察しのいい義妹
コンコン、とノックして、部屋の主に入室の了承を得ようと声を掛ける。
「しぃーちゃん、入って良いかな……?」
「ぁーいぃ〜」
ガチャリ、とドアノブに手を掛け扉を押し開けて、足を踏み入れる私。
「お邪魔しまぁ〜……羞恥心っていうの、ないの?」
「私にも羞恥心くらいあるよぅ〜!どうぞどうぞ〜リナ姉っ!リナ姉が、私の部屋に来るなんて初めてじゃん!嬉し〜」
「アハハ……あの……」
「あからさまに引くのやめてぇ〜リナ姉〜!おにぃちゃんとケンカした〜ぁ?」
キャミソールも着ずにショートパンツすら履いていない義妹が、ブラをつけショーツを穿いただけのあられもない姿のままで縋りつこうとベッドから私に近付いてきた。
「ごめんね。えっと……喧嘩ってわけじゃなくて。そのぅー……」
義妹は、表情豊かだなぁと思う。
「あーぁ、そっか〜ぁ。リナ姉が訊きたいのって……紙袋を持ってきた人物だよね。ふぅーん、おにぃちゃんは言わなかったのか……ああ、私の親友の宮郷綾ちゃんって娘だよ。おにぃちゃんのことが好きで、付き合いたいって思ってる中学生の娘」
「えっと……」
「紙袋の荷物が私のだって聞いたら、私に訊きに来るしかないもんねー。でも、大丈夫だよぅ〜リナ姉〜。リナ姉が心配してるようなことにならないから。おにぃちゃんが言えなかったのが、その証拠。安心して、リナ姉。綾ちゃんも薄々分かってたみたいだしね〜!」
戸惑っている私に、ベッドにまた戻って腰を下ろしながら天井を仰ぐ義妹は、スラスラと淀みなく続けた。
「……」
「そろそろ、拓海って呼んでも良いんじゃない。リナ姉」
「へっ、ああ……う、ぅん……」
「もうこんな時間っ!リナ姉、寝ないの?早く寝ないと、可愛い顔にデキものなんか出ちゃうよ。リナ姉ぇ〜おやすみぃ〜!」
都合が悪いことがあるような捲したてで、私を部屋から追い出す勢いの義妹。
私の背中を両手でグイグイと押して、廊下に出す義妹だった。
「あっ、しぃー——」
バタン、と扉が勢いよく閉まり、義妹を呼び止める寸前に締め出された私だった。
私が、四條原家に住み始めて、義妹が見たことのない動揺を初めて見せた。




