さあ、狩りを始めよう②
魔獣や鬼とはいえ連携も何もない烏合の衆だ。単身突撃したアスラに対応する間もなく殴り、あるいは蹴り飛ばされる。
ただ、数が多い。おまけに一向に減る気配がない。
「キリがないな」
セザも同じことを考えていたようだ。片っ端から倒しているが、相手も負けじと増援を呼んでいる。消耗戦では圧倒的にこちらが不利になる。
「半獣をさっさと仕留めるか」
発狂しているラントを戦闘不能にすれば、今囮に徹しているニニが魔獣狩りに参戦できる。戦略としては悪くないが、ラントを殺す案に賛成はできない。
「駄目だって! なんとか正気に戻す方法を考えよう。前だって元に戻ったんだから」
「ニニが保たん」
昏倒させた鬼を踏みつけ、セザは言い捨てた。
「どの道、奴は殺すつもりだ。戦って死ねるのなら獣人族として本望だろう」
「無茶言うなよ。ラントは人間だ!」
怒鳴りつけたアスラに狼に似た魔獣が牙を剥く。
「……あ、そうか」
飛びかかってきた魔獣をアスラは爪で八つ裂きにした。ラントが元の姿に戻った時、自分は一体何をしていた? 簡単なことだった。
「もう一回求婚すればいいのか」
「は?」
セザは小鬼の頭を鷲掴みにした状態で動きを止めた。
「キュウコンとはあれか、チューリップを引っこ抜くと出てくる……」
「いや違う。求婚。つがいになってくれと申し込ん、」
ぐしゃり。セザの手中で小鬼の頭が握り潰される。骨を粉砕し、脳髄をぶちまけた頭から血が滴り落ちた。
「つがいの申し入れをしたのか?」
「うん」
「誰がだ」
「私」
「誰に」
「ラント」
アスラは狼に似た魔獣を殴り飛ばした。
「それがどうかしたのか」
セザはぞんざいに小鬼の身体を投げ捨てた。魔獣の一団に突っ込み、爪の一閃で三体の首を刎ねる。八つ当たりのような、非常に乱雑な攻撃だった。
変な奴だ。アスラは眉を寄せた。が、今はセザに構っている場合ではない。紅蓮の人魚とラントをどうにかせねば。