後輩からの誘い
私は、悩んでいます。
最近、義弟の拓海がよそよそしい態度で、どうにか仲直りが出来るようにと……
一日の授業が終わり、SHRが始まる直前に義弟へメールを送信した。
SHRを終え、クラスメイト達が部活動や帰宅しようと教室を出ていく姿を見送ってメールの返信が届いたかとおそるおそるスマホに視線を注いだ。
しかし、義弟からのメールは届いていなかった。
でもまあ、担任の連絡事項が長くなっているのだろうと思い直した。
「莉奈〜また明日ね、バイバーイ!」
クラスメイトのある女子から挨拶をされたのに気付いたら、彼女はもう教室を出て行こうとしていて、慌てて彼女の背中に挨拶を返す。
「あ、うーん、また明日ー」
友人と会話を交わしていたが、片手を振って廊下に出た彼女だった。
教室内には部活動をサボりたいのであろうクラスメイトの数人のグループや帰宅部で談笑で騒ぐ数組のグループがいて、あとは担任から掃除当番を言い渡された数人のクラスメイトが掃除を適当にこなしていた。
床を掃いていた田菜星の箒が、私が座る椅子の脚に当たり、金属と木が接触した不快な音が幾らか響いて、スマホの画面から顔を上げる。
田菜星が煩わしそうな顔をして、突っ立っていた。
「ごめんね、田菜星くん。いま、退くよ」
私は椅子から腰を上げ謝り、教室を出た。
私の背後でぼそりと、ありがとう、と聞こえた。
拓海が所属するクラスの教室に足を運んだ。
彼の教室に着くと、何人かが通学鞄を持って出てきた。
教室を覗いてみたけれど、拓海の姿は見当たらなかった。
顔を引っ込め、廊下のコンクリートの壁にもたれ掛かった。
天井を見上げ、ふぅー、とため息を漏らす。
スマホが震え、画面に表示された拓海からの返信メールの内容は、簡潔だった。
『友達の用事に付き合うことになった。一緒に帰れない。ごめん』
「あっまだ蜜牧先輩いたんですねっ!蜜牧先輩がよければ、今から付き合ってくれませんか?」
横から弾んだ声が聞こえ、身体がビクっと震え、声をかけられた方に顔を向けると麻生が満面の笑みを浮かべていた。
「あ、麻生さん……私は良いけど」
「っよかったぁ〜!オシャレなカフェなんですけど——」
麻生が私の手を握り、軽快な足取りで歩き出した。
「あ、ちょっ……麻生さ——」




