ステーキ店
「ぜ、ゼノンくんは世の女性の恐ろしさをわかっていません……!」
腕相撲を僕は堪能した。
楽しい経験だったと胸を張って言える。だが、僕の隣を歩くマリアとしては気が気じゃなかったようだ。
「そもそもとして、男であることを晒して街を歩くこと自体リスクのあることだと……本当に、軽すぎるよ!」
「でも、そうであるからこそ僕は今、こうして君と共にデートしているんだろう?」
「で、で、デート……っ」
「デートではないか。ただの友達だし」
「と、友達……!友達として認めてくれるんですか!?」
「もちろん」
「お、おぉ……!奴隷ではなく、雑用係でもなく、友達……!男友達。なんて、甘美な響きなのっ」
「……僕以外の男はどれだけ酷いんだ」
でも、あれなんだろうな。
この世界の女性の価値観で言えば、女を物扱いする奴よりも好き勝手に外で歩いて危険にも喜んで頭を突っ込みに行く僕の方が頭痛い相手なんだろうな。
そもそもとして、僕は全然ラスボスになりたいと思っている危険思想あるしな。
世界の敵として主人公(僕)に倒されたフリもしたい。いや、流石にそれはマッチポンプが過ぎる……主人公ムーブを楽しんでから、その百年後とかにラスボスムーブを楽しむか。
すべてを楽しみ尽くすことを考えると、全然寿命が足りない。何とか魔力で寿命を延ばす術を探さないと。
「んでぇ?結構歩いているけど、ステーキ屋さんは見えてきた?」
「あっ、えっと……後、少しだよ」
「おぉ!良いね。楽しみだ」
「食事、好きなんだ」
「もちろん」
「へへ、そうなんだ……小食な、男の子も多いし、お肉が好きな子とか、珍しいかも」
「僕は家でお姉ちゃんたちより食べていたよ」
「えぇ!?そんなに!?……待って?ぜ、ゼノンくんってフリューゲル伯爵家だよね?」
「うん」
「つまり……ゼノンくんのお姉ちゃんって、あの名高い生徒会長の?」
アスカねぇも、リーノねぇも、学園では優等生だ。
共に生徒会所属であり、アスカねぇは現在生徒会長。同学年にいる公爵家の人を押しのけての大抜擢。
リーノねぇに関しても次期生徒会長濃厚として見られているし……本当に優秀な姉たちなのだ。いやはや、ちょっと信じられないけどね?
「僕はアスカねぇよりも食べるし、何なら実力面でも強いよ」
「流石にそれは嘘でしょ!いくら何でもわかっちゃうよ!」
「……えぇ」
全然嘘じゃないんだけどな?
百回やっても百回余裕で勝つよ。負けるはずがない。
「って、そんな話していたら店についたよ!」
マリアもちゃんと貴族。
たどり着いたお店は貴族たちの住む高級街の一角に店を構えるずいぶんと高そうなお店だった。
外から見るだけでも、 中でお客さんが食べているお肉はおいしそうだった。
「おっ、良いじゃん。えぇやんえぇやぁん~、楽しも!」
「あっ!そんないきなりお店に入って……!」
男である僕がお店に入ってきた。
その事実を前に、お店の中にいた客も店員も全員が騒然とする中で、僕だけは平然と勝手に開いていた席へと腰掛けてそのままメニューへと手を伸ばすのだった。
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