なぜか呆れられる
「──いっ!聞いてんのか、みーくぅんよぉー」
「......めん。何か言った?」
顔の前で加賀原が意識の確認をするように手をひらひらと振っていることに気付き、気の抜けた間抜けな声で訊いた俺。
「ああ~ぁ。声を掛けられて、一言二言話せたくらいでそんなに浮かれられるって......」
呆れたため息を隠すことなく漏らし、肩をすくめた彼。
「何でそんな呆れた反応っ!?酷くないっ!?進歩だよ、進歩。前進したんだよ!?」
にやけてゆるんでいた頬が引き締められたような感覚へと変わるのを感じながら、彼の反応に驚いた。
「つくづくおめでたいよなぁ~みーくんは。一歩どころか半歩すら進んでないだろ、それは」
「えぇ~そんなぁ......みーくんはやめて、いい加減に......」
「そんなぁ、じゃあねぇっっ!呼び方なんて今はどうでも良いんだよぉっ!放課後に下駄箱で待ち伏せくらいしねぇと進展何てしないだろ、それじゃあ......」
「それってストーカーじゃ──」
「今日で決めりゃあ、ストーカーになんねぇって」
「でも......」
「でもじゃ、ねぇ!」
「うっ。うぅぅ......」
両手で頭を抱え、情けない声をあげながらうずくまった俺に彼は購買部で購入した菓子パンをかじりつき、何度目かのため息を吐いた。
屋上に降り注ぐ陽射しに目を細目ながらの昼休みはこうして時が過ぎていく。