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アラフォー幼女は異世界で大魔女を目指します  作者: 梅丸みかん
第一章 塔の上から見た異世界

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21, 師匠よりも

 ファンシー全開のあの部屋に戻ると、外はすっかり日が落ちていて、室内もぼんやりと薄暗い。

「ミカ、入り口の壁を軽く三回叩くのじゃ」


「壁を……三回? なにそれ、呪文? それとも隠し通路でも開くの?」

「いいからやってみるのじゃ。暗くて何も見えんじゃろう」

 よくわからないまま、扉の横の壁をトントントンと叩く。


 すると――

 パッと天井の照明が灯った。


「えっ? 今ので電気ついたの? そんな簡単に……昨日、あんなに悩んだのに……」

 思わず呆然と見上げる私。魔法でも科学でもなく、壁トントン方式とは。便利だけど説明書が欲しい。


「さてと、じゃあ風呂にでも入るとするかの。疲れた体にはやっぱり湯につかるのが一番じゃ」

「ん? ちょっと待って。師匠もお風呂に入るの? 人形なのに?」


「当たり前じゃ。いくら人形といえども魔力を使えば疲れるのじゃ。特に人形の体は魔力を使わなければ動けぬのじゃ」

 そんなものなの?

 なんだか納得したような……納得できないような……


 なんか釈然としないけど、でもまあ、ここは元々師匠の家だし、共同生活ならお風呂くらい一緒に入ってもいい……のか?

 結局、私は師匠と一緒に、お風呂タイムに突入した。


 脱衣所に入った途端、師匠は服をポイポイポイッ!

 と空中に投げ飛ばすように脱ぎ、お風呂へ突入。

 しかもボタンにも触れてないのに、服が勝手に外れていく。


 私は思わずその様子に見入ってしまった。


「ミカ、何をぽけーっとしとる。早く来い」

「……はいはい」

 どうやら人形ボディでも、魔法があれば生活に一切不自由はないらしい。

 なんなら人間よりハイテクだ。


 私も慌てて服を脱いで後を追い、昨日も入ったあの滝のシャワーゾーンへ。

 すると師匠は両手を広げ、顔を上に向けて堂々とシャワー(滝)を浴びていた。


「どうじゃ、ミカ。このシャワー、ただのお湯じゃないぞ。浄化の魔法付きじゃ。浴びるだけで全身ピカピカじゃ!」

「……そうだったんだ……昨日なんでサッパリしたのか不思議だったけど、浄化魔法のおかげだったのね」

 滝、恐るべし。


「でも師匠、このお湯ずっと流しっぱなしだけど、止まったりしないの?」

「問題ない。これは鉱泉から引いたお湯を循環させとる。地表から吸収してまた鉱泉へ戻す。エコじゃろ?」


「お、おぉ……魔法、便利すぎる……!」

「妾は地圏の大魔女じゃからな。土も石も、温泉のルートだってお手の物じゃ」

 そうだった。地圏の大魔女……地そのものを操る力を有する特化型の魔法使い。


 砂も岩もマグマも、地面に含まれるすべてが支配対象。

 まさに“地の支配者”。

 なるほど、大魔女と言われるわけだ。


「やっぱり師匠って、すごい人なんだねぇ……今は人形だけど」

 お湯につかりながら、しみじみと尊敬モードに入る私。


 すると――

「じゃが、ミカはそれ以上のことができるようになるかもしれんぞ。何てったって、未来の気圏の大魔女じゃからな!」


「またその呼び方……。ねぇ師匠、やっぱり“風の大魔女”とかの方が語感よくない?」

「ふむ、じゃが、昔から“気圏の大魔女”と呼ばれておるのじゃ。まあ、妾が知っている限りじゃここ千年ほど、そう呼ばれるものはいなかったから、知らないものも多いじゃろうが、文献には残っているから知っているものは知っていると思うぞ」


「……じゃあ、知らない人にだけ“風の大魔女”で通そう。PRって大事だから!」

「ふむ、まあそれはちゃんと魔法が使えるようになってからじゃな」


「……はい、仰るとおりでございます」

 そうだった。私はやっと魔力制御ができるようになったばかりだ。


 でも、さっきの師匠の言葉――「もっとすごいことができるかも」ってやつ――あれが気になって仕方ない。

「ねえ師匠、本当に私ってそんなすごいことができるの?」


「できるとも。気圏とは空気すべてを意味する。つまり、世界中の空気を操る力を持つということじゃ」

「……えっ、空気……って、水の中にもあるし、宇宙の手前まであるよね……?」


「そうじゃ。空気があるところなら、妾のように地の支配ではなく、空間そのものを制御できる可能性がある。まさに万能じゃな」


 私はようやく、気圏魔法の本当のスゴさに気づき始めた。


 この力が使いこなせるようになったら――

 この異世界で、私は“ただの迷子”ではなくなるのかもしれない。


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