義弟のいない食卓
私は麻生とのカフェの寄り道から帰宅した。
玄関扉を開け、敷居を跨いで通学靴を脱いでスリッパに履き替え、上がる。
「ただいま〜」
リビングに足を踏み入れる前に挨拶を告げながら歩いた。
「おかえり、莉奈。遅かったじゃないのぅ〜」
「おかえりぃ〜リナ姉。一緒じゃないんだ」
「後輩からカフェに誘われて……四條原くんは友達に付き合うって。まだ帰ってないの、四條原くん?」
「へぇ〜後輩のお誘いにねぇ。ふぅ〜ん」
「なんなの、その反応は」
母親の含みのあるニヤけ面に、多少の怒りがこみ上げた私はつい強く返した。
「まあまあ。リナ姉も早く食べないと」
「うん……そうする」
義妹に宥められ、母親の隣のダイニングチェアに腰を下ろして、木製のスプーンで夕飯のオムライスをすくい、口に運んだ。
「おにぃちゃんならあの娘ん家に泊まってくんじゃないかな。今ごろ肩みの狭い夕食の最中なんじゃないかな〜」
「あの娘って?」
「リナ姉とは同高で、おにぃちゃんと同学年のゲーム好きな娘。名前までは分かんない。言ってた気もするけど、思い出せない。ブラコンじゃないからそこまで興味ないし」
「へー」
「拓海ちゃんてば、羨ましいわねぇ〜!私と大違いね、あの人の血が流れてるだけのことはあるわねぇ」
「パパの昔のことって聴いたの?」
「ええ、聴いたよ。学生の頃から異性にモテてたって。椎菜ちゃんこそモテてるでしょ〜」
「ううん、そんなことないよ〜!告られたことなんて、ないもん」
「え〜嘘でしょ〜椎菜ちゃんてば、隠さなくったっていいよ〜ぅ!」
母親の義妹へのだる絡みは、見ていていいものではない。
コンソメスープをズズーっと啜りながら、壁に掛かった時計に視線を向けた。
時刻は18時35分であった。
私は夕飯を済ませ、食器類を流し台に置いて、自室に引き上げる。
この日は、拓海が帰宅することはなかった。
麻生が及んだあることで、身体の一部に違和感を感じたまま就寝することとなった。
就寝した私は、淫らな夢にうなされた。
翌日、私が目覚めて感じる感情は——だった。




