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入学式

『新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。今日から皆さんは、新しい世界の扉を開きました』


 前世の、僕の記憶にはないが、おそらく前世の入学式とそう変わらない体育館の中。

 席についている多くの生徒たちの視線の先には、壇上で式辞を話しているこの学園の校長の姿があった。


「……わふっ」


 僕も周りと同じように参列し、あくびをかみ殺しながらその話を聞いていた。


「(……それにしても視線感じるなぁ)」


 女の子はおっぱいを見られている時、その視線に気づくらしい。

 その意味がよく分かった。

 周りは真面目に聞いている素振りを見せているが、さっきからチラチラ僕の方に視線を送ってきているのが校長を見ながらでもわかる。

 視線が刺さる刺さる。


「(とはいえ、それが普通なんだろうな)」


 辺りを見渡しても、男子の姿はない。

 昨日、一緒に過ごしたお姉ちゃんたちも入学式に普通、男子は参列しないと話していた。

 みんな欠席ばかり。ちゃんと出席している僕が目立ってしまうのは仕方の無いことなのだろう。

 んま!前世で待ち望みに待ち望んでいた入学式!そのイベントを!見流すなんてことありえないわけだが!


「~♫」


 眠たくなるようお偉い人たちの話。

 先生たちでさえ興味なさげな表情を浮かべている無為な時間。

 これを前にテンションが上がるのはしかたない。当たり前のことだろう。

 誰もいないベッドの上で、望んでいた光景なのだ。


「た、楽しそうですね……!」


 なんてことを考えていた中、僕の隣に座っていた女の子から小さな声で話しかけられる。


「ん?あぁ、楽しいよ」


「っ!?へ、返答を……!?」


 答えただけで驚かないで?


「僕の名前はゼノン。君は?」


「はっ!?わ、私はマリア・テレーニア。テレーニア伯爵家の長女であります!」


「あっ、伯爵家。うちと同じだね」


「お、お、おおお同じ!?ペアリング!?ペアアクセ!」


 爵位をアクセにする人はそういないと思う。


「ともかく、よろしくね?」


 なかなか変な人だと思うけど、それでも、これがこの世界のスタンダードなのである。

 友達を作るなら、こういうのも受け入れていかないと。


「へぁ?」


 僕は笑顔で自分の手をマリアに向けて差し出す。


「ん?友好の握手だよ」


「あ、あああああ握手!?手を取っていいんですかぁ!?」


「別にいいよー?でも、今は入学式の中。静かに、ね?」


「で、では失礼して……!」


「あはは〜」


 握手くらいで大袈裟だなぁ。

 そんなことを思いながら僕は自分の手を気持ち悪いくらい触っているマリアの手を握り返してあげるのだった。

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