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主人公

「……う、うぅんっ」


「……ぁ、うぅんっ」


「流石、姉妹か。呻き声が一緒」


 牢屋の中で眠りこけているお姉ちゃん二人を眺める僕はぼんやりくだらないことを思う。


「いやはや、まさかただの御使いがあんなことになるとは思わなかった」


 数年前から仲良くしているリリボン商会がまさか、僕を奴隷として売ろうとしているなんて思わなかったよ。

 国から禁止されている男性を売りさばこうとしている証拠がしっかり残っていた。

 まさか、こんな犯罪組織集団だとは思わなかった。それにお姉ちゃんも巻き込まれて、大変だよね。


 でも、ベルカナたちが暗黒商会!とか言って、暗躍してくれていたのが良かったね。

 僕の秘密結社ごっこをしたいという夢を叶えてくれた。ふふふ、ベルカナたちは僕が助けた恩を感じているのか、ちょくちょくあぁして、僕の遊びに付き合ってくれるのだ。

 いい子たちだよね。


「故に、最後までやりきらねばな」

 

 これが今回の、最後のイベントだ。

 僕は自分の体を魔力を使って弄っていく。骨を伸ばし、肉をつけ、僕は自分の体を大きくさせていく。


「せっかくだし、性別も変えてみちゃうか」


 子どもの姿から大人の姿へ。そのままさらに女性の体にまで変えてしまう。


「よし……これがウィアドとしての姿としようか」


 魔力で作った仮面まで着けた僕は意気揚々と魔力をお姉ちゃんたちに飛ばし、そのまま強制的に意識を回復させる。


「う、うぅん……こ、こはっ」


「あがっ」


 ゆっくりと、お姉ちゃんたちは起き上がってくる。


「「ゼノンはッ!」」


 そんなお姉ちゃん二人は起きるなり真っ先に僕の名前を呼んで視線を辺りに動かし、そして、そのまま僕の姿を捉える。


「……何、者で?」


「誰っ!?」


 リーノねぇは驚愕と動揺で体を強張らせ、アスカねぇは静かにその手を暗器へと向ける。


「お前らへの手向けよ」


 そんなお姉ちゃんたちに対し、僕は両手を持ち上げ、誰かを抱き上げているかのような態勢を取る。

 その、次の瞬間にその手の上に眠っている僕の姿が浮かび上がる。


「ゼノンっ!」


 魔力で今の自分の姿を再現して残した上で、手元に本来の姿で自分を排出したのだ。

 ふふふ、やっぱり魔力ってば便利だね。

 こんな手品のようなことが出来る。前世で練習した手品いらずだ。


「返そう」


「きゃっ!?」


 魔力だけの体で、僕は自分の体をアスカねぇの方に投げる。

 いきなりの投擲だが、アスカねぇはちゃんと僕を受け止めてくれた。

 いや、良かったね。地面にこのままごっつんこ、っていう笑えない光景にならなくて。自分で自分を痛めつける趣味は生憎と持ち合わせていない。


「運命に、……愛された子だ」


 なんてことを考えながら、僕はお姉ちゃんたちに向けて意味深な言葉を返す。


「な、何のこと……?」


「守れよ」


 ただ一言。

 

「運命に選ばれた子を」


 短い言葉だけを残し、僕は魔力だけの体をその場で消滅させる。

 これで実質的な消滅だ。


「き、消えた?!」


「な、なんだったの……?」


「(ふっ)」

 

 主人公っぽいなぁ!ゼノンよ!

 意味深な影の実力者から未来を予感させるようなことを言われるなんて、まさしく主人公じゃないか!マッチポンプ?そんなことは言わないでもらいたい。

 もうすぐ、僕が学園に通い始める年齢だしね。

 学園の方で主人公ムーブして遊べると良いな。

 ムフフ……そもそもとして、学校生活自体が憧れのものだった。ただ、学校に通えるというだけでも楽しみだ。


「あぁー、早く十四歳にならないかなぁー」


 来年から学園に通うことになるアスカねぇが羨ましい限りだ。

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