説教
「信じられないわ……!」
リーノねぇを無事に追い返した後。
「そんなほいほいと一人で海に潜っていて……!危ないったらありゃしない!」
今度の僕はナターシャから詰められていた。
「男が特別扱いにあぐらをかいているのが嫌いなんだろぉー?それなら、僕のことも特別扱いせず、これくらい許してや」
「別に女子でも駄目よ!一人で何処まで行っているのよ!」
……まぁ、それもそうか。
確かに学校行事でいくら自由行動と言えど、誰の目にも入らないところにまで全力で突き進むのはちょっと問題か。
「ぶー!ぶー!そんなの僕の自由じゃないか!深海まで行って何が悪い!」
とはいえ、それはそれ。
これはこれ。
僕は己の自由の為、抗議を再開する。
「そーやって!何処まで行ったのか!そこさえも誤魔化したりするから!」
「えー」
全然誤魔化してなんかないんだけど。
ちゃんと僕は深海の奥深くにまで潜っていったよ?
「だから……!」
「……ふぅー」
「ひゃっ!?」
説教が長くなりそうだ。
そう思った僕はナターシャの背後に立ち、その耳元に息を吹きかける。
「は、は……はっ!?」
これでノックアウトだ。
ナターシャはその場に崩れ落ちる。
「何だかんだで男子に弱いんだね」
「……ッ!?」
頬を、首元を真っ赤に染めあげたナターシャのことを笑い、僕はそのまますたこらさっさと彼女の前から逃げおおせる。
「説教なんて誰も聞きたくないからな」
アスカねぇや、リーノねぇ相手にも良くやる逃亡手段だ。
十年以上の付き合いがあってもなお、二人は僕が耳に息を吹きかけるだけで崩れ落ち、再起不能になる。
「ふんふんふーん」
無事に自分のことを捕縛していたナターシャから逃げおおせた僕は鼻歌を歌いながら、自分たち学校の生徒の為に用意されている海沿いのリゾートホテルを歩く。
「わふっ」
そんな僕の服の裾が、横からささやかに、控え目に引っ張られる。
「あー、マリア」
引っ張れた方に視線を向けてみれば、そこには学校で始めて出来た友達であるマリアの姿があった。
「何?どうしたの?」
「……いや、その、自由時間の間、ずっと何処に行っていて大丈夫なのかな……?って思って」
「もっちろん。大丈夫も大丈夫さ。マリアはこの学校で一番僕のすごさは見ているでしょ?」
ステーキを食べに行ったり、それからもちょくちょく遊びに行っていて、ちゃんと付き合いは持っている。
「そーだけど!それでも、それでも心配なんだよ」
「そーお?」
「そうだよ!今回のは特に!だって、海に潜ってずっと帰ってこなかったんだよ!適当な力自慢に喧嘩を吹っかけるのとは違うんだよ!自然は、……自然は恐ろしいんだから!」
「まぁ、それには納得するけどねぇ?」
今まで色々な無茶をしてきた自覚があるけど、そんな僕が一番脅威に感じたのは普通に自然だ。
雪崩に巻き込まれた時が普通に一番命の危険を感じた。
めっちゃ深くまで沈んだからね。僕は。
「みんなから愛されている身なんだから……ちゃんと、そんな無茶ばかりしないで」
「えへへ」
「可愛い笑顔で逃げるのは駄目だよ!反則!許したくなっちゃうから!」
「みんな、甘いよね」
「もー!」
何だかんだで僕の自由を世界が許してくれている。
この世界が持つ男の特権ってすごいね。ここまで色々許される状況じゃなかったら、流石の僕も色々と自重していたよ。ちゃんと前世含め、親から教育を受けているからね!
世間一般に致命的な迷惑をかけないように!くらいの良識はある。
「そ、それでなんだけど……!」
「ん?」
「明日も自由時間があるわけだけ───」
マリアの言葉の途中。
「ァ?」
「えっ?」
遠方から魔力のうねりを感じた僕はそちらの方に視線を向ける。
「ど、どうしたの?」
「……おやぁ?」
不思議な魔力のうねり。魔力と魔力のぶつかり……片方は、ルーンコードのみんなのか。王都、でだね。これは。なるほど。なるほど。
「中々面白そうなことをしているじゃん?」
祭りの気配……これは、行かねば。
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