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終章

「脆弱な人間どもが…余に楯突くか…」


 神はパティーシアとミカエルを見下ろす。


「しかし…どうしますか?『サタン』、あいつにフレーミアやファイアーボールのような

 小技は効かないと思われます、だからと言って詠唱の長い大技をやろうとすれば

 その隙をやられてしまう…」


 パティーシアはそんなミカエルの言葉を聞いてふっと笑みを零した。


「力は同格でも産まれた年月の差ってやつかしら?

 まだ青いわね、ミカエル、答えならあそこに転がってるわ」


 そう言ってパティーシアはロンドの亡骸を指差した。


 その行動を察したようにミカエルは頷く。


「…成る程、考えもしなかったですが…確かに、その方法しかなさそうですね」


「あいつに出来て、私たちに出来ないわけないわ、ま、小技の方から試して見ましょうか」


「…わかりました」


 そう言うとミカエルは神を見上げる。


「こそこそとした話し合いは終わりか?では…殺させてもらうぞ、人間ども」


「させねぇ!」


 バーギルが飛ぶ。


 神はその斬撃を避け、パティーシアたちの方を見直す。


 そこにミカエルの姿が無かった。


「…どこへ消えた?」


「ここです」


 ミカエルは神の後ろに回り込む。


 神はミカエルの言葉に反応して後ろを振り向く。


「余所見していいのかしら?」


 パティーシアが掌を神へ突き出す。


 その掌から巨大な閃光が奔った。





 ガギィイイイイイイイイイイイイン!!





 神に当たる直前、神の障壁によって閃光は弾かれる。


「脆弱な人間が…詠唱を破棄した…だと?」


 神はパティーシアの方へと振り返る。


 今度はミカエルの掌からマグマの弾が神へと発射された。


「ちぃい!!」


 神が6枚の翼を丸め、マグマを弾く。


「貴様も詠唱破棄か!」


 神はミカエルに向かって右手を振るう。


 風の刃がミカエルに向かい、情け容赦なく飛んだ。


「余所見…してんじゃねぇよ!」


 バーギルが割り込み、風の刃を吸収する。


「あなたは自分の心配をしなさい、コモナー、その剣、神の魔法は吸収出来ても、

 私たちのは出来ないのでしょう?巻き添えを食いますよ!」


 ミカエルが右手を上げる。


 瞬間、神を中心に大爆発が起こった。




「うぉおおおおお?」


 爆発の衝撃で吹き飛ぶバーギル。


 がしっと途中で座標転移したパティーシアに受け止められる。


「しっかりしなさい、バーギル、

 あんたにはその変な剣であいつに止め刺すって役割があるんですから」


「…止め…?てめぇ、封印がどうとか…」


「そんな昔のこと、忘れたわね、倒せるんなら、倒したほうがいい、そう判断しただけよ」


 パティーシアは髪をかき上げながら言った。


 その言葉にバーギルは笑みが止まらなくなりそうだった。


「…く、くくく、よっしゃ、あのクソの魔法は全部俺が吸い込んでやらあ!

