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王都

「王都観光ーっ」


「ちょちょ!?声が大きいよ……!お、男の子はただ、それだけで毒なんだからっ」


「えぇー?言い過ぎ……ではないか」


「だよ、だよ!」


 入学式後のホームルームの後、僕は隣の席のマリアと一緒に王都の街並みの方へと出てきていた。


「まぁ、でも、声が大きくなるのは仕方ないよね。人生初の王都だもの」


「王都に一度も来たことないの?」


「男子だからね。そんな頻繁に外出させてくれないんだよね」


 貴族の子女であれば、学園に入学する前の年齢であったとしても何回かは王都に来たりするものだ。

 だが、僕はそれらの経験がゼロ。幼いころに多くの人が経験するであろう社交界の経験も未だ僕はゼロだった。これもすべて、僕が男であるからこその悲しい事態だ。


「あっ、それもそうか……そうだよね。男の子はちゃんと家で守らないと」


「……」


 まぁ、この国の王都が初めてなだけで、別の国の王都には行っていたりもするので、全然僕は世界中を駆け巡って好き放題しているのだが。

 家で守られたりは全くしていない。


「というわけで、僕は王都観光したいんだよ」


 まぁ、そんな誰もが聞けば胃が痛くなってしまうような話はしなくていいよね!


「何かおすすめの場所はない?」


「お、……男の子が、喜んでくれるよう場所っ。あ、アクセサリーショップ行きますか?」


「あぁ、別に僕はアクセ興味ないから」


「えっ!?」


「あれ、じゃらじゃらしているだけじゃない?」


「えぇぇ!?」


 この世界、趣味嗜好とかも男女で逆転している。

 この世界の男たちは家から一歩も出ずに引きこもり、アクセを眺めて普通におままごとしていたりする。趣味嗜好が女児だ。

 それが普通に前世にもいたようなおっさんがしているのだ。

 普通にちょっとキモイ。お父さんとか見るに絶えないからね。全然、会いたくない。フル無視だ。


「まずは飯かなー。何かいい場所。普通にマリアが好きな場所行こうよ」


「わ、私が……好き場所!?ステーキショップとか!?」


「あっ、良いじゃん。そこにしようよ。ステーキ良いね」


「えぇ!?か、噛み切れたり……?」


「舐めないで。行こうか。案内して」


「う、うん……い、いいんだ。これでいいんだ!」


「うん。良いんだよー」


 ステーキ。良いね。何のお肉だろう?

 魔物の肉とか、普通に美味しいからな。

 この世界は牛とか、豚とか、前世でポピュラーだった家畜に加え、狩猟で得る魔物の肉なんかもあるので、食材のレパートリーで言えば地球より豊富だ。

 食事も楽しみの一つだ。前世の食事の記憶と比べたら、全てが輝いて見える。


「おー!おー!私に挑むものはいねぇか!」


 ワクワクした気持ちを抱えながら進んでいると、道の片隅で多くの人を集めている場所があった。


「なにあれ」


「えっ?」


「力自慢求む!私に腕相撲勝てたら後ろの金全部やろう!勝負金は銀貨一枚だ!」


 そこに近づいてみると、何やらビキニアーマーを身に着けた筋肉質な女性が腕を回しながら声を張り上げていた。


「あぁ、平民による出しものね。見ていく?……あまり、おススメはしないけど」


「いいじゃん!いいじゃん!楽しそう!」


「えっ!?」


 面白そうだと思った僕は目立たないようにと被っていた外套を脱ぎ、女性の方へと近づいていく。


「だ、男性!?」


「うっそだろ!?」


「こんなところに!?」


 僕の姿を認識した女性たちが驚愕の声を上げ、慌てだした中で僕は腕相撲の相手を探していた女性の前に座る。


「ち、ちちちちちか!?ハッ!?待ってくれ!私は今、汗臭っ」


「頑張っている人の汗は臭くないよ」


 慌てて僕から距離を取ろうとした女性の前で僕は腕をつき、銀貨を一枚テーブルの上に置く。


「お手をどうぞ?」


「……っ!?さ、触っていいので?」


「もちろん」


「はぁ……はぁ……はぁ……」


 快諾した僕を前に、女性は鼻息を荒くしながら僕の手を掴む。

 

「おいおい!?嘘だろっ!?」


「何が起きてんだ!?」


 その光景を前に周りはもうパニック状態だ。


「ちょちょ!?ゼノンくんっ!?そんな気軽に!?」


「しーっ、だよ。マリア。僕はこういうの好きなんだ。さっ、腕相撲だ。やろ」


「……う、腕相撲……!?そ、そうだ!ま、待ってくれ!けがをさせたくねぇ!」


「どうせ、勝負は一瞬さ。耐えていれば、それでいいだけ……一秒で決着がつかなかったら、僕の負けでいいよ」


「……待って欲しい。もっと、長くしないか?」


「ふふっ、そんな僕の手を握っていたい?仕方ないな。良いよ。頃合いになるまで握っていてあげる……だから、耐えてね?」


「おうよ!もちろんだ!」


「じゃあ、スタートね」


 腕に力を入れ、耐える態勢を取ったのを確認した僕は開始を宣言する。


「ほいっ」


 軽く、力を入れて一気に相手の腕をテーブルにまで叩きつける。


「あがっ!?」


「はい、勝ちー!」


 瞬殺だ。

 一撃で終わらせた。


「……嘘だろっ?全力、だったぜ?」


「勝ちなんだから、このお金は貰っていくよ。ふんふんふーん」


 無事に勝てた僕は女性の後ろにあった金貨がたくさん入った袋をもらっていく。


「よし!これでこれから行く飯代は稼げたね!」


「別にお金には困っていないよ!」


「ははは!良いじゃないか良いじゃないか!人がたくさんいる王都ならではのイベントにあった気がして楽しかったよ!」


 楽しかった!腕相撲なんて人生初めて!

 いやぁー、いい経験だったね!


「お姉さん。チップさ。受け取ってよ。じゃあね、また」


「……はひっ」


 満足させてくれた女性に金貨一枚をチップで上げた後、僕はパニックとなっている現場そのままにマリアを連れて再び道を歩き始めた。

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