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ウインク(情報戰)

〈冬將軍面見た者は救はれぬ 涙次〉



【ⅰ】


さてルシフェル。前々回を參照して頂きたいが、「魔界健全育成プロジェクト」仲本堯佳に成りすましてゐる。その實體は所謂「二人羽織」であり、仲本の遺骸にルシフェルが憑依、操つてゐるに過ぎない。晝間は「プロジェクト」の部下逹に氣取られぬやう働き、夜仲本の寢靜まる時間に、遺骸を離れ(その間仲本は死んだやうに眠る。實は本當に死んでゐるのだ。仲本の妻はその事に流石に氣付いてゐなかつた)、彼の墓穴で短い睡眠を摂る。なかなか疲れるスケジュールだが、魔界で生きたり死んだり(要するに繰り返される蘇生だ)してゐた頃の疲勞を考へると、今の方が却つて氣樂だとも云へた。ルシフェル(これは彼のプライドが許さないから口に出しては云はないのだが)、自分を「飼つて」くれてゐるカンテラには、恩義に似た氣持ちを寄せてゐた。カンテラの庇護がなければ、また魔界生活の再來だ。



【ⅱ】


で、話は貝原文嗣の孫娘・麻織の身の上に移る(前回參照)。貝原はカンテラに斬られ、父・武平はじろさんに依つて斃された。信頼すべき者が欠けてゐる生活- 跡継ぎの武平もゐないやうでは、貝原家の没落は間近かだらう。そんな女の子逹を集めて、あこぎな商賣をやつてゐるのが、*〈惡魔商會〉改め〈天使商會〉だ。彼らが〈惡魔商會〉を名乘つてゐた頃、夢雀・POMの助も一杯食はされた、【魔】が運営する惡徳藝能プロダクションだ。



* 前シリーズ第149・150話參照。



【ⅲ】


〈天使商會〉は、上記の通り、麻織のやうな心細い境遇の女の子逹を食ひ物にしてゐる。彼女らをジュニアアイドルと稱して、水着ものゝイメージヴィデオを撮る譯だが、その實は、AV女優候補生だ。麻織の母は、藝能プロから聲が掛かつた、と云ふだけで有頂天。「あなたの美貌が認められたのよ」、と麻織を焚き付ける。段々、麻織自身もその氣になつて來て、鼻髙だか。そのせゐで、元より尠ない(深窓のお嬢様とはさう云ふものだ)親友逹も離れて行つた。尤も、親友と云ふのは見せ掛けに過ぎず、たゞの「取り卷き」連中、と云ふのが實體なのは云ふ迄もない。



※※※※


〈缶珈琲飲む時我が世の世知辛さ思ふ見てをれ髙市政権 平手みき〉



【ⅳ】


〈天使商會〉が狙つてゐるのは、黑ミサの復活だ。魔界は*「ニュー・タイプ【魔】」のラディカルな共和制の許で、黑ミサを撤癈した。〈天使商會〉は〈惡魔商會〉の殘党に依り、結成された。彼らは「オールド・ウェイヴ【魔】」であり、彼らが大手を振つて歩ける、強靱な「王國」の復活を夢見てゐた。その為には、ルシフェルのやうな強大な勢力を誇るリーダーと、黑ミサの「祭壇」役の美しい人間の女の存在が必要不可欠。手ずから寄りすぐつたAV女優候補生の中から、その適任者を探さうと云ふ譯だ。



* 當該シリーズ第22話參照。



【ⅴ】


その〈天使商會〉の怪しい動きは、逐次カンテラの耳に届いてゐた。一味の女スパイ・涙坐の報告には、なかなか侮れぬものがある。何せ彼女、透明人間化出來るのである(「ニュー・タイプ【魔】」には簡單に見破られてしまふ彼女の能力だが、この場合、對する者は「オールド・ウェイヴ【魔】」だ)。「それは捨て置けないな」-カンテラ。だが、ルシフェルの氣苦勞を考へると、カンテラには安易に彼ら・〈天使商會〉は斬れぬ。生前の仲本は、飽くまで不殺・飽くまで魔界の善導、と云ふ建て前を、「プロジェクト」の面々に押し付けてゐた。佐々圀守以下部下逹に怪しまれてはならない- こゝら邊、テオの天才脳が必要とされた。



【ⅵ】


で、テオ、直ぐ様情報をすつぱ拔き週刊誌に横流しにした。偽情報である。「〈天使商會〉、悪徳藝能プロダクションは新興宗教の吹き溜まり!?」の活字が誌面に躍つた。丁度、統一教會と政府自民党の癒着叩きに週刊誌は血まなこになつてゐたところだ。テオ、してやつたりである。



【ⅶ】


さう云ふ譯で、三々五々、女の子逹は普通の生活に帰つて行つた。仲本=ルシフェルから報奨金が下りた。その際、ルシフェルがカンテラに密かにウインクしたかだうかの情報は、傳はつてゐない。お仕舞ひ。



※※※※


〈猫眠る冬毛がレゾン・デートルだ 涙次〉



 PS: だが麻織自身は偶像に似た彼女観に拘り、〈天使商會〉に居殘つた。こればつかりは、カンテラにも救ひやうがない。「だうなとなれ」だ。カンテラ呆れて、彼女の事は忘れるやうに務めた、と云ふ。


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