よそよそしい義弟
私が自宅に帰宅し、玄関扉を開けて玄関をあがる。
「ただいまー」
「あっ、蜜牧先輩、お帰りなさい」
リビングの方から四條原の僅かに強張った声が返ってきた。
スリッパを履き終え、リビングへと続く廊下を歩く。
リビングに足を踏み入れると、ソファーに腰を下ろした四條原が取り繕ったような微笑を浮かべて出迎えた。
「ど、どうし、たの……四條原くん?」
不安が込み上げた私は、おそるおそる訊く。
「いや……なんでも、ないですよ。どうしたんですか、先輩こそ?」
「なんで、目を合わせてくれないの……?嫌われるような、ことしたかな……私?」
「そんなこと……してないですよ、先輩は。ただ……」
「ただ?」
「いえ、先輩が関わっていることじゃないです……それは信じてください。俺、自身の問題で……これはちょっと」
彼に続きを促すが、納得する返答は返してくれなかった。
額を隠した前髪を片手で弄る彼は、普段よりよそよそしい態度に思う。
「そう、なんだ……言いたくないなら言わなくて良いけど、もしかして……誰かに、なにか言われた、の?」
「えっ……?な、んで……そう——?」
「それ、があるから……」
私はダイニングテーブルに置かれた紙袋を右手のひとさし指で指しながら、返答した。
「あっ……そっかぁー」
動揺を見せることなく、よそよそしさを感じさせるトーンで呟いた彼。
ソファーから腰を浮かすことなく、控えめに後頭部の髪を掻く彼だった。
「……」
「誰かの想いを、突っぱねるのって……しんどいんだなって」
「そう、かも……そうだね。どの立場にも、しんどいのは憑きものだよね」
彼が漏らした弱音に、私もつい、自然とそんな言葉を発していた。
私は、彼に近づけなかった。彼に歩み寄れず、その場で今にも泣き崩れそうな義弟を見ていることしか出来なかった。
全てを呑み込む暗闇は、私たちの近くまで忍び寄っていた。




