撤退
「……馬鹿な」
そこまで難しい技術でもなかった。
この世界にも魔力が流れている。その世界の魔力と、自分の魔力を自分の外側で混ぜ合わせるのだ。そうすることで、世界そのものが壁となってくれる。
割と楽に出来た。
「あぁ……前言撤回。維持するの、普通に難しいね。これ」
らくしょー。
そう思っていた僕だったが、想像以上に維持し続けるのが難しく、すぐ、楽に出来た発言を撤回する。
「何かもっとうまい方法がありそうかな?これを維持し続けるのはちょっと現実的じゃないな。これはちょっと無茶が過ぎる」
アンドリューの魔力の流れ的に、何か道具を使っていそうな雰囲気を感じるだけど、どうだろうか?
「まぁ、それは君の話を聞くのが先決かな」
冷静に考えて、目の前で驚愕の表情をこちらに向けてきているアンドリューを無視して僕が考えることでもないか。
「それにしても、もう攻撃してこなくていいの?結界を貼れたのほんと一瞬だけど」
ゆっくりと、海面から僕は再び魔法で空へと上がり、アンドリューの前に立つ。
「どう?もっと色々見せてよ。僕の為にさ」
「……何者だ?」
「えー、聞きたいのは僕の方なんだけど?」
「ほざくな……その力、普通ではない。知識と言い、あり得ぬことばかり。何者か?」
「何者であっても良いでしょ?僕は僕さ」
「……貴様のような男は我々のところにも情報はない」
「ありゃりゃ。そんな特別なの?僕。特別扱いは嫌いじゃないよ」
「……ふざけた、ふざけた男だ」
「さっきまでの飄々とした、感情の見えない姿は何処に行ったの?余裕のない男は好かれないよ?」
僕があの結界を見せたところから、アンドリューの態度が明らかに変わった。
特に感情を見せなかったその姿を一変させ、狼狽し、その表情に確かな感情を宿していた。
「……それだけの、ことなのだよ。愚かな者たちは知らないかもしれないがな」
「ハハッ。それはベルカナたちに言っている?」
「ベルカナ、が君の名でないのならそうだな。君は知っている側だろう?」
「ふふっ。まぁ、別に全然僕も知らない側だけどね?」
「……ふぅ」
嘘でも、何でもなく本当に僕は何も知らない。ただの転生者Aだからね。僕なんか。
「そうか」
だが、アンドリューはそれを信じてくれなかったようだった。
「今は良い……貴公のことはこちらの方で調べておこう。一度、退くとする。今は、そっとしておいてやろう」
「ほんと?感謝の言葉を返しておくね」
「うむ。そうしてくれると助かる。ではな」
少し、笑みを浮かべた後にアンドリューはその姿を消滅させる。
言葉通り、本当に引いていったのだった。
「……無理か」
追う気マンマンだったのだが、どういうわけか忽然とアンドリューの気配が完全に消えてしまった。これでは追うことが出来ない。
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