表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

脇役

作者: shiro


「え、」


別れたい、という彼の言葉に目を見開いた。

……いや、本当はわかっていた。




「ごめん」

「…………あの子?」

「……うん」

「そっか。しょうがないよね」











わかってたよ。

大好きだから。

誰よりいつも、あなたのことを見ていたし

いつだってあなたのことばかり考えていたから。


だから……あなたが彼女と知り合って嬉しそうにしていることも

いつの間にか、あなたの中に新しい恋が生まれていることも

あなたの中で、私は置いてきぼりになっていることも。


全部全部、知ってた。







困らせたくなくて、

せめて最後くらい彼の中で“面倒な思い出”になりたくなくて、全ての感情の時間を止める。

何も感じないように。このままの表情でいられるように。



「わかったよ。話してくれてありがとう。

………………帰ろっか」



大丈夫。後で泣けばいい。私は。

だから今は。


そう思って立ち上がった矢先、彼から放たれた言葉に心がつまづいた。



「ありがとう。本当にごめん……

でも、なんだか不思議っていうか……僕らはもう、他人に……なったんだね」





無邪気なあなたの声が、心を割る。





あぁ、あなたの人生の中で、私は脇役でしかなかったんだ。

小さくて可憐で、名前まで完璧に可愛いあの子が、輝く笑顔で脳裏に浮かんだ。


もう、彼に名前を呼ばれるのは、あの綺麗な手に抱きしめられるのは、はにかむような笑顔を向けられるのは、私ではない。

彼の“その場所”の、主役はあの子。








付き合ってるだとか恋人だとか。

そんなもの口約束でしかなくて、だけどそんな口約束に、たった1回の「YES」に、私の心は染まりきっていたのだ。今の今まで。

そんな当たり前の事実に頭を殴られる。




「ごめん、やっぱり先帰る」




背を向けた瞬間、自分の心に一気に時間が戻っていくのがわかった。

擦っても擦っても大粒で増えていく涙が私の袖口まで濡らして、それでも足りずに手首を伝っていく。


ねぇ、もう1回いってよ、もう1回、あいして、





















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