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変なテンション

午後の授業が終わり放課後の校舎内は、普段よりも活気に溢れていた。

教室の前方の出入り口付近の窓が半分ほど開けられた壁に身体を預ける私と蜜牧がクラスメイトの作業に加わらずにサボっていた。

「……ねぇ、美代菜。義弟(かれ)と接触した?昨日、真っ青な顔で帰ってきたんだ……周囲に後輩くんを脅すような人なんて居ない筈なのにね。もしかして……と思ってなんだけど、どう?」

「へぇー。私が彼を脅すようなことないのに、疑うなんて莉奈もヒドいなぁ。彼女も候補には入んじゃないの、そうならさ?」

私は蜜牧の顔を見れずに、瞳に映る文化祭実行委員の武藤という女子に指示を受けている屈みながら刷毛で板を黄色に染めている夙坂になすりつけようとする。

「確かに彼女にも相談はしてるから、美代菜が言わんとすることは分かる。でもさ……昨夜連絡したら、話してないし会う用件なんてないって返ってきたの。美代菜が私の顔を見ずに、返事するときってなにかうしろめたいことがあるときに多いよね……」

「はぁー、そうだよ。接触した、彼に。あそこまで怯えるような脅しはしてない。そんな脅しをするつもりはさらさら無かったよ、けど……あいつが思ったよりも脆くてああなったまま解散した。ごめん、莉奈。難しいんだよ、加減ってのが」

私は降参し、認める。

「そう。私を想ってのことだってのは、分かる。けど、美代菜はやりすぎ。あんなのは、二度と御免だよ。あんな結末はアレを最後にしないと……ね、美代菜」

私と彼女の前を通り過ぎていった一人の男子がひぃっ、と悲鳴をあげた。

悲鳴をあげた男子の傍で同じスピードで駆けていた友人が不審そうに、「なんで悲鳴なんてあげたんだよ、田中?」と訊くのが聞こえた。

私が知る限り、蜜牧が誰かに怖がられることはあの日を除いて今日が初めてだ。

「なんで悲鳴なんてあげられたんだろうね?美代菜のほうが怖いのに」

「あぁーっ、蜜牧さんに環樹さん!?作業が遅れてるのに、廊下でサボってもうぅっ!!夙坂さんはサボってないのに、二人がサボってちゃ駄目ですって!!ささっ、教室にっ!」

文化祭実行委員の武藤がヘアゴムで纏めたポニーテールの髪を揺らしながら、私と蜜牧の片腕の手首を掴んで教室へと引き摺っていく。

「みぃーたん、乱暴ぅ〜!痛ぁ〜いぃ、やめてぇ〜」

「その呼びかた、やめてって言ってるでしょ蜜牧さん!いつものテンションよりハイなの、なんなの!?抵抗しなぁーいっ、蜜牧さぁんっ!!」

「私ら以外にもサボってる人らがいるのにぃ〜!ヒドぉ〜いぃ、みぃーたん!!」

「あぁーもうぅッッ、うっさい蜜牧さん!環樹さん、どうかこのウザ絡みなんとかしてくれないかな?」

「えぇー、私にはこのテンションの対処はちょっと……」

「あれっ、莉奈?なに、そのテンション?怖っ!怖いんだけど!?美代菜、莉奈のこの締まりのない顔でニヤけ続けてんの、なんなの?」

「蜜牧さん、どうしたの?」

「あの静かな蜜牧さんが、酔っ払いみたいな絡みを武藤に」

夙坂の驚いた声に、帰宅せずに残っていたクラスメイトらが次々に驚き始めた。


30分以上経過しても、蜜牧の様子にクラスメイトらは収拾がつかず、文化祭の準備が手に付かずに進まなかった。


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