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GAME  作者: ヤマト
1/1

寂しいひと


「ここは………?」




どこかの学校?


突然現れた、廊下の光景に、僕は動揺する。

ここはどこだ?何が起こった?

家で何気ない日常を、いつも通り、ベッドでスマホを触りながら、ごろごろ過ごしていた。そして、そのまま寝てしまったようだった。これはきっと夢の中なのだろう。きっとそうだ。



「あのー。」



後ろからの声に、僕は肩をビクンと震わせ、急いで振り返る。そこには、女子生徒がいた。金髪の、それでいてどこかお淑やかさを感じさせる風貌の、優しそうな女の子だ。僕の反応にビックリしたのか、彼女も肩を震わせて、後退る。僕は、少し罪悪感を感じて、声をかける。



「あの、ここは学校ですよね?」



とりあえず、見た感じ学校の廊下のようだが、薄暗くいまいちどんな場所か把握できない。もしかすると、この女子生徒はこの学校の生徒なのかもしれない。いち早く抜け出すために、彼女から色々聞き出してみよう。



「それが、家にいたら急にこの場所に。私、暗くて、怖くて、どうしたらいいか分からなくて。そしたら、目の前にあなたが現れたから………」



なるほど、どうやら彼女も僕と同じく何らかの現象によって、この場所へ迷い込んでしまったようだ。それならば、話は早い。


「俺も同じです。もしよければ、協力してこの場所を抜け出しませんか?」


「え、えぇ。ぜひ。」


彼女は僕の近くに歩み寄る。彼女は、少し安心したかのように胸をほっと撫で下ろしている様子だった。


「それじゃあ、とりあえず出口を探して進みましょうか。」


僕は彼女に提案する。


「えぇ、そうしましょう。」


彼女は同意して、僕と一緒に歩みを進める。しかし、しばらくした後彼女の足が止まる。


「………?どうしました?」


「あの、本当に初対面で申し訳ないんですけど、この場所すごく怖くて、どうか手を繋いでいただけませんか?」


彼女の提案に、僕は少しドギマギしたが、確かにそうだな、と思った。薄暗く初めてのこの場所で、不安にならない方がおかしいのだ。


「わかりました。」


僕は彼女の手を引っ張る。少しばかり、彼女と僕の頬が赤くなる。それでも、その高揚でさえこの不可思議な出来事の恐怖を和らげるには、ちょうどいいくらいだった。








しばらく廊下を歩き、そろそろ何かが見えてきていいだろうと考えていたそのときだった。


コン……コン……と、廊下奥から音がする。






一体なんだと目を凝らしてよく見てみると、

どうやら、人の様だった。こちらに向かって、歩いて来ていた。少しばかり、他の人がいたと言う安心感と、危ない人物だったらどうしようと言う不安感で胸が高鳴る。しかし、よくよく見てみるとそれはあまりにも奇怪な光景であった。それは、人ではなかったのだ。


「えっ?」


人の姿がない。ただ靴だけがこちらにコツ、コツと音を立てて迫ってきていたのだ。




「う、うわぁぁぁぁぁーーー!!!!」




僕は声を上げて、後退る。腰を抜かしてしまいそうになるが、後ろにいる彼女のために何とか平静を保ち、ぐっと倒れそうになるのを堪える。



「な、なに?どうかした?」



彼女も目の前の光景を見て、きゃあぁ!と悲鳴を上げる。しかし、僕は彼女の手をギュッと握り、静かに距離をとる様に促した。こう言うのは、逃げたら追いかけてくる。何となく、そんな予感がした。視線を外さない様にゆっくりと距離をとる。幸い靴は、それほどそれほど早いスピードで歩いていないので、何とか少しずつ距離をとることができた。





