抜け落ちた記憶に違和感を感じながら
意識が戻り、眼を覚ますと見慣れた天井があり、微かに朝陽がカーテンの隙間から射していた。
ぱちぱち、と瞬きをしてから「えっ......?」と声を漏らさずにはいられなかった。
えっと......確か、先輩に告白をした気が......えっ、あれっ?放課後だったよな、あの時......何で自宅の自室で寝てた?
記憶を遡ってもあの時から現在に至るまでの記憶が思い出せず、ごっそりと記憶が抜け落ちていた。
上体を起こし、額にひとさし指を突き立て、ぐりぐりとめり込ませ、必死に思い出そうとするがいっこうに空白が彩られていかない。
ジワァ、と少量の血が額から流れ、口に入り口内に鉄の味が広がった。
「朝食食べないのぅー?出来てるよぉーっ!」、と階下から大声で妹に呼ばれ、ベッドから立ちあがり、自室を後にした俺。
のそのそとした足どりで階段を下り、リビングに足を踏み入れた俺に妹がニヤニヤと頬をゆるませ、口もとを片手で隠し、笑いを堪えた表情を向けていた。
「何だよ、気持ちわりぃ表情なんて浮かべて」
「えぇ、べっつぅにぃ~!妹に内緒でヤってるんだぁ~って、思い出し笑い的なっ!」
「なぁにぃっ訳のわかんねぇこと言ってんだよ、朝から!」
「えっ?てっきりそうだって思ったから、パパに電話したのに......的外れだった?」
「何の話をしてんだよ、さっきから」
「そんなにイラついて、どうしちゃったの?超ちょ~うっ美人さんが肩を貸して連れてきたことを忘れたなんて言わないよね」
「美人さん、か......」
美人......美人って、もしかして?
「ああ~っ!冷めちゃってるよ、もうぅ~」
と叫ぶ妹が俺の朝食をキッチンに持っていき、レンジで温め始めたので、椅子に腰を下ろし、ダイニングテーブルに視線を落とした俺。