もやもや
休み時間で友人が教室を訪ねてきて、廊下に出た。
「拓海ぃ、来月出るあれ——」
廊下で隣を歩く仲谷に話し掛けられ、ふとグラウンドに面した廊下の窓に顔を向けると、校舎とグラウンドを挟むアスファルトで舗装されたところを蜜牧先輩と女子生徒が仲睦まじく歩いていた。
「……」
「ねぇー聞いてる、拓海ぃ?返事くらいしてよ!もう〜」
「あ、あぁ……ごめん、嘉代。で、なんだっけ?」
「だからぁー来月出るメルリィ・ソニックを予約したかってことをさぁ。てかさぁ、もう家族になったんだからそんなこと、なんないでしょー!嫉妬ぅ〜拓海ぃ?」
「なんかぎこちなくてさぁ……今。メルソニ?予約済みだよ」
「拓海なら、済んでるって思ってたから安心した〜!受け取りに行くの、ついてくよ〜私ぃ!良いよねっ?」
「はは。まあ、別に良いけど……寄らないと、だよね?」
苦笑して、彼女の提案を受け入れ、一応のわかりきったことを訊ねた。
「そりゃ〜そうだよぅー。ママに夕飯のこと、言っとくよ〜」
「申し訳ないなー。てか、嘉代のお母さんって勘違いしてるよな?」
「えー、そぅ?そういうつもりで上がってるんじゃ、拓海は?」
「ただのゲーオタ仲間の付き合いだよ。まぁ、嘉代ほどじゃないけどさ……」
「えー、私をもらってくれないの〜拓海はぁー」
仲谷が落胆しながら、際どいことを口走った。
「ちょちょっ、ここ学校だからぁ!教師に聞かれたらとんでもないからね!?嘉代ってば、ほんと……」
「動揺しすぎ〜拓海ってばぁー!まーあ、拓海のそういうとこが好きなんだよね〜!」
ケタケタと笑って僅かに首を傾けた彼女のサラサラとした茶髪が揺れ、ビクッと惹かれた感覚に襲われた。
「っ……部活、どうすんの?」
「んー、ぶっちゃけ休みたいんよ〜。拓海が部活終わるまで待っててくれんならー良いのになぁ〜」
肘までブラウスの袖を捲り上げた彼女の両腕が頭の後ろで組まれている。
ちらちらと視線を送ってくる彼女。
「ハイハイ、わかりました。部活が終わるまで嘉代を待つよ。その日は」
「サンキュー、拓海ぃ〜!それでこそ彼氏の対応だね〜」
「やれやれ……嘉代ってやつは」
呆れて肩をすくめた。
購買でシャーペンの芯を購入した時点で、次の授業に間に合うか間に合わないかという時刻だった。
仲谷は、気兼ねなく接しられる友人だ。
校内で蜜牧莉奈が拓海の家族だという理解ある数少ない女子生徒が、彼女——仲谷嘉代だ。




