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二人っきりの食事1

「友達が拓海を脅したみたいでごめんね」

「ぁあ……う、うん。えっと……先輩?」

私の隣を歩く義弟が困惑した表情で声にならない声を漏らし頷く。

「あぁ、ママには夕飯を拓海と食べるからいいって言ってあるから、気にしないで。二人なんて、緊張するけど……拓海以外に邪魔されないのがいいって思って」

「そう……なんだ。それは分かったけど……」

「あの娘には釘刺してるから、安心してよ。私と二人っきりの食事は嫌、拓海は?」

「嫌ってことは……ない、よ。先輩……やっぱ、俺を幻滅しますよね?」

「唐突に何ぃ、拓海ってばぁ。してないよ、拓海にそんなこと。幻滅してたら、二人っきりでいる空間をつくんないって。誰にでも臆病になるときはあるけどさ……拓海が想ってるよりも、私は拓海が好きだし、受け入れられるよ。キミの全てをさ。だからさぁ……私の臆病なとこを、拓海が両の腕で受け止めてよ。ねっ?」

「……俺が、先輩を……?先輩が望むような(やつ)じゃないけど……俺で良いの、蜜牧先輩?」

「拓海ぃー、そこはおねぇちゃんを受け止められる男になるよ、みたいに言ってよぉ!うぅー、やっぱ夜は肌寒ぅっ!ささっ、急ごっ拓海!」

私は朗らかな高い声で彼の弱音を吹き飛ばすように発して、彼の背中をパンと叩いて、肌寒い夜風に身体を震わし、彼の片腕の手首を掴んでラーメン屋へと駆け出した。


20分程走って、ラーメン屋の前へと到着した。

私は義弟よりも先にラーメン屋の赤い暖簾を避けて、扉を開けて入店した。

「あっ、先輩」

「らっしゃい!二名様かい、好きな席にどうぞっ!」

カウンター席を挟んだ厨房から肥えたご主人が挨拶を威勢良くした。

私は振り返り、彼の腕を取ってカウンター席へと歩き出した。

空いたカウンター席に腰掛けた私は、彼に隣の椅子の座面を叩いて座るように促した。

「はいっ……」

「何にする、拓海?私は決まっ——」

私の言葉を遮り、スマホが通話の着信を告げる。

私はデニムのポケットからスマホを取り出し、通話ボタンを押して通話に出る。

「もしもしぃ〜こんな時間になにぃ、みぃーたん?」

『もしもっ……蜜牧さん、まだそのテンションでいんの?いい加減、その訳わかんないテンションやめてよ!明日はサボんないでよ、準備っ!分かってる?おくれてんのっ、準備がね!またサボったら許さないからねっ!聴いてる、蜜牧さんッ!』

「はぁいはぁ〜いぃ、わっかりましたぁ〜みぃーたん!じゃ、明日ねぇ〜おやすみぃ!」

『ちょっ、まだ話し——』

私は言い訳もせずに荒ぶる武藤の一方的な言葉責めを受け流し、酒に酔ったようなふわふわした声で返して、通話を切る。

「ふぁぁぁ、しつこいなぁ〜武藤はぁ。ったくぅ〜よー。どう、拓海?」

「あ、あぁ……えっと味噌ラーメンとライス中、餃子で」

「うん。ご主人、注文良いですか〜?醤油と味噌、炒飯とライス中、八つの餃子をお願いしまぁすっ!」

「はいよっ!」

私は注文を済ませ、いつの間にか置かれていたお冷のグラスを手に取り、グラスを傾け、渇いた喉を潤す。

「先輩があんな感じに会話するなんて、意外でした」

「まあ、アレはさっきの娘にしかやんないやつで、煩わしいときにやるだけだよ。ひろめないでね、拓海くん」

「言いませんよ……」



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