ケロベロスのハナちゃんの帰還
すっかり仲良しスケルトンマスターのタロウとケロベロスのハナちゃん。
ハナちゃんは名前だと性別がいまいちわからなかったけど、飼い主のゾナ様はハナちゃんはケロベロスの女の子だって言ってた。
飼い主に似ず、骨泥棒以外は問題行動を起こさないどころか、アンデットモンスターになってしまったタロウの傍で村のみんなの骨を埋葬するお手伝いを覚えてくれたので、村に少し清らかさと風景の改善がなされたのだった。
飼い主のゾナ様は聖職者失格な人格なのに、飼い犬のハナちゃんのなんと優しい心かとタロウは感涙を流しそうになるも、白骨ボディなので涙腺もない。
思えばゾナ様の供養サービス受け損ねてからと言うもの、こんなに魂が打ち震えるほど悲しくなるなんて思ってもみなかった。
「村のみんなを埋葬してくれてありがとなハナちゃん。お礼と言ってはなんだけど、骨身のオイラにゃマッサージくらいしかお返しできないや」
タロウがハナちゃんをモフモフ可愛がってみると、ハナちゃんはお腹を出してごろんごろん。
「オンオンオン♪」
「いやー、ハナちゃん『は』飼い主と違って良い子だなー」
「ハナちゃん『は』ってことは私が良い幽霊じゃないみたいに聞こえますね?」
いつの間にタロウの背後に現れたのか、神出鬼没の低レベル幽霊のゾナ様は気配がほとんどないから気付くの遅れた。
「おや、皮肉を理解できないほどレベルダウンしたのかなゾナ様は?実際、ハナちゃん良い子じゃん」
タロウの骨骨アンサーに深いため息と肩をすくめるポーズをして見せてきたゾナ様。
「へーい、そのハナちゃんの飼い主はこの私ですよー?飼い犬は飼い主に似るって言うじゃないですかー。ハナちゃん良い子、引いてはこのゾナ様も良い子ですよー?」
「元聖職者の幽霊が嘘はいけないと教典に書いてなかったのかな。ゾナ様がハナちゃんに似れば良かったのに」
骨だけのタロウが深いため息のポーズをやり返したので、ゾナ様の株価が急落してハナちゃんの株が高騰したのが傍目にわかるようなはずなのだが、タロウの思いはゾナ様に届かないばかりか、ハナちゃんの送還の原因になってしまった。
「く!これ以上タロウとハナちゃんを一緒に置くと危険です!飼い犬に手を噛まれない内にハウス!」
幽霊のゾナ様が何か印を結ぶとハナちゃんはドロンと煙を残して消えてしまった。
ああ、安らぎのモフモフが無くなるなんて、タロウの心痛はいかばかりか。