段々と靴と距離が離れてきて安心したその時だった。






「こんにちは。」




後ろからの声に、僕たちはビクッと体を震わせる。恐る恐る、後ろを振り返ってみると、そこには杖をつき、黒いハットを被った老人がいた。



「ようこそいらっしゃいました。早速で、申し訳ない。ある場所へ、ご案内したいのですが。」



俺は、老人からの唐突な提案に、疑問を浮かべるが、しばらくするとその言葉を咀嚼しだんだん飲み込めて、言葉を返すことができた。



「あ、案内って、どこにですか?」



老人は答える。



「ゲーム会場でございます。」



すると、そんなやり取りをしている内に先ほどの靴が目の前にやってきた。



「うわぁ!?」 「きゃあっ!?」



しかし、僕たちの心配をよそに、靴は僕たちの横を通り過ぎて、老人の元へと駆け寄る。



「やぁやぁ、ミルトン。よく来たね。久しぶりじゃないか。」


老人が手を差し出すと、靴は老人の身体をのぼって、肩の上に乗る。どこか嬉しそうだ。老人は改めてというように、僕たちに向かって言う。


「それでは、会場へ向かいましょう。」










ゲーム会場、と言ってもただの教室であった。なんの変哲もない、ただの教室。だけど、ほんの少し違うのは、外の光景であった。まるで絵画で描かれた様に、月と夜の風景が淡く微睡んでいる。そんな光景をぼうっと眺めている僕らを他所に、老人はトランプをポケットから取り出した。


机と椅子が中央に2対1で向かい合わせに、最初から並べられていた。老人はトランプのカードを取り出して、1枚ずつ配り出した。僕はこれから何をするつもりなのかと、老人に問う。


「あの、僕たちをこんなところまで呼び寄せて、一体何をするつもりなんですか?」


そうすると、老人はこう答えた。


「いやぁ、この年になると寂しいもので、友人が欲しくなるのですよ。」


そう言って、老人は笑いながら、トランプを配り終えた。机にはそれぞれ、均等な枚数のトランプが並ぶ。


「さぁ、始めましょうか。」


その老人の掛け声と共に、老人はカードを1枚場に出した。


すると、とても不可思議な出来事がおこる。


窓の外の景色が巨大化したカードに覆い尽くされ、まるでトランプのカードが城壁となって立ち塞がっているようだった。


「スペードの12。お二人さん、このカードから連想するものは何かな?」


僕と彼女が唖然としていると、老人は閃いたというように指を上に立てて、僕たちに言う。


「そうでした。まずは見本をお見せしましょう。」


そうすると、老人はこんな言葉を言った。


『ピラミッド』


そうすると、外には砂嵐が吹き荒れたかと思うと、その砂嵐が晴れた先には、広大な砂漠とピラミッドが現れた。


「どうでございましょう?」


僕たちはふたたび唖然として、開いた方が塞がらなくなる。僕より先に彼女が老人にしつもんする。


「あ、あの!どうなっているんですか?」


至極真っ当な質問だ。信じられない。信じられるわけがない。そもそもこの場所、こんな不可思議な世界に誘い込まれた事自体、夢である可能性の方が高いのだ。誘拐されたり、迷い込んだり、もちろんその可能性もなくはないが、しかしながら少なくとも僕と彼女は家で何気ない時間を過ごしていたところを急にこんな世界に(いざな)われた。あまりにも理解が追いつかない。


「別にどうと言うこともございません。トランプから連想された光景がそのまま窓に映し出されるのでございます。」


どうということもないはずがないのだが、しかしあまりにも平然とした老人の態度に思わずそれが自然であるかのように感じてしまう。僕は首を強く振り、また老人に強く問いかけた。


「先ほどの意思を持って歩く靴や、異質な世界、そして今起こった不可思議な現象。それが何と言うこともないはずが無い。しっかりと説明してください。一体何のために僕たちはこの世界に招かれ、こんなことをさせられているのか。そうでなければ、到底納得できません。」



老人はフム、というように白髭を撫でながら、言った。


「だからさっき、言ったじゃ無いですか。友人が欲しくなる。その暇つぶしだと。」



全くもって理屈の通っていない老人の言葉に僕は少しカチンと頭に来て、椅子から立ち上がった。しかし、彼女が制止するように手を僕の前に出した。そして、思いもよらない言葉を発し始めた。


