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囚われ

「う、うぅん……」


「ぅ……うぅん」


 固い石の床に天井。それと壁と鉄格子に囲まれている部屋の中で、気を失っていたお姉ちゃんたちが徐々に意識を覚醒させていく。


「こ、ここは……?」


 意識の覚醒と共に辺りを確認するお姉ちゃんたちは自分たちの状況を確認していく。

 壁より伸びる鎖に拘束され、壁際から動けなくなっている自分たちの現状に。

 自分たちが地下牢に閉じ込められているという現状に。

 そして、牢の外で手錠をつけられて地面に転がされて眠っている僕の現状に。


「……ッ!ぜ、ゼノンっ!」


 えっ?僕?僕はずっと起きていたよ。

 ちゃんとお姉ちゃんたちが拘束されているときも、自分が拘束されているときもしっかり起きていた。

 さわさわと、たまに股間を撫でてくるのだけはやめてほしかった。


「……うぅん」


 お姉ちゃんが起きたのを確認してから、僕もわざとらしく起き上がる。


「へへへっ、起きたか」


 それら一連の流れを見ていたやけに軽装の看守たち、五人の女性たちが下衆たる笑みを浮かべながら口を開く。


「メインディッシュは落ち着いたうえで、男の反応を見ながら……女の醜い嫉妬と羨望のまなざしを受けながらするのが一番さ」


「あ、貴方たち!……これはっ!」


「な、何で私たち閉じ込められて……」


「はっはっは!もうわかっているだろう!うちの上司にお前たちは嵌められたんだよ!」


「……ッ、あの、女狐ぇッ!」


 いや、まさか懇意にさせてもらっている商会が僕たちを裏切っているとは思っていなかったよね。


「ぜ、ゼノン!」


「……お前たち、ゼノンに何するつもりだ!」


 僕が呑気にそんなことを考えている中、アスカねぇが女看守たちに向けて叫ぶ。


「そりゃ───」


「……おねえ、さんたち」

 

 その疑問に女看守の一人が答えるよりも前に、僕が口を開いて全員の意識をこちらに向けさせる。

 

「僕を、……襲うの?」


 そして、わざとらしく体をねじり、相手の欲情をそそるようなしぐさをして見せる。


「ハハッ!そうさぁ!」


 こんなことやったことないし、絶対に拙かった。

 それでも、拙い僕の誘いへとほいほい乗り、一人の女看守が僕のお腹に跨って馬乗りの態勢となってくる。


「あ、姉御!もう我慢できねぇっす!」

 

 もう、我慢できないとばかりの態度を女看守たちは見せていた。


「まぁ、待て!物事には順序がある!一度、凌辱したことのある非処女の私を信じろ!」


 あっ、僕の馬乗りになっている人、経験者なんだ。

 この人の被害にあった人にはちょっと祈っておこう……まぁ、この世界の男たち全員がイキっていて嫌いだから、別にどうでもいいと言えば、どうでもいいけど。


「おぉぉ!」


 一度、経験したことのある女看守は少し余裕そうだったが、他の四人はそうじゃなかった。

 四人の中の一人が自分の股の服を引き裂いて自身の恥部を露わとした上でそれをこちらへと近づけてくる。


「私のを舐めろぉぉぉぉぉ」


「……っ」


 うわっ、臭。

 こいつ、ちゃんと洗っているのか?


「いや、いや!?嫌、辞めてぇっ!」


「私の弟に、……ッ!私の弟に汚いものを近づけないでっ!!!」


 僕が悠長にただ、その匂いにだけ感想を持っているのに対し、囚われの身となりながらただ眺めていることしかできないお姉ちゃんたち二人が絶叫の声をあげる。


「ったく。そうだぜ?綺麗な顔をお前の汚いブツで汚すなよっ」


「なっ!?汚くないわ!毎日洗っているっての!」


 毎日洗っていてこの臭さ……?そりゃもう救えないな。


「女のものなんて少しでも触れたくねぇよ!まずはキスからだっ!それが王道だろうがーっ!」


「ってか、まずは裸を拝むところからよ!汚いものに汚されていない、純白の少年の裸を……はぁ……はぁ……はぁ……」


「じゃんけんで買ったのは私だからな!一番最初にキスするのは私だ!」


「自分もキスする口に己のブツを触れさせようとするとか頭湧いてんのかッ!散々嬲った後にでもさせればいい……!はやる気持ちを抑えろよ」


「そ、そうだな……確かにその通りだ」


 あっ、臭いのが遠のいた。

 助かった……思わず魔力で消し飛ばしてしまうところだった……でも、しばらく鼻に残りそうだな。あの激臭。


「け、汚らわしい……!なんて、何て、話をッ!お前ら、……絶対に許さないッ。もしも、もしッ!ゼノンに手を出したらっ」


「止めて!止めて!止めてよぉおおおお!お願いだから……お願いだから、ゼノンを、汚さないでっ」


 お姉ちゃんが絶叫している中で。


「ごかいちょーっ!」


 馬乗りになっている女看守が僕の服を手で引き裂き、まずは上半身を露わとさせる。 


「「いやぁぁああああああああああああああああああ!?」」


「ヒハハハっ!」


「「「おぉぉおおおおおっ!」」」


「ボンッ」


 悲鳴と感嘆。

 相反する感情が織り交ざなうこの空間で僕は笑い、自分の体を爆発させる。


「はっ、……えっ?」


 僕の上半身が吹っ飛び、辺りに肉塊をまき散らす。


「し、……んだ、?」


「……う、そだろ」


 血と肉を浴びた女看守たちは呆然と言葉を呟き、現実から遠く離れていく。

 そして、その表情はどんどんと青く、そして白くなっていく。


「ゲラゲラゲラゲラッ」


 その様を後ろから眺めていた僕は彼女たちを嘲わらう。


「ドッキリだいせいこーっ!自分が欲しかった者が、目の前で爆発した気分はどうだった?ドッキリって、人生で一度は仕掛けてみたかったんだよね!いやいや、罪悪感ゼロで嵌められる人たちが出てきてくれてよかった」


 素晴らしい表情を見せてくれた。人間の表情は、顔色はあぁもはっきりくっきり変わるものなのか。良いものを見せてくれた。

 でも、このドッキリはもうしないかもな。

 親しい人たちにかけるにしては悪辣すぎ───。


「あっ」


「……ゼ、のん?」


「あぁ……」


 そう言えば、この場にはお姉ちゃんにもいるんだった。

 彼女たちも家族である僕が爆発した様を見ていたわけで……うぅん。悪いことをしたかもしれない。申し訳ない。

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