二人っきりの食事2
「ねぇ拓海、私たちのこと知ってる人が居ないとこまで先輩呼びは止めてよ。おねぇちゃんって呼んで、拓海くん」
「あぁーっと、その……おねぇちゃん」
「うん。なぁにぃ拓海」
「……なにも、ない」
顔を見て呼んでくれた義弟だが、私の返事で視線を逸らし俯いてしまった。
「拓海、先日は強引に及んでごめんね。あのときは……その、ああでもしないと不安定な感情を抑えられなくて。取り返しのつかないことして、ごめん拓海」
「いや……俺の方こそごめんなさい。困惑して、おっおねぇちゃんの期待に添えられなくて。あんな経験がなくて、どのように接したら良いか解んなくて……あんな狼狽えることしか出来ませんでした」
私は唐突に向かい合うように彼の両肩を掴んで、想いを告げた。
「拓海が謝ることないよ、私が全面的に悪いんだし。それでなんだけどさ……私が不安定になったら、抱き締めてくれる?私……親に、その母以外に温もりのある抱擁ってのをされてなくてさ、拓海の肌で感じる温もりを感じたいの。ダメ……かな?」
「えっ……あっと、その慣れてなくて、下手ですよ俺」
「良いの、拓海が抱き締めてくれるならなんでも。受け入れてくれる、拓海?」
「……は、はいぃ」
「ありがと」
不安で震えた声で返答した義弟に短く感謝の言葉を告げた私。
たわいもない会話をして、5分も経たずに注文した食事が出てきて、私たちは食べ始めた。
彼が味噌ラーメンの麺を啜り、咀嚼を終えたタイミングを見計らい味の感想を聴いた。
「どう、拓海?」
「美味しいです、おねぇちゃん。いつからこのラーメン屋に来てるんですか?」
「でしょでしょ!あー高校の入学前には来てたね、此処に。食欲旺盛な男子が此処に来たこと無いなんて、そんなことあるんだね」
「それほど驚かれるくらいに有名なとこですか、此処って?」
「有名……?部活終わりの学生が空いた腹を満たすにはうってつけだと思うから、知られてはいるんじゃない?拓海って外食ってそんな無かった人生?」
「まぁ外食は頻繁では無かったですね、四條原家。母さんが外食を嫌ってる節があって、父が強引に母さんを連れだし外食に行くって感じでしたから。あいつが幼い時期で迷惑かけたくないってのもあってのことかなぁとは子供ながら思いました」
「へぇ、そうなんだ。私んとこは、父親が私らを外食に連れてくことが度々あって、嫌々行ってた」
私は口を滑らし、あの父親の話題を出しレンゲで醤油ラーメンのスープを掬い苦味を感じた舌をリセットしようと飲んだ。
「もしかして前のお父さんの——」
「そう。あぁ拓海に対してじゃなくて、あの父親にだから」
彼が父親に対して不快な呼び方をして、腹立たしく感じたこともあり怒りを含んだ肯定の低い声が出た私だった。
「ごめんなさい。えっと……」
「別に気にしてないよ。早く食べないと帰りが遅くなるって。早く早くっ!」
私たちは食事を済ませ、小走りで自宅へと帰宅を急いだ。




