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奪還の村と新たな進軍

訓練場の脱出ルートには、私が作った名剣を手にした兵士たちがすでに集結していた。エマさんが先頭に立ち、私とテオルフさんも後ろを付いていくように、洞窟のような暗い道を慎重に進んでいく。


やがて、通路の奥に虹色の光を放つ結界が浮かび上がり、道をふさぐようにたたずんでいるのが見えた。私はエマさんに尋ねる。


「これは……?」


「私が張った結界よ。この先は村の森へと通じているはず」とエマさんが静かに応え、結界のそばに立って兵士たちを振り返る。「さあ、皆さん続いてください」


兵士たちは互いに目配せを交わしながら、足音を殺し、一歩ずつ結界をくぐっていった。


結界を抜けた瞬間、私たちは鬱蒼と茂る村の森の一角に姿を現した。しかし、ほっとする間もなく、巡回中の敵兵とばったり鉢合わせしてしまう。敵兵が声を上げようとするのを見て、エマさんが咄嗟に防音の結界を張り、森の中に静寂が戻った。


「助かったわ、エマさん! ありがとう」


するとテオロフが素早く前に出て敵兵を押さえつけ、低い声で威圧するように問いかける。


「指揮官の居場所を言え。逆らわぬほうが賢明だぞ」


敵兵は青ざめた顔で村の中央を指し示し、か細い声で答えた。「村の噴水がある大きな建物に……指揮官と捕らえられた村長、それに……我が兵たちが詰めている……」


「村の中央ね……了解!」私は兵士たちを振り返り、静かに指示を出した。


「皆、あの建物を目指しましょう。戦いを長引かせるのは避けたいわ。一気に突入するわよ!」


兵士たちは剣を構え、静かに隊列を整えると、私を先頭に建物へと向かって無言で進軍を開始した。目的の建物に到着するや否や、全員で一斉に突入し、指揮官のいる部屋を制圧する。意外なことに、敵の指揮官はほとんど抵抗する間もなく捕らえられ、建物の占拠は予想以上にあっけなく完了した。


「え? こんなに簡単に……? なんか緊張していたのが嘘みたいね」と私は思わず小さくつぶやく。


その時、解放された村長が深々と頭を下げ、声を震わせながら感謝の言葉を述べた。


「皆様のおかげで、私たちの村は救われました。キール王国の兵士たちは、私たちを奴隷にすると脅しておりましたので、このように無事解放される日が来るとは思いませんでした……心から感謝申し上げます」


周囲にいた村人や兵士たちも、次々と「ありがとう」「本当に感謝します」と頭を下げ、村長に続いて礼を述べる。その光景に少し照れくささを感じつつも、私は感謝の気持ちに応えるようにしっかりと頷いた。


指揮官の捕縛が無事に済んだところで、私は周囲を見渡し、次の作戦を考える。


「さて、次はこの村に潜んでいる残りのキール軍の兵士たちに、『指揮官を捕らえた』って情報を流して、降伏させないといけないわね。何か村全体に知らせる手段があれば早いんだけど……」


私がそう言うと、隣にいた村長が何か助けになればと思ったのか、慌てて答える。


「ええと……村にはかつて祭りの時などに使っていた伝声筒があったのですが、申し訳ありません、今は壊れてしまっていまして……」


少し申し訳なさそうに村長が頭を下げる。どうしたものかと考えていると、テオロフさんが自信ありげな表情で口を開いた。


「伝声筒なら心配いらんぞ。攻撃魔法の応用で、声を大きくする魔法があるんじゃ」


テオロフさんが得意げに言うと、周りの兵士たちは「さすが、テオロフさんだ!」と彼を称賛の眼差しで見つめる。私はテオロフさんに一礼してから、村中に響き渡るように声を張り上げる準備をした。


「それじゃあ、テオロフさん、お願い!」


テオロフさんが魔法の詠唱を始めると、私の声が大きくなり、村中に響き渡る。


「あ、あ、テスト、テスト。すごいわねこの魔法。よし! この村は、私たちガリレア王国が奪い返したわ! キール軍の残りの兵士は、直ちに降伏しなさい! これ以上の戦闘は無意味よ!」


私の声は魔法の力で村中に響き渡り、あたりは一瞬、静まり返った。すると、森の中や村の建物から、キール軍の兵士たちが次々と姿を現し、手を上げて降伏の意思を示しながら私たちのもとへ集まってきた。顔には疲れや驚きが浮かび、あきらめたように静かに整列していく彼らの姿に、安堵の気持ちが込み上げる。


「全員、目隠しをさせてください」


降伏した兵士たちを目隠しで拘束し、後ろ手に縛ってから、私は村にいた自軍の兵士たちに、さらに続けて指示を出した。


「彼らをガリレア王国の牢獄に送り届けてほしいの。私たちが来た、森の奥にある脱出ルートを戻れば王国に繋がっているから、護送をお願いできるかしら?」


村で捕らえられていたガリレア王国の兵士たちは頷き、キール軍の捕虜たちを誘導しながら、静かに脱出ルートへと向かって進み始めた。


見送りを終えた私は周囲の状況を確認する。


「よしっ! 村にいた自軍の兵士も半分くらい加わってくれて、戦力がぐんと増えたわね。テオロフさん、次に向かう街への脱出ルートはどこにあるか分かりますか?」


テオロフさんが地図を取り出し、指差しながら説明してくれる。「この村の反対側にある森の中、少し進んだ先に古い井戸があるんじゃが、そこが次の街へ続く脱出ルートだ。時間を計算しても、昼ごろに出発すれば問題なく到着できるはずじゃ」


その情報に、私はうなずき、仲間たちに伝える。「昼までに出発準備を整えて、次の街へ進軍するわね!」


私がそう告げると、そばにいた村長が申し出てくれる。「どうぞ集会所をご自由にお使いください。食事もこちらで手配いたしますので、どうか少しでもお休みください」


村長の厚意に、私たちは心から感謝の気持ちを伝え、兵士たちを集会所へと向かわせた。村長の指示で、集会所には手早く温かいスープやパンが用意され、兵士たちが集まり次第、次々と食事が配られていく。


皆、よほど疲れていたのだろう。食事を終えた兵士たちはすぐに深い眠りに落ちた。私も目を閉じると、瞬く間に眠りについた。


そして、夜が明ける頃、私たちは次の街への進軍準備を整えていた。

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