来年の抱負 【月夜譚No.382】
夜空の下でキャンドルが瞬いている。風が吹く度にゆらゆらと炎が揺れて、幻想的な世界を作り出していた。
長い時間を経て建ち続けてきた石造りの建造物は、未だにどっしりとそこにあった。今は博物館になったそれが、沢山のキャンドルに囲まれて静かに佇む。
暖かな光景に彼女がほっと吐き出した息は、白くなって夜に溶けた。その隣を腕を組んで歩くカップルが通り過ぎる。
辺りを見回すと、家族だったり友人だったりと、寄りそう影が幾つも見える。それを瞳に映した彼女は、再びキャンドルの群れに視線を戻した。
少しのんびりしたくて、この年末に一人旅をしようと決心した。自由に好きな場所を巡って、美味しいものを食べて、それはそれで楽しい時間を過ごせたと思う。
けれどやっぱり、少しだけいつも隣にいるあの声が恋しくなる。明るくて、他人想いで、面白いことが大好きな、あの声が。
彼女は踵を返して、ホテルへ戻る道を歩く。
今度来る時は、誘ってみるのも良いかもしれない。そんな風に思いついた足取りはとても軽かった。




