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アラフォー幼女は異世界で大魔女を目指します  作者: 梅丸みかん
第一章 塔の上から見た異世界

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46, 呪いの人形

 夕食を終えて部屋に戻ってきたカーラは、チェストの上に目を向けるとそこに置いたはずの人形が消えていた。


「あら? 確かにここに座らせていたと思うんだけど……」

 首を傾げるカーラ。


 不思議に思いながら部屋を見回すと、人形はベッドのそばにある白い椅子の上にちょこんと座っていた。


「わたくし、こんな所に置いたかしら? 確かにチェストの上に置いたと思ったんだけど」

 カーラは不思議な気持ちで椅子の上にある人形を眺めた。


「きっと、ぼーっとしていたんだわ。今日は町に行ってちょっと疲れちゃったし。早く寝たほうがいいわね」

 思い違いだと自分に言い聞かせ、カーラは人形を再びチェストの上に戻してからベッドに入った。



 だが、翌朝目を覚ますと人形が再び椅子の上に座っていた。


「えっ? どうして? 昨日は確かにチェストの上に置いたはず……」

(それとも私の勘違い? あまりに眠くて置いたつもりだっただけ? でも、二度もそんなことある?)


 じっと人形を見つめるカーラ。


 そのときだった。

 カーラはふいに、人形が自分を見つめ返したような気がした。

「ひぃぃっ!」


(いっ、今、この人形、私を見た? ううん、そんなはずない。人形と目が合うなんて。だって、普通はどの人形も目は開いているけど、何も見ていないものだもの)


 それでも、人形に得も言われぬ違和感を感じたカーラは、コレクション部屋に移動させることにした。


 だというのに……


 その夜も、翌朝も、いつの間にか人形はカーラの部屋の白い椅子に座っていた。


(おかしい……おかしいわ。どうして勝手に移動しているの……? お父様に相談……ああ、お父様は今海外に行ってらっしゃるんだわ。帰ってくるのは一月後。ならばお母様に相談してみよう」


 カーラは母親に人形が勝手に移動していることを相談すると、母親は「もしかして呪われているのかしら?」と言って解呪師を呼んでくれた。


 だが、解呪師は人形は呪われてはいないと言う。


(そんな……そんなはずないわ。だったらどうしていつの間にか移動しているの?)


 カーラは地下室に人形を閉じ込め鍵をかけるように使用人に指示した。


 それでも……

 その夜も、人形はカーラの部屋の白い椅子の上に座っていた。

 別の場所に移動させていたはずの人形が、何も言わず、何も音を立てず、朝になると椅子に座っている。

 カーラは人形の視線が、日に日に鋭く感じられた。その瞳はまるで意思を持って何かを訴えるように……

「お母様……人形……あの人形何とかして……」

 カーラは母親に涙ながらにそう言った。


「まぁ、そんなに震えて……ならばその人形を手放せばいいわ。こんなに綺麗な人形なら商会でもきっと高く買い取ってくれるに違いないもの」

 母親の提案にカーラは直ぐに頷いた。


(これできっと大丈夫。とても綺麗な人形だったけど、呪いの人形なんて怖くて近くに置いておけないわ。解呪師は呪われていないっていったけど、そんなはずない。あの解呪師は能力が弱かったのよ。全く、あの子もなんてものを私に売りつけたのかしら?)


 自分が強引にお金を渡して奪ったくせにカーラは本気でそう思っていた。


 母親がメイドに指示して人形を持ち出させると、カーラは人形が自分の手を離れたことに安心した。


(これでもう大丈夫……)


 それなのに……


 数日後、人形はまたしてもカーラの部屋の白い椅子に座っていたのだった。


「ひぃぃぃっ! いやぁっ!」

 カーラの叫び声で駆けつけてくる使用人たち。


「どうしたの? カーラ! 何があったの?」

 母親もその騒ぎに駆けつけた。


「お母様! 人形がっ! またわたくしの部屋に……」

 カーラは泣きながら母親に訴えた。


「そんな……なんなのこの人形? やっぱり呪われている? あの解呪師はインチキだったと言うの? もっと高名な者を呼びましょう」

 だが、他の解呪師に頼んでもその人形は呪われてはいないと言う。


「仕方がないわ。燃やしてしまいましょう」

 母親は、従者に命じて人形を焼却場に持っていくように指示した。


 従者は焼却場まで行くと、ゴウゴウと燃え盛る火の中に人形を投げ入れた。

 だが、次の日の朝カーラが目覚めると、人形はカーラの部屋の白い椅子に何事もなく座っていたのだった。

「いやぁぁぁぁっっ!!」

 邸中に響き渡るカーラの叫び声。

 カーラの母親や使用人たちがカーラの部屋に再び駆けつけた。


「目から……水のようなものが流れている……涙?」

 椅子に座る人形を目にした母親が驚きに目を見張った。

 その声に反応して、人形を見たカーラの背筋に冷たいものが走る。


 母親はとうとう、真顔で尋ねた。

「カーラ、もしかして無理やり奪ったんじゃないわよね」

「……そんなことないわ、ちゃんとたくさんお金を渡したもの」

 カーラの答えを聞いた母親は溜息を吐いた。


 領主の娘から人形が欲しいと言われれば、いやでも渡すしかないだろう。母親はやっとこの時、娘を甘やかしすぎたことに気づいた。


「とにかく、この人形は持ち主に返しましょう」

 母親は従者に命じて人形の持ち主を探させることにしたのだった。



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