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しかばねになって生まれる恋もあったり

スケルトンな主人公の話を書いてみたくなりました。


村人の初恋は実らないかもですが、なるべく明るい話で続きを不定期で描きます。

春。恋の季節。


今年も野鳥の愛と欲望の鳴き声をのんびり聞き流す我が骨。


どこにでも居るような名も無き村人Aだったオイラ。


勇者に村を紹介して役目が終わったかなと思ってた。


勇者一行は魔王を倒すための長い旅の途中だったそうだ。


勇者様の恋人的な役目だった見目麗しい僧侶の女性に憧れたが、しがない村人Aのオイラには高嶺の花だ。


やがて勇者が魔物の幹部と接触したらしい噂が、オイラの住む村にも届いた。


特に薬草販売か安宿くらいしか取り柄のない村は騒然となった。


村の衆の嫌な予感は的中。魔物の居城と勇者の行きつけの神殿との丁度真ん中にあったオイラの村。


魔王に覚え良くしてもらいたい魔物の幹部の気まぐれシナリオに沿って村ごと焼き払われ、村のみんなと一緒にオイラの姿は村人A男性から屍に変わった。


春の訪れは、村人だった頃の淡い思いを白骨ビジュアルなオイラの魂の真ん中で呼び覚ます。


何度目の春か数えるのに両手両足の指だけじゃ足りなくなった頃。


屍のオイラの前に、少し背の低い老女が花を手向けてくれた。


「魔王に滅ぼされた村の屍よ。どうか安らかに眠ってほしい」


そう言って老女が祈りの手を組むと、大地の神の加護を唱え、私を供養しようとした。


その時だ。


神のイタズラかオイラの屍に生前の姿の半透明の肉体が浮かび上がる。


「う、うう。なんだ?せっかく色んなことに諦めがついて気楽な屍ライフ送っているのに、わざわざ眠りを妨げたのはお前かババア?」


「ババアとは何じゃ!せっかく供養してやろうと思って銀貨20枚の聖水で骨を洗ってやろうと思ったのに、罰当たりな亡者じゃ!」


言うが早いか、老婆の枯れ木の枝のような細い手に握られたそれなりに硬い杖でオイラの骨はポカポカ殴られまくった。


おや?おかしい。心に思っただけなのに、まるで以心伝心の熟年夫婦の亭主のような愚痴がババアの耳朶を打った。


「この廃墟の村の供養第一号がこの様子だと、村全体に魔物の呪いがかかっているかもしれぬ。神殿に戻って聖水の在庫を馬車で取り寄せるべきか」


修行十分な感じの老僧侶の婆さんがぶつくさ言ってるが、その瞳はまだ老いに負けておらず、厳かな中にも優しい心の温もりが宿っていた。


心だけの魂のみのオイラの唯一の財産である白骨屍であるからこそ、心在る者の本音が聞き分けられると言う不思議な現象がある。


普段は、野生動物などがおしっこやフンをする目印になるくらいしか活動内容が無い白骨オイラだが、老僧侶の供養が効いたのか謎の活力が湧いた。


「あ、あの!ババ・・・・・・じゃなかった。僧侶様!若い頃の僧侶様はすごく好きでした!また供養に来てください!待ってます!」


死んで無念の亡者にならねば伝えられない言葉がある。


「この大神官ゾナの供養は次回から聖水代銀貨20枚の有料サービスじゃ!お試し初回分以外の無料奉仕はお断りじゃ!」


「うぐう!昔は美人だった感じ残ってるのに、あの僧侶様がこんな強欲俗物に!返せ!オイラの純情を返せ!」


「口の減らぬ元村人よ!悔しかったら銀貨をしこたま稼ぐが良い。月額銀貨20枚のマンスリーサポートプログラムを紹介してやらぬこともない」


「やっぱクソババアだった!死者から金をむしり取るサポートプログラムの発案者を殴りたい!」


魂で当たって砕けたオイラの恋を、天高く、鳴き声元気な雲雀が笑っているような気がした。

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