「私は、あなたの友人。その暇つぶしにぜひ、加わらせてください。」


「ふむ、そうでしょう。」


老人は嬉しそうに頷く。


僕は彼女が言ったことの理解ができず、額に汗が浮かぶ。意味がわからない。さっきまでの彼女は僕と何ら変わらず老人とこの世界に対して少なくとも疑問を抱えていたはずだ。それが目の前の老人の一言によって、一瞬で彼女は意見を覆した。それどころか、まるでその目は何処か虚ろで何も映していないではないか。


僕はドンッ!と机を強く叩き、老人に言う。


「おい!いい加減にしろよ!!僕らを元の世界に返せ!!」


老人はにこやかな笑顔で返答する。


「帰すわけないじゃないですか。君たちはようやくこの世界に呼び寄せたわたしの『友人』なのだから。」


信じられないほど平坦な声音で答えられたそれに、僕はとうとうキレた。


「僕があなたの友人だというのなら、今すぐこの世界から返してください。自分の思い通りに操れる意志のない人形、それを『友人』とは呼びません。」


老人は眉をひくつかせ、初めて感情を露わにしたように少し語気を強くして言った。


「それはわたしが決めることです。」


「いいや、違います。僕たちが決めることだ。」


僕はトランプを前に出して、宣言した。


「僕の部屋。」


すると、トランプが拡大化された後、外の光景は僕の部屋へと変貌する。僕は窓へと歩いて行き、老人にいう。


「一緒に遊びましょう。友人ってのが、どういうものなのか教えてあげます。さぁ、来てください。」


老人は目を見開き、それからゆっくりと立ち上がり窓のそばに立ち寄る。


「そのような提言をなされた方は初めてです。」


「…………………」


僕は窓の外にジャンプで飛び越して、老人に手を貸す。老人は僕の手を取り窓の外へと、僕の部屋へと移る。


僕は、まだ部屋にいる彼女も手招きして、手を取り、引っ張る。僕の部屋に入ると、彼女はふと目を覚ましたように、ハッとして俺の方に向き直る。


「あ、あの、ここは一体?」


「僕の部屋です。あのトランプの不可思議な現象を利用して、僕の部屋を呼び寄せました。」


彼女は分かったような、分かっていないような表情をして、それから老人の方を見て明らかに嫌悪の表情を示し離れて、僕の後ろに隠れる。


「いやはや、嫌われてしまいましたな。」


老人はホホホッと、愉快そうに笑う。


「これまで呼び寄せた人間は、そのあとどうなったんですか?」


「友人となって頂き、生涯をともに過ごしていただきましたよ。」


ニコニコと笑う老人の目の奥をじっと見つめて、僕は彼に言う。


「………寂しいんだろ。」


老人は顔を前に向けたまま、視線だけをこちらにギョロッと向ける。俺は彼に向かって提案をする。


「僕が本物の友達になってやる。その代わり、お前が満足したら僕たちをこの世界から返せ。」


「全く状況が飲み込めていらっしゃらない様子。もはや、あなたがたの意思は関係ないのですよ。いつでも、あなた方はわたしの思い通り。操り人形。私の『お友達』です。この世界に招かれた時点で、あなた方に選択肢などないのですよ。」


彼女は頬に汗を浮かべる。そして隙を見つつジリジリと足を動かして、バッと走りだし僕の部屋のドアに手をかけた。しかし、ドアはギシギシと音を立てるばかりで開かず、彼女の顔は青ざめる。


「………この世界は完全に隔絶されています。この部屋も、彼の部屋を模した全く異なる空間です。希望を抱かせて申し訳ありませんが、もはやあなたがたに逃げ場などないのです。」


「いいや、必ず見つけ出す。」


「ないものをどう見つけ出すと?」


「あんたの心のなかだ。」


「ホホホッ、面白いことをいいなさる。」


「僕は本気だぜ。何故なら、お前はただの寂しさを抱えた、幼い子どもだ。」


「さっきから、言葉が過ぎますな。いつでも操れるということをお忘れで?」


「もしそうなら出会い頭や、この世界にきた瞬間にそうしてればよかったんだ。そうしないのは、お前が俺たちに何か思うことがあるから。そうだろう?期待してるんだ。お前の埋められない心の隙間を僕たちが埋めてみせる。それが僕たちがこの世界に来た、理由。さぁ、やろうぜ。GAMEの始まりだ。」




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