 てめえら攻撃に専念しろぉ!」


 爆発した中心部から八方に電撃が飛ぶ。


 バーギルはパティーシアに当たりそうになる電撃を封神の剱で吸収する。


 ミカエルの右手から雷が、パティーシアの左手から氷の刃が放たれた。


 神は左右の手で障壁を発生させそれぞれをガードする。


 と、同時に翼から黒い羽先を3人目掛けて発射した。


「全部纏めて消し去ってやらぁ!」


 バーギルは剣を握る手に力を込める。


 …が、パティーシアがそれを制した。


「あいつの魔法は出来るだけ蓄えなさい、その剣の耐えうる許容範囲、ギリギリまで」


 ミカエルとパティーシアは同時に両手を前に出す。


 虚無の空間が現れ、羽先を根こそぎ吸収した。


「コモナー!その剣で受け取ってください!」


 虚無の空間が二つ、今度はバーギルの前に現れる。


 そこから一つとなった巨大な黒い塊が出てきた。


 バーギルは封神の剱を塊に向ける。


 剱は塊を飲み込むように吸収した。


 神は激昂した。


「下等な人間が!この余に、神である余に仇をなすか!!?」


 ミカエルは神の真下に座標転移しながら落雷を落とす。


「あなたは神じゃありません、悪魔です」


 次にパティーシアが神の背後へ座標移動しながら風の刃で攻撃する。


「悪魔は淘汰されるものなのよ」


 2人の攻撃は肉体的にはそんなに効いていなかったが精神的にはかなり効いていた。


「黙れ…黙れ黙れ黙れ!下等種族どもめ!!」


 神を中心に黒い閃光が解き放たれる。


 バーギルはその瞬間に神に斬り込んだ。


「てめぇが堅いのはその妙な『壁』のせいだろ!?取ってやるよ、その邪魔なもんをよぉ!」


 宝玉が光輝く。


 神の周囲に展開された障壁が封神の剱に吸い込まれていく。


「余の障壁が・・・!」


 神がそう言った瞬間、二つの雷撃が神を直撃した。


「が…は…!」


 神の動きが瞬間、止まった。


「バーギル!」


「おおおおおおおおおおおおお!!」


 バーギルが動く。


 神の残された防御方法、翼を狙って。


 一瞬に6つの斬撃を加える。


 神の翼は根元から6枚、引き裂かれた。


「人間ども!人間ども!人間どもがぁああああああああ!!!」


 神は手当たり次第に魔法を乱打した。


 もう神の目には何も映っていない。


 あるのはちっぽけだと思っていた3人の人間の存在に対する憎しみ。


 そして、その3人に対する恐怖だった。


 神の周りに4つの光の柱が作られる。


 柱は線で結ばれ神をその中へと閉じ込めた。


「『サタン』!コモナー!」


 ミカエルの作った監獄と言葉を合図にパティーシアはバーギルの所へと座標転移。


 そして剣の柄をバーギルの手の上から握る。


「パティーシア…」


「余所見しない!これからこの剣に蓄えられた魔力に私の魔力を上乗せするわ、

 そしたら目もくれず、あいつに突っ込むわよ!」


 パティーシアの全身が光る。


 呼応するかのように封神の剱が輝きだした。


「行くわよ!」


「おおおおおおおおおおお!!」


 ドンッ!という音と共にパティーシアとバーギルは神に突っ込んだ。


「ミカエル!『光の枷』を解きなさい!」


 パティーシアの叫びとほぼ同時に監獄が解除される。


 その1/100秒後、封神の剱が神の胸に突き刺さった。







「ガ……ガガガアガガガガッガガガガッガガ…アアアアアアアアアアアアアアアアアア!」


 神は絶叫する。


 刺さった剣を抜こうともがく。


 だが、もがけばもがく程に、剣は食い込んでいった。


「貧相な神様ごっこはこれで終いよ、さようなら、神様」


 パティーシアが手に力を込める。


「消え去れぇええええええええええええ!!」


 バーギルは剣を下に薙ぎ降ろした。


 神は胸から下が真っ二つに裂け、体中から黒い蒸気が漏れる。


「余が…消え…る…!?余…の体が…ぁあああ」


 神はその言葉を残し黒い蒸気となりこの世から消え去った。









「終わった…のか…?」


 バーギルは呟く。


「どうやら、そのようですね」


 ミカエルが2人に近づきながらそう言った。


「まだ、終わりじゃないわ」


 パティーシアが言う。


「まさか…まだ…?」


 そのミカエルの言葉にパティーシアはゆっくり首を横に振った。


「ううん、あの神との戦いは終わった、けど、居るでしょ?

 私たちにこんな苦労をさせた張本人が」


 その言葉にミカエルがあっという表情をした。


「バークレイ様…いや、バークレイのことですね」


「そういうこと、全てを終わらせに行きましょ」


「悪いが俺はここまでだ」


 バーギルがうつらうつらとした表情で言った。


「バーギル?」


「どうやらこいつを一度使うと1年くらい冬眠しなきゃいけない副作用があるらしくてな、

 実を言うともう眠い…」


 そう言うとバーギルの『足場』が消える。


 慌ててバーギルを抱きかかえるパティーシア。


「だから…あと最低1年…は、死ぬんじゃねえぞ…パティーシア…決着はま、だ…ついて…」


 そのままバーギルは深い眠りに落ちた。


 パティーシアはバーギルの頭をそっと撫でると、


「わかったわよ、貴方との決着がつくその日まで私は生き続けるわ」


 そう言って、寝ているバーギルのオデコに軽くキスをした。







 地上に戻ったパティーシアたちはバーギルをクレシスたちに託し、


 バークレイの元へと飛んだ。









 -ルシファー本部作戦参謀室-


 パティーシアとミカエルにとってはルシファーの防衛網など破れた虫網みたいなものだった。


 2人を容易くバークレイの元へと運ぶ。


「全てに決着をつけに来たわ、バークレイ」


「これで終わりです」


 2人の言葉にバークレイは深く椅子に座ったまま笑った。


「神までも敗れる…か、作るんじゃなかったよ、貴様らの様な欠陥品はな…」


 そう言うとバークレイは懐に持っていたナイフで自らの首を掻っ切った。


 この日、世界最大のウィザード組織、ルシファーは崩壊を向かえた。











「これから、どうするの?」


 パティーシアの問いにミカエルは微笑みで応える。


「残された時間、世界中を旅しようと思っています」


 ミカエルは両手を広げて空を見た。


「この広い広い世界を今度は私の目で見て、手で触れて、感じていきたい」


「そう」


 パティーシアも空を見て微笑んだ。


「あなたはどうするんですか?」


 ミカエルの言葉にパティーシアは微笑みが増す。


「私?もちろん-----」


 その言葉にミカエルは一言、「羨ましいです」と答え、微笑んだ。


 風が2人の間を吹き抜けて、時代は新しく移り変わる。











 道を探すわ、ウィザードとコモナーが手に手を取り合える、そんな道を…ね。









 ~完~

どうも、はりねらいです。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

初めてのオリジナル、長編(短いですが^^;)ということで

かなりグダグダですが少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。


では、また次回作があればその時、お会いしましょうノシ

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