興奮を抑えられなかった。
ロリータファッション。
それはフランスのロココを元に日本の原宿で誕生した独自のカルチャーの事を指す。
そして歳を取り忘れかけていた女の子が一度は憧れるお姫様になりたいという願望をここぞとばかりに刺激し、目覚めさせるその可愛らしく洗練されたドレスは見事に私の疲れ切った心を惹きつけるのはとても容易だった。
中村 莉々愛20歳。
今年料理の専門学校を卒業したばかりの新卒で一人暮らしをしているジリ貧の社会人だ。
だが運の悪い事に就職活動から一刻も早く逃れる為なんとなく就職した職場では人間関係に恵まれず、毎日嫌がらせの様にいびり倒され、ミスをすれば強く叱責される日々の繰り返しで私の心はどんどん磨耗していた。
そして私はたったの三ヶ月で鬱病を発症し家に引き篭もる様になってしまった。
(私って何の為に頑張って生きてたんだろう……。)
いつもベッドの中に潜り目を瞑ればそんな考えが頭の中をぐるぐると巡っていく。
鬱病を発症してから私は人付き合いが怖くなってしまった。
そのせいか親とも上手くいかなくなり実家に帰って来いと呼び戻されても頑なに借りていた安アパートから出ていく事をしなかった。
そして時にこの世界から居なくなってしまいたいと思うことすらあった。
だけどそんな中私はとあるものと出会い私の人生は転機した。
それは何気なく見ていたYouT◯beのショート動画で流れてきた一つの動画だった。
「ロリータ……可愛いな……。」
それはロリータを着る女性のあるあるをコミカルに動画内で表現し発信しているものだった。
それから私はロリィタについてSNSや動画等を見て調べる様になった。
そうしていると私は自然とこう思う様になっていた。
(こんな可愛いお洋服私も着てみたい……。)
だけど最初は目立つフリルやリボンがたくさんあしらわれたそれを自分自身が着こなせる自信が無かった。
そんな時にSNSで知ったのが海外のロリータブランドを取り寄せて家の中だけで着るというものだった。
(通販なら誰にも知られることもない。
それに海外製品は日本のロリータ程高くないんだよね……。)
何度か悩みはしたが折角の機会を無駄にしたくなくて私はそのサイトで人生初のロリータを購入したのだった。
そして冒頭に至る。
「やっぱり可愛いなぁ〜♡」
最初は露骨な甘いテイストを避け、普段使いしても支障のなさそうなクラシカルなロリータ、通称クラロリと言われるものを購入した。
ロリータにはゴスロリや甘ロリの他にも様々なジャンルがあるので自分のチョイス次第で表現は無限大なのである。
私は早速届いたロリータ服に袖を通した。
「なんだかいいところのお嬢様みたいだ。」
レースのついた白ブラウスに花柄の映える落ち着いた色の上品なジャンパースカート。
そして安物だが別のネット通販で買ったパニエを履くとAラインの綺麗なシルエットが浮かび上がる。
「やっぱりパニエの丈少し短いかな。
今度もう少し長いやつも買ってみよう。」
そして私は初めてのロリータ記念に写真を撮ろうと考える。
折角なのでいつも一括りにしていた髪を下ろし鏡の前に立つ。
写真を一枚カシャリと撮るとそれだけで満足感と充実感が私の心を満たしていった。
「次はこの服に合うヘッドドレスと靴下も買おう。」
そうして私は徐々にロリータの道を突き進んでいく事になったのだった。
to be continued……




