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生と死と、あとしつけ

ワンコ好きなので、地獄の番犬ハナちゃんと戯れてみたり。


早く旅立てタロウ・スケルトン!

 ゾナ様の愛犬ケロベルスのハナちゃんは元気な良い子で、結構賢く優しいワンコの一種らしい。


 基本、生き物が苦手なタロウさんでも、白骨ボディを掘り起こしてもらってから小一時間で、ちょっとした芸を覚えさせた。


 芸と言っても難しいことじゃない。


「ほーらハナちゃん待て!待てだからね~・・・・・・はい!取ってこーい!」


 スケルトンマスターなる謎職業のタロウがハナちゃんに教えた芸。


「ワンワンワン!」


 タロウの合図で走り出すハナちゃん。

 

 弧を描いて飛んで行くタロウの左腕の骨。


 それを難なく空中キャッチしたかと思うと咥えてタロウの元まで戻ってくるハナちゃん。


「ワンワンワン!ハッハッハッハ!」


「よーし良い子だ!良い子だからその腕をお兄さんに返してちょうだいね~!ほら、待て!お座り!」


 咥えたものを放したがらないので、この芸の訓練の効率が若干悪い。


 大したもんじゃないが、頭が三つある大型犬にボディパーツを奪われても、直ぐ持って帰って来てもらえるようにするのは大事なことだ。


 飼い主のゾナ様がハイウェイとやらの路肩でヒッチハイクとか言うのをしてる間の、タロウの暇潰しだ。

  

 幽霊にヒッチハイクが可能かどうか興味深い心理実験が進行してるとも思える。


 骨と霊の二人組の旅人に地獄の番犬は移動手段になり得ないらしい。


 その証拠に、ケロベロスのハナちゃんは、タロウが背中に乗ろうと近づくと骨が気になってその場をグルグル回るので、前にも後ろにも動けなくなってしまう。


 あと三つある頭のそれぞれの口元から並々ならぬヨダレがダバーっと出て臭いし不衛生な感じになる。


「ちょいとタロウさんや。うちのハナちゃんに変な芸を覚えさせないでくださいな」


「いやー、暇だったもんで。それでゾナ様の言う『ひっちはいく』って乗り物はゲットできたのかい?」


 タロウが暢気に骸骨をカタカタ言わせてゾナ様の戦果を聴いてみた。


 するとゾナ様はおぼろげな幽霊頭を振って深いため息までした振りをする。


「はー。最近の若いドライバーは死者を悼む気持ちが足りないと思います」


 『わかいどらいばー』が何かピンと来ないタロウだったが、ゾナ様の当てが外れたらしいことは察することができた。


「ゾナ様はお金が絡まない行動の成功率が低いっぽいね。すぐお金の話するところがタロウさんは良くないと思います」


「文無し亡者が偉そうに!」


 言うが早いか幽霊パンチをシュシュシュと放つゾナ様だが、徳も低ければレベルも低い低級幽霊では攻撃手段は皆無に等しかった。


 そしてなんやかんやで日が暮れて、タロウの村にも夜がやってきた。


 村の皆も亡者になっているのかと思いきや、みんな天国に召されたようだ。


 村長の亡骸を地面に一生懸命埋めているケロベロスのハナちゃんは、飼い主に似ないで本当に良い子です。


 

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