愛犬が元気
ワンコが好きなので、ワンコ登場回ですが、微妙にクソババアの影がちらつく美少女幽霊ゾナ様
旅立ちの朝。
スケルトンと幽霊のパーティだと天に召されそうな、そんな素敵な朝。
タロウ・スケルトンことスケルトンマスターの俺が先導する形で、クソババア改め美少女幽霊ゾナと村を出た。
土地勘があったつもりだったが、白骨亡霊になって転がってた時間が残酷にも経ち過ぎたせいで、村の外は王国の再開発計画とやらで、大きく様変わりしてた。
タロウの故郷の村の近くの街道は、駅馬車くらいしか移動手段が無かったはずなのに、今では『ハイウエイ』とか言うでっかくて硬い道を、視たことも無い乗り物が行き交っていた。
ちょっとしたタイムショックを受けたオイラは、旅の仲間のゾナ嬢に今後の進路について相談することにした。
「ゾナ様。哀れな骨の私を導いてください。馬要らずな感じのあの乗り物はどうすれば良いのでしょう?」
「おお、タロウよ。スケルトンマスターとも在ろう貴方を天の理に導くことは、生前の私では容易かったでしょうけども、私も幽霊になってまだ経験が浅いので、貴方も私も生者の道を利用することはかないません」
やった!かわい子ちゃんとおそろい♪とか浮かれる前に、この美少女幽霊ゾナ様の生前の姿は金にうるさいクソババアなので、正直、スケルトンマスターとかじゃなくても嬉しくない。
「とまあ、嘆いても仕方ないので、神の使いたる生き物を召喚しましょう」
「ん?アンデッドモンスターのオイラたちに移動手段があるの?」
「長い間使役してなかったので、今でも契約が生きているかわかりませんが、ものは試し。神の使いのケロベロスを呼び出します。行きますよ!」
「神の使いが死者のモンスターに呼び出せるのかいな?」
タロウが頭蓋骨をカタカタ言わせてあくび交じりに疑問をつぶやいてたら、二人の目の前で小規模な爆煙がドロンと立ち上る。
煙はもうもうと広がるとその中心には頭が三つある大きな犬っぽいのが雄々しく立っていた。
「やりました!地獄の番犬ケロベロスのハナちゃん召喚です!」
「ちょ、ちょま!ちょっと待てよ!地獄の『番犬』だって!?」
「オン!」
いきなりの番犬登場に慌てたのなんのって。
犬ってのは多かれ少なかれ骨が大好き。背筋に嫌な悪寒が走ったタロウの心配は的中。
ハナちゃんがタロウの二の腕の骨にかみついて持って行って、最寄りの木の下に埋めようとしてる。
「あらあら、出会って間もない骨を埋めちゃダメですよハナちゃん」
「何を暢気な!こら!ハナちゃん!待て!骨を返せ!」
相手は地獄の番犬と言う犬種なだけに、ちょっとした物置より大きな犬。
なんとか骨を奪い返そうと頑張ってみたが、揉み合う内にタロウの全身も埋められてしまった。
「こらハナちゃん!余所様のお骨を埋葬するのは、お葬式のあとですよ?」
「ワンワン♪」
ハナちゃんは三つの頭から嬉しそうに元気な泣き声を上げてゾナの魂にすり寄った。
尻尾をちぎれんばかりに振っている姿は実に微笑ましいが、とりあえずタロウの骨一式を掘り起こしてほしかった。