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ドラゴン

 モードレッドが取り出した札。

 それより現れた化け物は、一匹のドラゴンであった。

 硬いうろこを持ち、背には大きな翼。巨大な尾が優雅に揺らめている。


「……醜い」


 だが、そのドラゴンはハリボテの存在であった。

 魔物の中で最強格の一角として君臨するドラゴンにしてはまず背丈が小さかった。

 その翼は左右で違う種のものだった。

 その尾は虎の尾のようだった。

 その身は幾つもの生物を張り付けたかのような肉で覆われ、そこから雑にうろこを張り付けたかのような、そんな様相だった。

 ベルカナたちの前に立つドラゴンはハリボテの、無理な形で人工的に作られた存在であった。


「ガァァァアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」


 しかし、それでもドラゴンはドラゴンだ。

 その身に有する魔力は膨大で、その咆哮ひとつで空気を震わせる。


「片しておけ」


 暗黒商会の前に立った数多くの敵を葬り去ってきた、切り札の一つを切ったモードレッドは席から立ち上がり、そのままこの場を立ち去っていく。


「追いますか?」


「別に良いでしょう。どうせ、逃げ場はありません」


 四番目の子。マナズの言葉をベルカナは首を振って否定する。


「私たちは私の仕事をしましょう。このドラゴンを倒しましょうか」


 ベルカナはゆっくりと、腰に差してあった剣を抜く。

 それに続き、彼女の背後に控える五人の少女も剣を抜く。


「……ドラゴンとの戦いは、三年前。あの人との至福のひと時以来ですね」


 頬を、少し赤らめたベルカナの言葉の後、先にドラゴンが動き出す。

 その虎のような尾をベルカナたちに向けて振るう。

 自分へと迫りくる尾をマナズたち五人は空に飛ぶことで回避する。


「……ッ。重いですね」


 だが、ベルカナだけは魔力で強化した全身でもってただそこに立ち、振るわれる尾を剣一つで受け止めてみせる。


「ガァ……?」


 自分の一撃を、遥かに小さき生物ひとりに止められたドラゴンは首を傾げ、その動きを止める。


「ハァっ!」


 そこを狙い、尾を宙に飛んで回避していたマナズたち五人が攻撃を仕掛けていく。

 魔力によって強化されるその剣筋はドラゴンの硬いうろこであっても貫通し、斬り裂いてみせた。


「がァァァア!?」


 緑色の血を吹き出させるドラゴンは悲鳴をあげながら、それでもドラゴンにしては小さいながらも、一つの生物として十分大きな体でもって無茶苦茶に腕を振るい、翼をはためかせる。

 風を切り割き、荒れ狂うそれらを前に、マナズたちは一度、引くほかなくなる。


「私も行きますか」


 その代わりとして、衝撃によって痺れた手を少し振ったベルカナは地面を蹴り、ドラゴンの足元にまで一呼吸で迫り、そのままその太い足に斬りかかる。


「ガァァアアアアアア!?」


 ベルカナの剣はドラゴンの足を大きく斬り裂いた。

 

「ハァっ!」


 二つ、三つ。

 幾つもの剣戟を同じ傷跡に叩き込み続け、そのままドラゴンの片足を一つ斬り落としてみせる。


「ガァァアアアアアアアアアアアアアアア!?」


 ドラゴンの口より悲鳴が上がり、そのままゆっくりとその体が傾いて緑の血が水たまりとなって溜まっていく。


「今です」


 傾いたドラゴンに更なる攻撃を加えようと一度引いていたマナズたちが再び近づいていく───その最中。


「ガァァアアアアアアアアアアアアア!」


 ドラゴンの口より魔力の濁流が放出される。

 ただ、膨大な魔力を口から放出するだけのその技は、『ブレス』と呼ばれ、人々から恐れられるものだった。


「……っ」


 ブレスに飲みこまれたマナズたちであるが、その身には傷一つなかった。

 魔力で作った防御膜がドラゴンのブレスをも弾いたのだ。


「……そう、何度も食らうわけにはいきませんね」


 ブレスを無傷で乗り切ったマナズたちはドラゴンへと攻撃を加えていく。


「ガァァアアアアアアアアアア!」


 自分の体に次々と傷が刻まれている中で、ドラゴンはブレスを放ち続ける。

 だが、そう二度も当たることはない。

 ベルカナも、マナズも、その他の少女も容易く回避して攻撃を当て続ける。


「……!?」


 このままいけば問題なく殺せる。

 そんなところで、激しい戦闘の余波を受け続けていたこの、地下空間そのものが揺れ動き始める。


「……ッ!?こんな地下空間で切るような札ですか、これはっ」


 揺れ動き、パラパラと。空より土を降らせる地下空間を前にベルカナは眉を顰め、少し無茶をしてでも早々の決着を望むべきか───そう、思った次の瞬間。



「おもちゃだな」


 

 理外の理が、この場を支配する。

 空間を歪ませるほどの魔力がドラゴンの口より放たられたブレスを消滅させ、ただ宙を駆け抜けた魔力の剣圧がドラゴンのもう片方の足を斬り飛ばす。


「ガァァアアアアアアアアアア!?」


 両足を失ったドラゴンが態勢を崩して地面に倒れる中。


「ウィアド様……っ」


 どういうわけか。

 壊れてなどいないはずの壁をすり抜けて、その手に気絶したモードレッドを抱えるゼノン───ルーンコードの首魁、ウィアドがドラゴンの前に立つのだった。

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