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馬車

「おっほーっ!」


 校外学習の当日。

 オースティン王国の王都を出発し、目的地へと向かう馬車の中で僕は歓声をあげる。


「初めて見る獣がいたぞ!……あれは、何だろうなぁ?うぅむ……魔力反応的に魔物ではない。普通の獣。鹿っぽいけど……キョンかな?この世界にもいるの?」


 馬車の窓から体を乗り出し、馬車と並走している獣を僕はじっくりと観察する。


「おい!ちょっと体を乗り出し過ぎよ!落ちちゃうわよ!」


 そんな僕へと同じ馬車に乗るナターシャが心配の言葉を投げかけてくる。


「……」


 むぅ……まったくもって過保護だ。

 例え、身を乗り出し過ぎて落ちたとしても僕なら無傷だというのに。


「ひょい」


 そんなことを思った僕は衝動的に窓から体を投げ出す。


「「「あぁぁぁああああああああああ!?」」」


 その瞬間、馬車の中から悲鳴があがり、僕と同じ馬車に乗ることを勝ち得ていたナターシャを初めとする三人の生徒が一気に窓から顔を出してくる。


「わぁ~」


 そんな彼女たちが目にするのは魔力を糸のようにして窓に張りつけ、宙を浮かんでいる僕の姿だった。


「ちょちょ!?御者さん!馬車止めてぇ!?」


「ゼノンくんが!?ゼノンくんがっ!?」


「落ちちゃうぅぅぅぅぅぅうううううううううううううううう」


「え~!でも、それをされちゃうと僕が落ちちゃうよ?」


 大慌てで馬車を止めようとするナターシャたちに向け、僕は冷静な声を返す。


「「「……ッ!?」」」


「今の僕は馬車の進む力に乗って浮いているんだから、馬車が止まったら僕はそのまま地面に落ちちゃうよ?それでいいの?」


「ど、どどどすればっ!?」


「とりあえず、三人は退いてよ」


「えっ!?でも!」


「良いから。手を離さないと僕はわざと地面に落ちて傷だからになって涙を流し、三人にやられました。って宣言するyよ」


「「「……っ」」」


 僕の言葉に三人は一瞬で顔を青ざめさせ、大慌てで窓から退く。


「ほっ」


 それを確認した僕は体を振って足を地面につけ、そのまま走り出す。

 

「ほっと」

 

 馬車よりも早く走った僕は窓縁へと手をかけ、そのままジャンプで窓から馬車の中へと戻ってくる。


「うわっ!?」


「これでよしっと……ね?馬車から身を乗り出していても大丈夫だったでしょ?落ちてさえ、無傷なんだから」


「……そ、それを証明するためにわざわざ?」


「ふふふっ、いや、それにしても中々エキサイティングで楽しかったね」


「「「何処がっ!」」」


 僕の楽し気な言葉に対し、全員からツッコミの言葉が飛んでくるのだった。


 ■■■■■

 

 ちょっとしたアクシデントを起こしつつも、総括してみれば何事もなく僕たちの一行は目的地に到着することが出来ていた。


「うーんっ、いい天気。新しい場所の空気は美味しいね」


 みんなが馬車から降り、それぞれ自分の荷物を取っている中、僕は体を伸ばし、初めてやってきた国の空気を吸う。

 

「……ゼノン。荷物は取りにいかないのか?」


 そんな僕へと大きなリュックを背負ったナターシャが近づいてくる。


「もう荷物を保管していた馬車の周りから人が減っているから、そろそろ取りに行ってもいいんじゃないかしら?」


「……ん?あぁ、別に僕は彼女たちに遠慮して荷物を運んでいた馬車に近づいていなかったわけじゃないよ?」


「ん?」


「僕はそもそも何も持ってきていないからね。手ぶらだよ、手ぶら」


「「「……えっ?」」」


 僕の言葉にナターシャだけではなく、密かに聞き耳を立てていた全員が固まる。


「ど、ど、どういうこと!?」


「言葉通りだよ?」


 混乱の広がる状況に際して僕は何をいまさらと声を返す。


「僕が何も持ってきていないところくらい誰か見ているんじゃない?」


「……いや、私が来た時にはもうゼノン君がいたし」


「私が来た時、ゼノンくんがいるだけで他の誰もいなかったから……ゼノン君が一番早くに来ていると思う」


 ……楽しみ過ぎてかなり早めに来てしまったから、誰も僕が手ぶらでフラッとやってきていることを見ていなかったのか。


「……でも、先生たちは見ているんじゃない?」

 

 誰かの一言に反応し、この場の生徒たちの視線が先生の方に向けられる。


「せ、生徒会長がゼノン君の為と言って校外学習の日程を予め確認し、荷物の用意をしていたので……ごく自然にあるものだと」


 その視線に対し、先生方の一人が言い訳でも口にしているかのような態度で言葉を話す。


「あぁ、それは家に置いてきたよ。邪魔だったし」


「何でぇぇええええ!?」


「まぁ、別にいいじゃん?いらないよ。いらないと判断して手ぶらで来たんだから。だから、まずは服を買いに行かないとな。じゃないと、明日着る服が今、着ている服になっちゃう」


 周りが騒然としている中で、僕だけは呑気にこれからについての語っていくのだった。

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